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2008年03月31日
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「いい嫁でした」

というのが口癖のおばあさんがいた。


親父がボランティアで老人ホームの
痴呆症のおばあさんの話し相手をしてあげていた時の話。


事あるごとに「いい嫁でした」
と感慨深くつぶやくおばあさん。

親父は、
おばあさんの息子さんは、
よっぽどいいお嫁さんをもらったんだろうなぁ
と思っていたそうだ。

しかし、老人ホームの職員に聞くと、
実は、おばあさんにお嫁さんはいなかったという。

それでも、おばあさんは、
「いい嫁でした」
という言葉ばかりを繰り返す。

そこで親父は、はたと思いついたそうだ。



実は、おばあさんが
「いい嫁でした」
と言っていたのは、
自分の事を言っているのではないか。

男尊女卑の激しかった明治・大正世代。
厳しい仕事を強いられながら、
ひたすら耐えるだけ。
誰にも褒めてもらえなかった人生。

そんな人生を、このおばあさんは
送ってきたのではないか。

人間、生涯は一回きり。
辛い運命であっても、取り替えることはできない。
でも、人間誰しも、自分の事を否定はしたくない。

それが、辛い過去を振り返り、
自分で自分の事を褒めてあげている、
「いい嫁でした」という言葉となって
現れたのではないか、
というのが親父の解釈だ。

もし、親父の解釈が当たっていたとすれば、
おばあさんは、本当に、
いいお嫁さんだったのだと思う。

人生の最後に、自分の人生を肯定できることは、
幸せだ。


でも、おばあさん、
本当は、愛する人に
「いい嫁でした」
と言って欲しかったんだろうなぁ。





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最終更新日  2008年04月01日 01時35分39秒
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