CRIDE・SOUL

第九話

第九話「おおよそ3ヶ月ぶりの依頼」


 スバルが倉和の指導で訓練を受けてから早5日、驚くべき成長速度といっても戦闘機人なので
一応身体は普通の人間よりは吸収が速く、既にデバイスを使用してでの応用訓練となっていた。
しかし倉和のほうは未だ剣を抜かず体術のみで指導をしていた。


     -機動六課 食堂-

 スバルの飲み込みが早いお陰で苦無く訓練が進み、倉和はやっとのこ食堂でゆっくり食事がで
きるようになった。そんな倉和はフォワード陣と昼食を摂ることにした

倉和「リボルバーナックル自体の破壊力のみに頼る事無く、己自身の繰り出す体術に上乗せして
   拳を振るう事で体感では約4割ほど己に伝わる衝撃が和らぐ。お前に例えると、月に3回
   身体のメンテをしていたのが2回や1回で十分になるようなモノだ。骨格や筋肉等の負担
   が軽くなるが、逆にデバイスには1,3倍の負荷がかかる」

スバル「だから頻繁にフルメンテが必要な訳ですか・・・」

倉和「しかし俺ら二人は元々負担がバカんならん戦い方だからな、この技術をエリオに教えたら
   それこそ身体が千切れちまう」

 『Fの遺産』と言えどエリオはまだ11歳、見た目も子供の身体に倉和の体術はあまりにもキ
ツすぎる。体術を教わる事ができないエリオは、ここしばらくストラーダと連動させた走り込み
と素振りにての真空波の製造を行っていた

倉和「魔法が使える分、魔力での真空波の製造は簡単だが・・・それこそ魔力に頼らずとも己の
   振りのみで作れるようになれば、後は魔力で作った刃に上乗せさせる事により威力・範囲
   ・飛距離・切れ味が増す事になる」

エリオ「まぁ・・・しばらく筋肉痛が続きそうですけどね」

倉和「日頃からの肉体作りを怠るなという事だ、そのためにこうして飯があるのだ」

 5人の前にはいつものパスタが置いてあるが、何分倉和が加わっているために量がいつもの量
のさらに一回り多くなっている。スバルと倉和、エリオは異様な速度で山を崩していっている

ティアナ「日に日に食う速度が増していると思うのはあたしの気のせいなんだろうか・・・」

キャロ「いえ・・・私もそう思います」

倉和「ゲル飯だけじゃやっぱクチが寂しいからよ、こうゆう飯もたまには食わねぇとな」

 一度に取るパスタの量が一番多く、次のおかわりまでの速度が一番速いのはやはり倉和だった

 ビーッ!ビーッ!ビーッ!

5人「!?」

 突如隊舎に鳴り響くアラート音、それも第1級警戒態勢のだ。奥からジャンバーを着ようとし
ながら走ってくるヴァイスの姿があった

ヴァイス「ホレおめぇら!ボサっとしてねぇで待機所まで行け!」

倉和「飯の後処理は任せろ、ホレ行けぃ!」

4人「ハイッ!」

ヴァイス「倉和、おめーはロングアーチにお呼ばれだ」

倉和「うへぇ・・・」


     -機動六課 出動待機所-

4人「遅くなりました」

 扉が開き部屋に駆け込む4人、各隊長と副隊長、ナンバーズのチンク、ノーヴェ、ウェンディ
、ディエチ、ディードが既に出揃っていた。それを見計らったかのようにはやてがモニターで顔
を出した

はやて「さてみんなお揃いやな、地上本部から第1級型の依頼や」

 今回の任務依頼は、第7廃棄都市付近にでディスクの破片と思われる魔力探知の捜査、及びそ
の反応に遠くから真っ直ぐ向かっている未確認魔力からの護衛である。先に調査に向かわせたセ
インからの連絡では、『ガジェット以外と思われる機体の残骸が見られる』とのこと

はやて「なんや、接近してる魔力反応も妙に大きくてな・・・だから総出で出てもらうんや」

なのは「とりあえず隊長格の4人は現場指揮のみでストライカー達には戦闘をしてもらう事にな
    るけど、少々厄介なら私たちも戦闘に参加するからね」

シグナム「スターズはヴァイスの1号機、ライトニングはアルトの2号機で現場まで輸送だ。二
     人とも、準備はいいか?」

ヴァイス・アルト「いつでも!」

はやて「では各隊、任務開始や!」

全員「了解!」

 各分隊がヘリに搭乗し、二つのヘリが第7廃棄都市に向かって飛び立っていった。ロングアー
チでは、発生魔力の分析とセインの届けるデータの解析を行っていた
 ドアが開き、包装した剣を担いだ倉和がロングアーチに入ってきた

リイン「あっ、丁度良かったです倉和さん!」

倉和「隊のメンバーはもう現場へ向かったようだな、んで今回もか?」

シャーリー「ええ、またあの機械兵器です」

 サブモニターに潜行調査班の送った画像データが出てくる、そこにはその機械兵器と呼ばれる
物のパーツの残骸等が散らばっていた。腕のような物、刀剣のような板の破片、薬莢のような筒、
そして所々に見られる小さなクレーター

倉和「・・・複数に散らばっているな、ヘタに触れればドカンの代物だからな・・・ありゃ地雷
   源だなまるで」

セイン「ロングアーチ、こちら潜行班セイン」

はやて「どないしたんや?」

セイン「実は機械兵器の調査で、大きめの残骸を見たところ・・・気になるものがあって」

 数枚の画像データが送られてきた。そこに映し出されていたのは、人ひとり入れる程のスペー
ス、座り心地の悪そうなシート、横には2本のレバーらしきものがあり、いかにも機械兵器らし
アレであった

グリフィス「これは・・・コクピット・・・!?」

リイン「ということは・・・アレには人が乗ってたんですか!?」

はやて「有人機械兵器とは・・・一体ドコ産やろか・・・」

グリフィス「厳密には、質量兵器の一環ですから禁止されているんですがね・・・」

 騒々しいロングアーチの中で唯一黙っている男、苦い目つきをしながら送られている画像デー
タとまじまじと眺めている。そして見終わったと同時に少々口元が緩んだ

倉和「まぁ・・・潰すだけなら簡単な話だな」

 倉和は回線をオープンさせ、向かっている部隊に繋いだ

なのは「飯田さん・・・?何かあったんですか?」

倉和「潜行のセイン達から相手の情報が入ったんでな、移動中の内に教えておきたい」

 倉和による相手についてのミーティングが行われた

フェイト「有人機械兵器・・・?」

倉和「形状から見るに、魔力を伴った動作システムと乗っているヤツの魔力をリンクさせ操縦す
   る機体だ。動作システムと思われる魔力炉が恐らくこの背中部分だ」

シグナム「なら、その魔力炉と思われるのを破壊すれば機能は停止するのですね?」

倉和「・・・そうとも限らん」

なのは「え・・・?」

倉和「迫っている魔力反応が通信で見えるレベルまで迫ってきている、解析をしたところその辺
   に散らばってるスクラップと同じ有人機械兵器だと分かった」

 画面にはその迫る機体の画像データが映し出される。人間型とまでは言い難いが、胴体・腕部
・脚部が備わっているので、一応人型兵器とも呼べるだろう。倉和は画像を操作し説明していく

ヴィータ「じゃああたし達は、その腕や脚をブッ壊せば動きを止められるワケか」

倉和「ンな回りくどい事しねぇでも機能は停止させられる」

アギト「じゃあやっぱり魔力炉の破壊・・・か?」

 問うようにシグナムの方を見たアギトだったが、シグナムは何かを悟ったように眼をつむり黙
こんだままだった。ヘリ内に微妙にイヤな空気が流れている。倉和はけだるそうに淡々と喋って
きた

倉和「先ほどの画像にあった操縦機関は、多分胴体部分のどこかにある。まぁ文字通り人様が乗
   な、どこのスカタンかは知らんが」

スバル「四肢のどれか破壊して魔力炉も壊しちゃえば・・・たぶん機能は停止するかな」

ティアナ「バカ、それこそ余計に回りくどいじゃない」

 とは言うもの、無論誰にも倉和の言う「回りくどくないやり方」を知らないワケだ。元々何を
考えてるかも分からない人間の脳は他の人では解明できないのだ。ただ独りシグナムを除いては
・・・そんな部隊の空気を斬るように倉和は口元を緩ませて言い放った

倉和「ま、胴体叩き潰せば間違いなく機体は動かんくなるぜ?」

全員「!!?」

 ヘリ内とロングアーチ内に衝撃が走った
 胴体を壊せば機能は停止する、鬼人の発する言葉はすなわち・・・


                   END


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