勝手に映画批評

2013/06/18(火)18:00

メメント

サスペンス(87)

「メメント」 Memento 2000年 アメリカ映画 監督 クリストファー・ノ-ラン 出演 ガイ・ピアース ジョー・バントリアーノ キャリー=アン・モス  この映画、非常に難解だと聞いていました。時系列が完全に逆行しているとのことで、1度見てみたいと思いながら、ちょっと二の足を踏んでいました。  レナード(ガイ・ピアース)は、サングラスの男(ジョー・バントリアーノ)を銃で殺害し、その死体をポラロイド写真で撮影しました。(この部分、完全に逆回しになっています。)     レナードはあるモーテルの一室にいて、なぜここにいるのか、いつからいるのか     分かりません。(白黒)  レナードがホテルのフロントと話していると、テディ(冒頭で殺された男)が親しげにやってきました。レナードは写真で男の名を確かめると、写真で確かめた自分の車に2人で乗っていきます。開いている運転席側の窓を閉めようすると、ガラスが粉々でした。2人は郊外の空き家に着きました。青いトラックが置いてあります。レナードがテディの写真を確かめると、「この男を信じるな。こいつが犯人だ。殺せ。」とメモってあります。レナードは、探していた男にやっと出会えたと思い、銃でテディを撃ちます。     目覚めたレナードは、手に彫ってある”サミーを忘れるな”のタトゥーを確かめ、     「サミーの二の舞にはならないぞ。」と思い返しています。そして、太モモに貼って     ある“剃れ”という張り紙を見つけます。(白黒)  レナードは、テディの写真に「こいつが犯人だ。殺せ。」とメモり、銃を準備してモーテルの部屋を出ました。フロントで、けがをして以来、新しいことを覚えられないという自分の症状を説明し、「前にも聞いたよ。」と言われます。テディの写真を見せ、「この男が現れたら知らせてくれ。」と言っている矢先、テディがやってきました。     レナードはメモの通り太ももを剃ろうとします。そこへ電話がかかってきました。     ナレーション(レナード)はメモの重要性について語ります。(白黒)  レナードはカフェのトイレで手を洗っていて手のタトゥーに気づき、他にもタトゥーがあることに気づきます。トイレを出るとウェイターに「忘れ物です。」と、モーテルのカギと封筒を渡されます。モーテルに戻り、封筒の中身を取り出します。封筒には、“レナードへ、ナタリー”と書いてあり、中には、“ジョン・エドワード・ギャビン”という名のテディの免許証のコピーが入っていました。テディの写真の“こいつを信じるな”のメモを確かめ、テディに電話をします。テディに「そこにいろ。」と言われ、「待ってる。」と答えます。そして、服を脱ぎ、体中に彫ってあるタトゥーを確かめ、テディの写真に“こいつが犯人だ、殺せ”と書き加え、「ついに見つけた。」とつぶやきます。     レナードは電話に向かって、「新しいことを覚えられないから、サミーの二の舞に     ならないように、メモをきちんと整理している。」と説明します。(白黒)  レナードはメモにしたがって、1時にカフェに行き、ナタリー(キャリー=アン・モス)と会います。捜査に協力するというナタリーから、封筒を渡されます。封筒には、調査を依頼していた車の登録証と免許証のコピーが入っており、「持ち主は“ジョン・G”で、写真は知った顔よ。」と言われます。そして、「家に忘れていったでしょう。」とモーテルのカギを渡されます。  冒頭から、映り出される通りの詳しいあらすじ(あらくない?)を書かせていただきました。ここまでで30分ぐらい(全体の1/4ぐらい)です。  わかりました?時間が逆行していることが。  主人公のガイ・ピアース演じるレナードは、強盗に襲われた時、妻を犯されて、自身も暴行を受け頭部を怪我して以来、記憶が10分程度しか維持できない、短期的前向性健忘症になってしまいます。そのため、いろいろなことをすぐ忘れてしまうので、写真を撮ったりメモを取ったり、特に大事なこと(妻を襲った犯人に関すること)は、自分の体にタトゥーしておくことにしていました。 だから、この映画は、レナードの感覚を実感できるように、一場面一場面ぶつ切りにして、時間が逆行する様に描いているのです。  冒頭の完全逆回しは、「この映画時間が逆行しているから気を付けてみるように。」という警告ですね。  また、彼の症状をより分かりやすく説明するためでしょうか、別時系列の場面が、区別しやすいようにわざわざ白黒映像にして、間々に挿入してあります。  難解だと聞いていたので、構えて鑑賞に臨んだのですが、場面がブツ切れで描いてあることにより、前向性健忘症のレナードの感覚が実感でき、しかも、場面が戻っていって、ちゃんと前の画面の最初のところで終わってくれていたり、疑問に思ったことの答えが次の場面(実は前の場面)でちゃんとわかるようになっていて、レナードが何を忘れているのか、そして真実は何なのか、非常によくわかりました。  なるほどねえ、これが正しい時間軸で順当に描いていたら、いちいち相手の名前を聞いたり、自分の症状を説明したりするレナードが非常にうっとうしく感じ、彼に感情移入することができないかもしれません。  見事な脚本・構成です。変に難しく考えず、出てくる映像を素直に受け取っていく方が、わかりやすいのかもしれませんね。  このクリストファー・ノーラン監督、「プレステージ」では、ブツブツに切った場面を時間軸をバラバラにして、大事な秘密(これについては、以前、マジックとしては反則では、という趣旨で記事を書かせていただきました。)がだんだんわかっていくように構成していましたし、「インセプション」では、同時進行で起こっている夢の各階層の場面を、少しずつ見せていくことで、緊迫感を高めていました。完全に時間が戻っていくのはこの映画だけですが、ブツブツに切った場面を非常に効果的に再構成することができる、構成力に優れている監督だなあ、と思いました。

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