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カテゴリ:歴史
![]() 「アマデウス」 Amadeus 1984年 アメリカ映画 監督 ミロス・フォアマン 主演 F・マーリー・エイブラハム トム・ハルス ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(トム・ハルス)の生涯を、宮廷音楽家アント二オ・サリエリ(F・マーリー・エイブラハム)の目を通して描いた物語です。 米アカデミー賞作品賞をはじめ、数々の賞を受賞している傑作です。 ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトは、誰もが知っている、天才音楽家ですが、その生涯は波乱に満ちており、晩年は貧困にあえぎ、最期は35歳という若さで、不遇のうちに亡くなっています。妻に毒殺されたとか、サリエリに毒殺されたとか、うわさがあり、共同墓地に埋葬され、今では墓がどこにあるのか分からないそうです。 オーストリア皇帝ヨーゼフ2世(マリア・テレジアの長男で、マリー・アントワネットの兄)に仕える宮廷作曲家サリエリは、宮廷で女性と戯れ、下品な冗談で甲高く笑う、非常識な若者を見かけます。それがモーツァルトでした。 モーツァルトは神童と呼ばれ、7歳の頃から作曲し、音楽家である父親に連れられ、ヨーロッパ中を演奏して回っていました。その頃には、かなりの有名人で、サリエリも1度会いたいと思っていたのです。 ヨーゼフ2世がモーツァルトにオペラを製作させるため、招待したいと言い出し、サリエリは彼を歓迎するため、歓送曲を作ります。その曲を1度だけ聞いたモーツァルトは、その場で即興で編曲し、よりいい感じの曲に仕上げます。 その様子に驚愕したサリエリは、彼のあふれ出る才能に驚き、憧れ、そして嫉妬します。神を深く信じるサリエリは、いい曲ができた時にはいつも神に感謝してきましたが、今度ばかりは、神の与えた不公平を呪いました。なぜ、この下品で礼儀知らずの若者に、神はあふれんばかりの才能を与え、自分には平凡な才能しか与えてくださらなかったのか。 サリエリは、モーツァルトの音楽を愛していました。その斬新さ、美しさに魅せられ、誰よりも理解していました。だからこそ、嫉妬するのです。 この最初の出会いが、この後のサリエリの行動につながっていきます。 映画の冒頭、年老いたサリエリが、精神病院に面会にやってきた神父に「私がモーツァルトを殺した。」と語る、サリエリの行動に。(どんな行動かは書かないでおきましょう。) 一方、モーツァルトは、現在、クラシックの天才的作曲家として知られているのですが、この映画では、どちらかというと、音楽だけでなく、歌、演技を含めた総合芸術としてのオペラを創ることを熱望しています。 当時、優れたオペラを作り上げることが、音楽家としてのひとつのステイタスであったこと、交響曲などを作るよりも、手っ取り早くお金になることなど、いろいろとその理由は考えられますが、やはり、芸術家として、総合的な芸術を作り上げることに喜びを見出していたのではないでしょうか。 そして、彼の斬新的芸術家魂は、当時の神話や伝説を題材にしていた宮廷オペラの常識を打ち破り、トルコのハーレムを題材とした「後宮からの誘拐」や、皇帝から禁止されていたバレエを取り入れたオペラ「フィガロの結婚」や、舞台装置をラストにぶち壊してしまう大胆な演出を取り入れた「ドン・ジョバンニ」など、斬新なオペラを作り続け、皇帝を中心とした観客の貴族たちには不評だったのです。 しかし、芸術家のモーツァルトは、自分自身の創るものに自信があり、こだわりを持っています。それは、「後宮からの誘拐」の上演後、皇帝ヨーゼフ2世から「音が多すぎる。」と言われた彼の返事「ちょうどいいです、陛下。」という言葉に、表れています。 ことごとく上演するオペラが不評だった彼は、仕事がなく、どんどん貧困に陥っていき、当時、貴族社会だけでなく、民衆の間にも広がりつつあった、“大衆オペラ”に、光明を見出していくのですが、それが、非常に悲劇的な結末につながっていくのです。 モーツァルトは、神童と呼ばれもてはやされた幼少期から音楽漬けの毎日を送ってきました。そのため、普通の人なら成長とともに獲得してくる常識や生活力を、ほぼ獲得しないまま、大きくなってきたのではないでしょうか。それなのに、結婚し、子どもをもうけ、唯一のよりどころであった父親を亡くし、一家の大黒柱として、収入を得なければならなかったのです。そこに悲劇の根本があったのではないでしょうか。 そんな先進的な芸術家にありがちな悲劇的なモーツァルトの人生を描いた、感動作です。もちろん、劇中に流れる音楽は、オペラの場面はもちろんのこと、全編モーツァルト作曲のものばかりです。 今回、ずいぶん久しぶりの更新になってしまいました。なかなか仕事が忙しく、平日の更新が難しくなってしまいました。 今後も、週末中心の更新になってしまうと思いますが、よろしくお願いします。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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