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カテゴリ:歴史
![]() 「バリー・リンドン」 Barry Lyndon 1975年 イギリス映画 監督 スタンリー・キューブリック 主演 ライアン・オニール 僕が敬愛する、巨匠キューブリック監督ですが、この映画はまだ観ていませんでした。大作であることはわかっていましたので、なかなか手が出なかったというのが、正直なところです。これで、「スパルタカス」以降の巨匠の作品はすべて観ました。(「時計じかけのオレンジ」と「シャイニング」はすでに観ていますが、記事はまだ書いていません。また、書きます。) 18世紀半ば、アイルランドの農家に生まれたレドモンド・バリー(ライアン・オニール)は従姉のノーラに初恋をし、恋人同士となりますが、ノーラはクイン大尉とも恋仲になります。大尉が非常に裕福なため、彼女の家族は貧困から抜け出すために結婚を望んでいたのです。 バリーは、クイン大尉に決闘を申し込み、バリーの弾が命中してクイン大尉は倒れてしまいます。バリーは警察の追及から逃れるため、母ベルから旅費として20ギニーのお金を渡され、村を出ます。でも、バリーの銃には麻弾が装填されていたため、大尉は気絶しただけでした。ノーラと大尉の結婚を望む兄弟たちが、バリーを村から追い出すために仕組んだものだったのです。 バリーは、ダブリンへ向かう道で追いはぎにあい一文なしになってしまい、途中立ち寄った村でイギリス軍の兵員補充に志願して大陸に渡り、七年戦争に参加します。 軍隊の中で頭角をあらわしたバリーはやがて旧知のグローガン大尉と再会し、彼の部下となります。しかし、ミンデンの戦いでグローガン大尉は戦死し、悲しんだバリーは脱走を決意し、将校の服・身分証・馬を奪って同盟国のプロイセンに渡ります。 イギリス軍の将校になりすましたバリーは、プロイセンからオランダへ抜け、アイルランドへ帰る道中、プロイセン軍のポツドルフ大尉に職務質問を受け、逃亡兵であることがばれてしまいます。バリーは逮捕を恐れ。ポツドルフ大尉の下で兵卒になることを選択します。 プロイセン軍でバリーは、厳しい兵卒生活を送りますが、戦地でポツドルフ大尉を救出した功績により、戦地を離れ、プロイセン警察でスパイとして働くことになります。 バリーは、ギャンブラーのシュバリエ・ド・バリバリーを探る任務を与えられ、召使いとして潜入しますが、シュバリエが同郷人なことから、プロイセン警察を裏切り、シュバリエの相棒として二重スパイとして働き、やがてシュバリエが国外追放になるとバリーは策を凝らし、プロイセンから脱出し、彼と共にヨーロッパ各国の社交界でイカサマによって荒稼ぎするのでした。 そんな中、バリーは病弱なチャールズ・リンドン卿の若い妻レディー・リンドンに出会い、彼女といい仲になります。そして、リンドン卿が病死すると、バリーはレディー・リンドンと結婚してバリー・リンドンを名乗るようになるのです。 ![]() 長々とあらすじを書きましたが、ここまでで半分くらいです。何しろ、3時間を超える長い映画です。しかし、主人公レドモンド・バリーの二転三転する人生を淡々と描いているためか、まったく退屈することなく引き込まれていきます。 でも、はっきり言って、「ある愛の詩」の大ヒットで大スターとなったライアン・オニールですが、評判通りの大根ぶりで、ほぼ無表情で変化しない顔(演技は顔だぞ!顔!パンサー尾形も言っていただろ!!)で、棒立ち、格闘や剣技は元々スタントマンなので、案外上手ですが、ほぼ感情表現はできていません。 でもでも、僕は気が付いてしまいました。彼の無表情って、顔の作りが元々そうなっているのでしょうか、何となく悲しい顔に見えるんですよね。その悲しい顔の無表情が、淡々と進むお話に、結局は真に幸福をつかむことができなかったレドモンド・バリーの人生に、ぴったりなんですね。 そういえば、彼のヒット作「ある愛の詩」「ペーパームーン」(娘のテイタムが最高です。)って、やっぱり悲しいお話ですよね。 なるほど、さすが巨匠、そこまで見抜いての、彼の起用だったのですね。 それから、この映画なんといっても見るべきは、その映像の美しさ、徹底した時代考証です。 わざわざ当時のものを手に入れて、当時よりも大きくなっている現代人に合わせてすべて縫製し直した衣装、本物の城にこだわった貴族の住まい、銃・剣・カード・楽器などの小道具や家具・調度品、田舎の風景まで、まさに完璧主義なこだわりの映像です。 とりわけ、当時の室内のロウソクのみの明かりにこだわり、わざわざNASAから当時の最新鋭の超好感度のカメラレンズを借り受け、撮影したという逸話も残っています。 アカデミー賞での、撮影賞・美術賞・衣装デザイン賞を受賞は当然でしょう。(あと、バロック音楽にこだわった音楽賞も受賞しています。作品賞・監督賞にもノミネートされていますが、例のごとく、受賞は逃しています。) しかし、当時の貴族の間で流行していたという、男女とも、おしろい・ほお紅につけボクロといったメイクは、ちょっと勘弁してほしかったですね。(一説によると、当時の貴族は結構不衛生で、顔を洗う習慣がなく、そのための汚い顔を隠すためだったということです。) ![]() ということで、やっぱりさすがキューブリックという映画でした、 とにかく、その完璧すぎる映像を観るだけでも、必見の映画です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2013.06.30 00:56:43
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