勝手に映画批評

2013/10/04(金)14:32

HOME 愛しの座敷わらし

ファンタジー(31)

「HOME 愛しの座敷わらし」 2012年 日本映画 監督 和泉聖治 出演 水谷豊 安田成美 橋本愛 濱田龍臣 草笛光子  荻原浩のヒット小説を映画化した作品です。  同じく水谷豊主演作、伊藤蘭との夫婦共演で話題になった映画、「少年H」公開の宣伝のために、TV放映しましたので、録画しておいたものです。  父・晃一(水谷豊)の転勤で、東京から岩手の田舎町へと引っ越してきた高橋一家。  晃一がよかれと思って選んだ新しい住まいは、なんと築200年を数える古民家でした。  東京での暮らしに馴れていた妻の史子(安田成美)は、突然の田舎暮らしに不安と不満でいっぱいです。老人ばかりの近所付き合いにも乗り切れないでいました。  中学2年の長女・梓美(橋本愛)にも古民家はただのボロ家にしか見えず、転校先の学校生活を考えると心が落ち着きません。転校前の学園生活でも人間関係で悩んでばかりだったからです。  同居する晃一の母親・澄代(草笛光子)は田舎住まいには支障を語らないものの、最近、認知症の症状が始まりつつある様子です。  唯一、古民家への転居を楽しんでいる小学4年の長男・智也(濱田龍臣)は、治りかけている喘息の持病を今も史子にひどく心配され、サッカーをやりたくてもやれずにいます。  五者五様、どこかギクシャクしている一家をやんわりとまとめたい晃一でしたが、家族の不平不満をなかなかうまく解消することはできず、異動先の支社でも馴れない営業職に悪戦苦闘の毎日でした。  そんなある日、不思議な出来事が高橋家に起こり始めます。誰もいない場所で物音が聞こえたかと思えば、囲炉裏の自在鉤が勝手に動いたり、掃除機のコンセントがふいに抜けたり、手鏡に見知らぬ着物姿の子どもが映ったり……。  どうやらこの家には東北地方の民間伝承で有名な“座敷わらし”が住んでいるようなのです。  ということで、いろいろな問題を抱えた家族が、座敷わらしとの交流を通して、問題を解決し、幸せになっていくという、ほのぼのストーリーです。  その問題は、当人にとっては結構深刻かもしれませんが、ハラハラドキドキするわけでもなく、人類の存亡がかかっているわけでもなく、はっきり言って、気の持ちようで変わってくるような問題ばかりです。結局、座敷わらしとの交流で気持ちに余裕ができて、状況が好転したという感じです。  まあ、いい話だなあ、という感じの、ほのぼのホームドラマでした。  そんなわけで、もっとドキドキするお話の方が好きな僕としては、非常に物足りなく、はっきり言って、退屈なお話でしたので、お話の流れとは関係ないところが気になってしまいました。  まず、座敷わらしの設定についてです。  本来伝説の座敷童というのは、ある特定の部屋および家屋に住み着いているもののはずです。(だから“座敷”なんですよね。)東北地方の座敷童が出るということでTVなどで取り上げられ、有名になった旅館でも、出現するのはある一部屋だけというお話です。  だから、この映画で描かれているように、庭(「トトロ」の家みたいに、庭と森の境界線があいまいな家なので、家の敷地内かは怪しい。)の祠に出現したり、坊主と庭でくつろいでいたり、ましてやこの映画の結末(一応秘密にしておきます。はっきり言ってがっかりしましたが。)のようなことはあり得ないのではないだろうかと思ってしまいました。(屋根裏の梁に腰かけて微笑んでいるというのは、ギリ・セーフだと思いますが。)  飢饉や貧しさのために生まれる間もなく、口減らしさせられた子どもの霊だとか、その家に幸いをもたらすといった設定は、伝説通りなので、なんか、(特にラスト)単なる子どもの幽霊のような扱いに非常に疑問を持ってしまいました。  それから、お父さんの会社についてです。  時期的には、6月の終わりか7月の初めのことだと思われます。はっきりとは語られていませんが、引っ越してすぐ、お姉ちゃんは転校先の中学校に登校しており、弟は病気のこともあるので夏休みが終わってからということにしていることから推測できます。(その割には、晴天ばかり続いているのは変ですが。空梅雨?)  そこで疑問を持ってしまったのです。いくらプロジェクトの失敗の責任を取ってのこととはいえ、学校に行っている子どもがいる男をこんな非常に中途半端な時期に左遷させるのか、ということです。しかも東京の本社から遠く盛岡の支社まで。  なんて非人道的な会社でしょうか。これって、組合とかは何にも言わなかったのでしょうか。  しかも、数か月後には………。(結末にかかわるので、濁しておきます。)  それに、会社としては、全国いたるところに支社があるような大企業ではなく、どう見ても、中小企業です。なぜ東京本社と盛岡支社なのか。非常に疑問です。  どうも、初めに座敷わらし有りき、な感じですね。やっぱり“座敷童”なら東北でしょう。という安易な設定でしかない感じですね。そして、お姉ちゃんは学校の人間関係で悩んでいたわけですから、学校に行かせなけりゃいけないし、絵的にはやっぱり夏の方がいいし、ということで、この1学期の終わりという非常に中途半端な時期設定になったのではないでしょうか。  原作の小説は読まずに、映画だけ観て批評しているので、どこまでが原作の設定で、どこが映画オリジナルなのかわかりませんが、はなはだ設定的な部分で疑問を持ってしまったため、心が癒されるはずのほのぼのストーリーに、今ひとつほのぼのできなかった作品でした。  ところで、いけませんね。「相棒」の観すぎでしょうか、水谷豊さんが、杉下右京警部にしか見えないのですが………。困ったものです。  ちなみに、お姉ちゃん役の橋本愛さん、今「あまちゃん」のサブヒロインとして、大ブレイク中の子です。「告白」でも、存在感バリバリでした。今後大女優になる予感バリバリです。  

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