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秩父地方の魚釣り

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2010年03月07日
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特定の言葉が耳や目に入ると、それにまつわる悪い記憶が喚起される。特定の言葉によって特定の悪い回想がはじまる。

小島よしおのトラウマは「ゲッツー」という言葉だという。その言葉を聞くと脳裏に甲子園予選の悪い記憶がよみがえる。

甲子園の予選でファーストを守っていた小島にゴロがきた。捕球後、ゲッツーをねらってセカンドに投げたが暴投。これが原因で相手に得点を許し、敗戦。甲子園への夢は断たれてしまった。

以来、小島はゲッツーという言葉が少しだけ苦手になった。

もちろん小島氏にとってはゲッツーという言葉はトラウマにはなっていない。一流お笑い芸人のネタとして使用しているにすぎない。しかし、このエピソードは小説のネタに使えると思う。

テレビやラジオ、新聞、雑誌、広告、本、人との会話など何気ないときに「ゲッツー」に出会うと人格剥離をおこして、その場にへたり込んでしまう。心が凍りついてしまう。

病状はすすみ、目に触れるもの、耳に入るものすべてに恐怖を感じるようになる。いつゲッツーの不意打ちがあるか分からないからだ。

ところでこの手の悩みは大抵どうすることもできない。専門書にあたり、酒を飲み、友人に相談し、魚釣りをし、遊蕩にふけり、カウンセリングを受ける。座禅を組み、滝にあたり、ロープで体をたたいても解決はしない。

なにしろ、そんなに簡単に解決されては物語がおもしろくないから。

野球の失策について悩み続けるなどというのは人類の経験してきた苦しみに比べれば軽い方だ。借金の取り立てで乱暴なめに会う、ジャングルで獣に追いかけられる、敵のミサイルをかわしつつ敗走する、といった場面の人にとってはゲッツーなどどうでもいい。

客観的にみればどうでもいいことが、主観的にみると重要なこととなる。みんな自分の悩みが最大というもの。

物語はどういう拍子かゲッツーのトラウマはなくなる。ゲッツーはなくなる代わりに別のもっと深刻なテーマが出てくる。というわけで、この物語は短編の連続した長編となる。

なんてね。
おしまい

※言葉のトラウマ対応の電子書籍というものがあればいいかもしれない。読む前に文中の「ゲッツー」を類語に変換してくれるというもの。ゲッツーという言葉が目に飛び込んでくるのがつらいわけだからダブルプレーとかフォースダブルプレイに自動変換してくれればよいか。

本来なら平凡な併殺打となるゴロを失策しているわけだから、トラウマの言葉としては暴投の方がピッタリくるかなあ。どうなんだろう。

電子書籍はこういう利点もアピールしていいかもしれない。著作権のからみもあるかもしれないけれど、内容を自分の都合のよいように変更できればたのしい。





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最終更新日  2010年03月07日 13時02分47秒
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