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=勲章と乞食=
――――――――――――――――――――――― W弁護士はフランスびいきかなと思う。なぜかフランスの ことを話しているW弁護士は嬉しそうな顔をする。 「先生はフランスに行ったことがあるんですか?」 「これまでに3回行きましたよ。まぁ、おもにパリが 中心でしたが、リョンにも行ったし、ニ-スにも行きましたな。 クリさんは行きました?」 「まだ」 「行った方がいいですね。特に画家だったら、まあ、漫画家だって 勉強になりますよ」 「そうですか」 「クリさん、犬に噛み付かれた腕はいかがですか?」 「手の腫れは引きましたが、手の痺れはあります」 「そうですか」 「警察病院の後、近くの外科に行っていましたから・・・」 「告訴する場合、噛み付かれた時の治療証明書を必要になりますから お願いしますね」 「警察病院、それとも外科医院の?」 「それは、最初に診断した警察病院がいいですね」 「はい、判りました」 「ところで、xxxxさんが飼っていたアフガン犬ですが、 犬の訓練所でしつけを徹底的に仕込まれたと言ってます。 人に噛み付くような犬ではないと言っているんです。 主人に忠実だそうです」 「でも、やれ!!と命令すれば跳びつくでしょう」 「まあ、それはあるでしょう」 「あのフラ公は、そんな男です」 「でも、XXXXさんがクリさんに敵意を見せたことは 何か原因があるのでは・・・・・」 僕には思い当たることはなかった。 「アフガン犬に噛まれた時の服装は何でした?」 「皮のジャバ―でした」 「どんなジャンバ-ですか?」 「毛の生えた物です」 「狸か狐のジャンバ―ですか」 「犬だと思います。いや、狼かも知れません」 「狼!!」 W弁護士は驚いた。 「何処で手に入れたんです」 「原宿でフランス骨董市で買ったんです」 「そのジャンバ-ありますね」 「あります。捨てようかと・・・」 「それはやめて下さい。物的証拠品ですから・・」 あのジャンバ-を見るだけで悲しくなっていたから。 「もう1つ聞いていいですか?」 「なんですか?」 「犬に噛まれた時の髪の毛は、今の頭の髪の毛の ように伸びきっていました?」 僕は頭に手をやって、くしゃくしゃにかき回した。 狼毛皮にくしゃくしゃ頭。これじゃ、まるで乞食ではないか。 「浮浪者みたいだったんですね」 「いや、乞食スタイルでした」 と僕は,ハッキリ言った。 「でも、XXXXさんとは、しょっちゅう路でお逢いしていたんでしょう?」 「はい」 「それが、突然、あんな行為に出るとは思わないんですが?」 W弁護士は頭をひねった。 「それとも何か」 「何かがあると思うのですが、何か、心当たりはないですか?」 「実は僕の家で犬を飼っているんです」 「犬を?。どんな犬です?」 「柴犬の混じった雑種の犬なんです」 「買われたんですか?」 「うちの娘が江戸川の河原の土手に捨ててあった目のあいてない 犬を拾って来たんです」 「犬の名前は?」 「ハナと呼んでいますが、登録名は江戸川花太郎とつけました」 W弁護士は,思わず、 <ハハハハハハ> と笑ってしまった。 「時々、ハナちゃんを連れて散歩に出ると、あのアフガン犬が 鎖をはずしてハナに飛びかかって首に噛み付いたのです。 僕は棒を持ってアフガン犬を叩きまくって、追っ払ったのです」 僕の話を聞いたW弁護士は納得したようにうなずいていた。 「今日きこれで結構です。これからは起訴の手続きをしますので 今度、来た時には治療証明書を持って来て下さい」 「大丈夫ですか」 「危害を加えたのはXXXX人ですから」 と言われて、なんとなく安心感でW法律事務所を出た。
Last updated
2012.01.15 13:50:37
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