勝手に映画批評

2018/03/26(月)17:18

エクス・マキナ

SF(126)

「エクス・マキナ」 Ex Machina 2015年 イギリス映画   監督・脚本 アレックス・ガーランド 出演 アリシア・ヴィキャンデル ドーナル・グリーソン オスカー・アイザック    ソノヤ・ミズノ    久々にDVDを借りてきました。「ジェイソン・ボーン」で存在感をバリバリに発揮し、今度アンジーに代わって「トゥーム・レイダー」の新シリーズの主役に抜擢され大注目の、アリシア・ヴィキャンベル主演の傑作SFということで、非常に観たかったこの作品をまず、観賞しました。   IT企業ブルーブックでプログラマーとして働くケイレブ(ドーナル・グリーソン)はある日、抽選で社長ネイサン(オスカー・アイザック)の広大な山岳地帯の奥にある別荘を訪問する権利を得ます。 ネイサンはここが人工知能(A.I.)の開発研究施設であることを明かし、ケイレブに彼の人工知能にチューリング・テストを行うよう依頼します。 ケイレブは、透明な壁に囲われた部屋の中で暮らすA.I.のエヴァ(アリシア・ヴィキャンベル)と対面します。エヴァは顔面と手、足先のみが皮膚で覆われているが残りの部分は機械の内部構造が透けて見える姿をしていました。 次の朝、ケイレブはメイドのキョウコ(ソノヤ・ミズノ)に会います。ネイサンによるとキョウコは英語を理解しないため、機密保持には都合が良いとのことでした。 ケイレブとエヴァの面談中に停電が起こり、部屋の照明と2人に向けられた監視カメラの電源が落ちます。その時エヴァはケイレブに「ネイサンは嘘つき。彼の言うことは信じてはいけない」と忠告します。その夜、ネイサンは停電の原因は不明だが、調査はしているとケイレブに説明します。 エヴァとケイレブは面談を行う度に親密になっていきます。 ある日エヴァは面談を中座し、ウィッグと服を身に着けロボットと分かるほとんどの部分を隠して現われ、自分の描いた絵をケイレブに見せます。面談の最中にまた停電が起こると、エヴァは停電を起こしているのは自分であり、ネイサンに監視されていない状態でケイレブと話がしたいのだと言い、彼女は次第にケイレブを誘惑するような態度を取り始めるのでした。  A.I.とは、単なるコンピューターではなく、自ら思考・学習する人工の知能のことです。つまり、鉄人28号やマジンガーZではなく、鉄腕アトムやC3-POのことです。では、そのA.I.を人間そっくりに造る目的は何でしょう。スピルバーグ監督の映画「A.I.」では、子どもの姿をしたA.I.を亡くなった子どもの代わりにするお話でした。「ターミネーター」シリーズでは、人類そっくりのA.I.を人間社会の中に紛れさせ、暗殺を行うのが目的でした。  金と暇と技術を持ち合わせたネイサンは、山の中の別荘で、美しい女性の姿のA.I.を造っていました。果たしてその目的は???そうです。今、下世話な想像をしたあなたの、ご想像の通りです。しかし、彼はA.I.をなめていました。「マトリックス」や「ターミネーター」「火の鳥」などを知っているSFファンなら、高度なA.I.がその思考の果てに人類に反抗する道を選ぶことが必然であることを知っています。そうです、この映画、結末はわかっていたんですね。  この映画、横柄な態度が鼻につく社長ネイサンよりも、性格がいいだけのお人好しな若者ケイレブよりも、かわいらしい女性の姿をした“囚われの姫”A.I.エヴァに感情移入して観賞する方が多いのではないでしょうか。そして、結末を見て安心し、しばらく間をおいて、実は恐ろしい結末だったことに気づき、恐怖するのです。そういう映画です。  やっぱり、脚本・演出の妙でしょうか、このアレックス・ガーランドという監督、この映画が何と初監督作品です。しかし、「28日後...」「サンシャイン2057」「わたしを離さないで」の脚本家でした。なるほど。  そして、なんといってもA.I.エヴァを演じたアリシア・ヴィキャンデルですね。「ジェイソン・ボーン」の時も思ったんですが、彼女、少女と見紛うほどのかわいらしい外見ですが、何かしら意思を感じさせる目の輝きが、なめてかかるとケガをするぞ、という雰囲気を持たせる、不思議な魅力を持った女優さんですね。「リリーのすべて」では、性転換した夫を支える妻という難しい役どころを演じ、米アカデミー賞助演女優賞を受賞しています。まだ20代、末恐ろしい女優さんです。  ということで、米アカデミー賞視覚効果賞、ロサンゼルス映画批評家協会賞助演女優賞、英国インディペンデント映画賞作品・監督・脚本賞など、多くの賞に輝いている、今後が非常に楽しみな新人監督、新人女優の巧みな仕事を味わうことができ、非常に満足でした。  また1人、お気に入り女優が増えてしまいました。

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