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カテゴリ:戦争
![]() 監督 デヴィッド・リーン 出演 アレック・ギネス ウィリアム・ホールデン 早川雪洲 第2次大戦中の、日本軍のタイ・ミャンマーを結ぶ泰緬鉄道建設で、最大の難所と言われたクワイ川にかかる橋の建設をめぐり、日本軍とイギリス人捕虜の対立や交流を描いた感動作です。米アカデミー賞作品賞をはじめ、多くの賞を受賞しています。 クワイ川に近いジャングルの中の日本軍の捕虜収容所に、イギリス兵の捕虜1隊がやってくるところから、物語は始まります。200人ぐらいのその1隊は、口笛で曲(クワイ川マーチ)を奏でながら、整列して行進してきます。捕虜とは思えないその姿は圧巻です。 先頭にいるのは、隊長のニコルソン大佐(アレック・ギネス)です。この収容所の前捕虜部隊の生き残り、アメリカ兵のシアーズ中佐(ウィリアム・ホールデン)も、呆気にとられています。このシアーズ中佐、アメリカ人らしい合理主義者で、この時も、もうひとりの生き残り兵と、仮病を使って“病院”と呼ばれている宿舎に入っていました。 収容所の所長は斉藤大佐(早川雪洲)です。ニコルソンを先頭に、整然と並ぶ捕虜を前に厳格なあいさつをします。主役3人の性格がしっかりと分かる、見事なオープニングです。 翌日の朝、整然と並ぶ捕虜たちの前で、前日と同じく、将校も含め、全員働いてもらうと斉藤が宣言すると、ニコルソンは、ジュネーブ協定で、将校には労働させないことになっている、と反発します。兵士たちが、橋の建設労働に出発しても、ニコルソンと将校たちは、立ったままその場を動きません。銃で脅しても動かないので、斉藤は黙って宿舎に入ってしまいました。熱帯の焼けるような日差しの中、将校たちは夕方まで動きませんでした。斉藤は、将校たちを宿舎に監禁し、ニコルソンは、独房に監禁しました。それは、犬小屋のような小さな箱です。そのまま、何日も日がすぎていきます。 その間に、シアーズ中佐は、2人の仲間と、夜の闇にまぎれて、脱走をしました。2人は銃殺され、シアーズはがけから転落し、川に流れて行きました。 橋の建設作業は、日本兵たちの指示で進められましたが、イギリス兵たちは、サボっていて、遅々として進みません。斉藤は、現場監督を解任し、自ら監督に立ちましたが、状況は変わりません。彼は悩みました。期日までに橋が完成しないと、責任を取って、切腹するしかないからです。 ある日、斉藤はニコルソンを呼び出します。今日は、日露戦争の戦勝日だから、恩赦として、将校たちを解放する。将校は労働をしなくていいから、監督をしてくれ。 ひとりで宿舎から出てくるニコルソンを見て、イギリス兵たちは雄叫びをあげます。彼の信念が勝ったからです。その夜、斉藤はひとり声をあげて泣きました。彼は、工事を進めるために、切腹から免れるために、プライドを捨てました。負けを認めたのです。 工事の監督を任されたニコルソンは、専門的知識を持つ部下2人と、現場を視察し、自らの考えを示します。彼は、この工事が敵である日本軍の利益になることを承知の上で、イギリス人の指揮のもと、全力を尽くし、期日までに完成させ、イギリス人の偉大さを示そうと思っていたのです。また、彼は、戦争云々ではなく、この鉄道の建設は、この地域のためになるとも考えていたようです。そして、工事は順調に進んでいきます。 一方、シアーズは無事でした。イギリス軍の拠点に、何とかたどり着きます。 半死半生でたどり着いたのがうそのように、海岸で女性将校とイチャついているシアーズのもとに、イギリス特殊部隊のウォーデン少佐がやってきます。クワイ川の橋の爆破作戦に参加させるためです。橋の場所があまりにも奥地にあるため、その場所を知る、シアーズの協力が必要だったからです。嫌がるシアーズに、ウォーデンは、実は彼が中佐ではなく二等水兵であることがばれていることを明かし、アメリカ海軍も承知であることを告げます。シアーズは承諾するしかありませんでした。 自分のプライドを大切にし、信念を持って、誇り高く生きているニコルソンと斉藤を見せられてきた眼には、このシアーズのいい加減さが、鼻についてきます。 シアーズとウォーデン、そして水泳が得意ということで選ばれた若い兵士ジョイスの3人は、ジャングルの道なき道を、案内係の現地人ヤンと荷物を運ぶ数人の現地女性とともに、進んでいきます。道中、日本兵と出会って戦闘したり、野宿したり、なかなか大変なはずですが、現地女性とイチャイチャしたりしているので、大変そうに見えません。 シアーズ一行が、橋が見えるところにたどり着いたのは、第1号列車がやってくる前日でした。その列車とともに橋を爆破する計画でした。もちろん、斉藤に課せられた完成期日でもあります。橋は完成し、満足げにニコルソンと斉藤が連れ立って歩いていました。 その夜、収容所では、イギリス兵たちが、完成を祝う宴会を催していました。シアーズたちは、橋の下に爆弾を仕掛け、導火線を伸ばし、離れた所に起爆装置をセットし、仮眠をとりました。 翌朝、シアーズたちが目を覚ますと、川の水位が下がり、導火線が所々見えています。橋の上を歩いていたニコルソンは、橋の下に見覚えがないひも状のものを発見します。 斉藤を伴い、河原に降り、ひも状のものをたどって行ってみると、起爆装置にたどり着きました。状況を察知したニコルソンは、大声で日本兵に知らせます。 起爆装置のもとにいたジョイスは、ナイフで斉藤を殺し、ニコルソンに押さえつけられます。向こう岸にいたシアーズは、駆け寄りますが、日本兵の銃弾に倒れます。ジョイスも流れ弾に倒れ、ニコルソンは、離れた丘の上にいたウォーデンの迫撃砲により、ダメージを受け、倒れます。倒れた所には、ちょうど、起爆装置がありました。 橋は爆破され、1番列車がちょうどやってきて、川に落ちていきます。すべてを、少し離れた丘の上から見ていた収容所の軍医は「馬鹿な!」とつぶやくのです。 ニコルソンと斉藤が信念を持って完成させた橋は、爆破されてしまいました。戦争のむなしさ、理不尽さを訴えているのでしょうか、鑑賞後には、「馬鹿な!」とつぶやく軍医と同じく、呆気にとられる自分がいました。 この映画の原作者は、実際に捕虜として、泰緬鉄道の建設に従事させられた経験があり、それをもとに、この小説を書いたそうです。しかし、ここに書かれているような事実はなく、クワイ川に架かる橋は、この映画の設定の1943年にはすでにできており、鉄道も運航しています。翌1944年に、連合軍の爆撃を受けますが、修復され、泰緬鉄道は、終戦まで、日本軍の物資運搬に働いていたそうです。 早川雪洲さんは、戦前から、アメリカなどで活躍していた俳優で、この映画の時点では、すでに大スターです。若い人は知らないかもしれませんが、渡辺謙さんよりも、ずっと以前に、ハリウッドで活躍している日本人がいたのです。この映画で、米アカデミー賞助演男優賞にノミネートされています。(受賞は逃しましたが。) 昨日の、マンドレイク大佐の“捕虜として、ラングーン鉄道の橋を作っていた発言”は、ピーター・セラーズとアレック・ギネスが似ていることから発せられた、ジョークです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2011.10.06 10:42:11
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