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カテゴリ:ドラマ
![]() 「127時間」 127 Hours 2010年 アメリカ映画 監督 ダニー・ボイル 主演 ジェームズ・フランコ 岩山でたったひとり遭難し、127時間後、奇跡の生還をするという感動の実話の物語、はっきり言って、ヘタに作るとどう考えても退屈な内容になる、この物語が、何と米アカデミー賞作品賞にノミネートされた(受賞は「英国王のスピーチ」)という話を聞き、いかに1本の映画に仕上げてあるのか、非常に興味をひかれたので、馴染みのレンタルビデオ店(このブログを続けて見ている人にはお馴染みの、「ザ・ライド」をホラーに、「ゲット・スマート」をアクションに分類している、あのビデオ屋です。)で、旧作100円になるのを待ってレンタルしてきました。 映像のほぼ80%をたったひとりで奮闘している主人公に、「スパイダーマン」のピーターの親友であり、好敵手“グリーン・ゴブリンJr.”を好演している、ジェームズ・フランコ、監督は、「スラムドッグ$ミリオネア」でアカデミー賞(作品賞も監督賞も)を受賞している、ダニー・ボイルです。 アーロン・ラルストン(ジェームズ・フランコ)は、金曜の夜、仕事を終えると大急ぎでブルー・ジョン・キャニオンへ向かう用意を始めます。忙しい喧騒の都会を一刻もはやく離れようと、妹からの、たまには家族に連絡してという留守電を無視して、出発します。 週末の登山やロッククライミングは彼にとって生きがいそのものなのです。 翌日、車の中で起きたアーロンは、ビッグドロップというところへ、通常4時間かかるところを45分で向かおうと、マウンテンバイクにまたがり、ノリノリで岩場を走り抜けていきます。途中、岩にぶつかり自転車から投げ出されてもお構いなしです。 彼は自然の中でひとりを満喫し、見たものをデジカメやビジオカメラで記録しながら行きます。 自転車を降りて、跳ねるように渓谷の岩場を進んでいると、道に迷っている女の子2人と出会います。彼は意気揚々と彼女たちの前に現れ、道案内を買ってでます。 取っておきの遊び場を紹介すると、2人は大喜びです。 アーロンは彼女たちにパーティーに招待され、そこで別れます。 再びひとりになったアーロンは好きな音楽を聞きながら目的地へ向かいます。トントン跳ねるように進んでいたが、ある岩に足を乗せたとき、彼の運命は一変するのです。 突然岩が崩れ、彼は狭い谷底に落ちてしまいます。最悪なことに落石した岩が、彼の右腕を挟み身動きできなくなってしまうのです。 ![]() プロローグ的に、アーロンがブルー・ジョン・キャニオンに向かう様子、2人の女性ハイカーに出会い、地底湖で遊ぶ様子が、美しい大自然の景色とともに、軽い調子で、映し出されていきます。このプロローグは、彼の性格というか、自然に対する姿勢というか、そういうものを表していると思います。 アーロンは、週末の度に、登山やキャニオニング(渓谷などを探検したりして楽しむことをこう言うようです。)に出かけており、このブルー・ジョン・キャニオンについても熟知しており、慣れているようです。 そのため、けっこう軽装(ロープは結構持っていましたが、水は400ccほどの水筒1個です。)で臨んでおり、自らの優れた身体能力を頼りに、渓谷の岩の上を跳ねるように進んでいきます。 彼は、大自然を完全になめきっており、それは、誰にも出かける先を告げずに出かけている、という姿勢にも表れています。はっきり言って、いやな男です。 プロローグで、彼のこのような軽い様子を映し出しているおかげで、遭難したあとの、回想や妄想を繰り返す彼の心情が、手に取るようにわかり、最初はいやな男だなあ、と思っていたのですが、だんだんと感情移入していきます。 そして、ほぼ雨の振ることのない乾燥地帯で、全く人が通ることもなく、通ったとしても、途中で映る上からの映像からもわかるように非常に狭い岩の裂け目のため、上から見ても全く姿が見えず、岩を削って動かそうとしても、途中で彼自身が気づいたように、岩が削られるとますます挟まった右手に岩が食い込んでくるという状況、上部の岩のでっぱりにロープを引っ掛けることには成功していますが、それを頼りに岩を持ち上げようとするが、現状の装備ではそれもかなわず、という、八方ふさがりの状況です。 つまり、彼が助かるために残された方法は、たった1つしかありませんでした。はっきり言って、観ている観客にもそれはわかっていました。 だから、127時間のうちのほとんどは、彼が、そのたったひとつ残された脱出方法を実行するための覚悟をする時間だったわけです。 最後の水を飲んでしまった後、彼はその最後の脱出方法を実行します。それは、充分な装備がない中でのことですから、スパッとできるわけはなく、結構時間がかかったことでしょう。かなりの覚悟と、強い精神力が必要です。 彼は終始冷静でした。自分の置かれている状況を客観的に判断し、大声で助けを呼ぶ、岩を削ってみる、岩を持ち上げてみるなど、できうる方法はすべて試し、残された水は少しずつ飲み、おしっこをビニール袋に貯めておき、ビデオカメラに、家族や知り合いへのメッセージを残し、岩の間にスクービー・ドゥーの風船を見た時は、デジカメを通して見て幻覚であることを確かめています。 そう、彼はなかなかの男だったのです。プロローグで見せていたチャラい男ではなく、危機に陥っても冷静に判断し、最善の方法を実行できる、なかなかできた男だったのです。 それは、最後の脱出方法を実行し、その場を離れた後、振り返って、自分が127時間奮闘した現場を写真に撮るという行為にも表れています。(もちろん残った“あれ”も、写っているはずです。) アーロンがそういうなかなかできた男だということが、だんだんわかってきて、最後彼が助かった時、観ている我々も安堵することができたのです。 ![]() 94分という短い映画ですが、というか、内容からしたらずいぶん長い時間、見事に持たせたな、というのが正直な感想です。はっきり言って、「仰天ニュース」や「アンビリーバボー」で30分くらいで紹介されるような事件です。 それは、やはり演出の力と、主演のジェームズ・フランコの演技力に負うところが大きいでしょう。見事な映画でした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2012.10.08 15:04:37
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