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カテゴリ:サスペンス
![]() 「ゴーストライター」 The Ghost Writer 2010年 フランス・イギリス・ドイツ映画 監督 ロマン・ポランスキー 出演 ユアン・マクレガー ピアース・ブロスナン 「ボーン・シリーズ」「96時間」に続いて、CIAは怖いと思う映画を紹介します。 元イギリス首相アダム・ラング(ピアース・ブロスナン)の自叙伝執筆を依頼されたゴーストライター(ユアン・マクレガー)に出版社が提示した条件は、米国で講演中のラングが滞在する島に今夜中に発ち、25万ドルという破格の報酬で1ヶ月以内に原稿を仕上げるという厳しいものでした。しかし、政治には興味がないし、前任者がフェリーから転落死したということもあり、彼は気乗りがしませんでした。 代理人に説得されてラングの自叙伝を出版するラインハルト社に面接に行くと、そこにはラインハルト社ニューヨーク支部のマドックス、ラングの弁護士クロールも顔を揃えていました。言いたいことを率直に話すと、かえって気に入られてしまい、いつの間にか仕事を引き受ける羽目になってしまいました。 ヒースロー空港の待合室では、ラングがイスラム過激派のテロ容疑者に対する不当な拷問に加担した疑いがあるというニュース速報が流れていました。飛行機を降り、ラングが滞在する東海岸の島へ向かうフェリーに乗り継ぎます。そのフェリーは前任者マカラが泥酔して落ちたフェリーそのものでした。 ラングの邸宅は厳重な警備が敷かれ、中へ入るや否や、女性の怒号が響いてきます。ラングの妻ルースは機嫌が悪い、と専属秘書のアメリアに説明されました。彼女は守秘契約書にサインするように求め、自叙伝の草稿の屋外への持出しは厳禁だと言います。 取材をしながら原稿を書き進めるうちに、ラング自身の過去に違和感を覚えた彼は、前任者の不可解な死を追いかけてしまい、国家を揺るがす恐ろしい秘密に触れてしまうのでした。 ![]() このポランスキー監督の映画って、あまり見ていないのですが、「戦場のピアニスト」の時に思ったのですが、風景で雰囲気を作るのがうまいなあと思いました。 「戦場のピアニスト」の時は、ゲットーの街並みや、移動の際ユダヤ人たちが集められた広場の様子(そう、主人公の家族たちがキャラメルを分け合っていたあの広場です。)、そしてやっぱり圧巻は、主人公がしばらく隠れていた誰もいなくなったワルシャワの真っ白な廃墟の町(パッケージ写真のヤツね。)、登場人物の心情や話全体の雰囲気を殺伐とした風景をワイドな絵で見せることで、表現し、否が応でも悲しい気持ちにさせられてしまいました。(もちろん泣ける理由はそれだけではないけどね。) すごい古い映画(1968年)なんですが、「ローズ・マリーの赤ちゃん」というこわーい映画があります。確かまだ僕が高校生か大学生の頃だと思うんですが、TVで観たことがあって、はっきり言って内容はほぼ覚えていないのですが、ミア・ファローという非常にかわいらしい女優さんが主演なんですが、暗い画面が多く、非常に怖かった覚えがあります。(僕のホラー嫌いはこの辺から来ているのかもしれない。) そして、この映画では、アメリカ東海岸の島(ナンタケット島?)だという元イギリス首相ランダの別荘(イギリスではなくアメリカですからやっぱり別荘だよね。)の周辺の全面ほぼグレーの風景、別荘の中の直線的な無機質な感じの家具がポツンポツンと置いてある冷たい感じの部屋、そしてラストの大都会の殺伐とした感じのストリート、そんな重苦しい風景たちが、映画全体の重苦しい雰囲気を作っています。 ユアン・マクレガー扮する主人公のゴーストライター(全編にわたって名前が出てきません。“ゴースト”ライターだから?ラングはそのまま「ゴースト!」と彼を呼んでいます。)は、今ひとつ乗り気になれないまま、何にしても引き受けてしまったのだから真面目に取り組もうと、島にやってくるのですが、時を同じくして、元首相のスキャンダルが発覚し、スタッフは忙しそうに対応に追われていますし、マスコミは押し寄せてきますし、肝心の元首相はなかなか姿を見せません。 そんな中、不幸にもフェリーから落ちてなくなった前任者が書いていた原稿を読んだり、資料を調べたり、関係者に話を聞いたりと、まじめにラングの自叙伝を仕上げようとしているのですが、どうしても、部外者として、この場にいちゃいけない感じがぬぐえません。 そんな中、この元首相の周辺には、騒がれているスキャンダルの他にも何かしらの秘密があり、それが前任者の死に絡んでいることに気づいてしまい、そして………。 そんな、ゴーストライターの孤軍奮闘を、シリアスにユアン・マクレガーが演じています。彼が出演している映画は今までにいろいろと観てきましたが、こんなに感情を押しおろしたシリアスな演技ができるとは思えませんでした。これは、彼のベスト演技ではないでしょうか。 ![]() そんな重苦しい雰囲気の中、ユアン・マクレガーが孤軍奮闘する、なかなか上質のサスペンス・ミステリーでした。最後には恐ろしい結末が待っており、アメリカって怖いと思ってしまうこと請け合いです。 やっぱり元MI6の凄腕エージェントだった元首相ですから、CIAが絡んでくるのはしょうがないよね、と思ってしまったのは私だけでしょうか。(笑) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2013.07.31 23:14:51
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