アルマゲドン
「アルマゲドン」 Armageddon 1998年 アメリカ映画監督 マイケル・ベイ主演 ブルース・ウィルス 前回の「ディープ・インパクト」に遅れること2カ月、同じような映画が続けて公開されるということで話題になりました。こちらは、主演が大スターブルース・ウィルスということもあり、明らかに宣伝も派手で、興行的にも前者に大きく水をあけて大ヒットしました。内容も、緊迫感が半端ではなく、全体に派手になっているので、まあ、当然かなという感じですが、はっきりいって、科学的なデタラメ度も派手になっています。マイケル・ベイ+ブルース・ウィルスだから当然ですが、とりあえず突っ込んでみますか。 まず、テキサス州ほどの小惑星が地球の方へ向かっていて、あと18日で衝突するということでしたが、どうしてそこまで発見できないのかということです。 時速35000kmということなので、距離にして、単純計算で1500万km(18×24×35,000=15,120,000)ぐらいです。 これがどのくらいの距離かというと、地球と火星が一番近い時で約7800万キロだそうです。つまり、火星軌道よりもずいぶん近くまで来ているということです。これは、もしかしたら肉眼でも見える距離ではないでしょうか。どうして、もっと早く、発見できないのでしょうか。 現在、世界中の天文台や研究所や素人天文家が、毎晩毎晩、空を観測しています。新彗星や新星などを発見できないかと頑張っているのです。(もちろんそれだけではありませんが) そして、見つけたら、我先にと報告をします。なにしろ、新彗星や新星を発見できれば、自分の好きな名前がつけられるのですから、ライバルよりも、1秒でも早く報告したいのです。そんな中、大きさからして、超A級の彗星(小惑星も動き始めたら彗星です。)が、やってくるのですから、即座に発見して当然でしょう。 アステロイドベルト(火星と木星の間にある小惑星帯)の中の小惑星(イトカワのような)だったら、めぼしいものは名前も付いていて、位置もきちんとわかっています。また、単独で太陽を回っている小惑星や彗星も、かなりの数が分かっています。ハレー彗星などの有名な彗星が来るたびに話題になっているように、現在位置から、最接近の日時まで、きっちりと分かっています。 「ディープ・インパクト」では、1年以上前に、素人の高校生が数10kmの彗星を発見していました。昨日そこにも突っ込みを入れましたが、この「アルマゲドン」の状況は、それよりもありえないことです。 しかも、この映画では、小惑星の衝突のわかった理由というのが、観測ではなく、まるで誰かが操作したがごとく、うまい具合に、スペースシャトルにぶつかってきた小隕石群でした。これで、その後小惑星がやってくることになるのか、全く意味不明です。小惑星と、小隕石群とは、どういう関係なのでしょうか。小惑星が地球にやってくる理由として、2つ考えられます。 ひとつは、大きな楕円軌道を描いている小惑星の軌道が、ちょうど地球がいるときに地球の公転軌道と、交差するときです。太陽系には、惑星の軌道と交差するように大きな楕円軌道で、太陽を公転する小惑星がいくつか知られています。しかし、この場合、軌道はすでに分かっているので、衝突があるとすれば、何年も前から分かるはずです。そして、前触れで小隕石が飛んでくるというのは全くあり得ません。 もうひとつは、上記の小惑星、あるいはアステロイドベルトの小惑星が、ほかの天体との衝突などで、軌道を外れ、飛んでくる場合です。この場合、分裂したり、爆発したりして、大小の破片に分かれて飛んで行くことは当然ありますが、違う方向に飛んで行くはずです。飛んで行くエネルギーは衝突のエネルギーしかなく、真空中なので空気抵抗とかはないので、大きさや質量に関係なく、同じ速度で飛ぶはずです。だから、同じ方向に、違う速度で飛ぶということは、ありえないのです。それから、飛んでくる途中で、何らかの理由で分裂したとしても、飛ぶ速度が変わるはずがなく、一緒に飛んでくるはずです。(飛んでくる途中で、またほかの天体との衝突で分裂した場合、飛ぶ方向が変わるはずです。詳しくは、「VS嵐」のデュアルカービングで観察してください。) 以上の理由で、小隕石群が来たことが、巨大な小惑星が地球に飛んでくる前触れにはなりえないのです。 以上、基本設定の部分で、2点突っ込みを入れさせてもらいました。もちろん、まだまだ、突っ込みどころはたくさんありますが、書きだしたらきりがないので、これくらいにしておきます。 このように、科学的には、めちゃくちゃなお話ですが、話の展開や、盛り上げ方、アクションの迫力、ちょっと大げさな親子愛のドラマなど、科学考証を気にしなければ、なかなか楽しめる映画です。ハラハラドキドキして、涙することも可能でしょう。 しかし、「アルマゲドン」って、聖書に出てくる終末戦争のことですよね。キリスト教関係から、抗議とかなかったんですかね。