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思いがけないところで、熟睡する人を見ることがある。
築250年という旧家が県の文化財ということで一般公開されていた。訪ねていくと、受付の方が、囲炉裏端で毛布にくるまって寝ていた。枕元でポケットラジオが鳴っていた。家の中を見学するためにはその人に入場料の300円を払わなければならない。 しかし、あまりにも気持ちよく寝ているので、声をかけるのがためらわれた。毛布から出ている頭部から判断して60歳前後の男性のようだ。 旧家ではあるが、一般公開しているから「ご用の方はお押しください」なるチャイムがある。押すのは簡単だが、それでは男性を無理やり夢の国から引きずり出してしまうことになる。 もしかしたら、この文化財は24時間公開で、この日はスタッフの関係でこの方が昼夜連続勤務をしているのかもしれない。 そうではないにしても、毛布を持ち込んで思いきり床に寝ころんでいるのはそれなりの事情があると見た。 受付ができないので、旧家の庭を散策して、近所の景色や家の外観を子細に観察した。古い家なので、大屋根のひさしにはいくつものスズメバチの巣や巣の残骸が見てとれた。 旧家の屋根は栗の板で形成さている。A4サイズの用紙を縦に半分に切ったほどの板を数枚ほど骨組みの上に置く。それを人の頭ほどもある石で押さえつける。 身近な材料として、栗の木と川原の石があったからこういう構成になったのだろうか。地震があったら石が転がり落ちてくことはないのか、板の耐用年数はどれくらいか、昔はこれがスタンダードだったのだろうか。板と石の総重量はどれくらいになるのだろうか。あれこれ考えさせてくれる屋根だった。 ひとまわり散策した後に再び家に入ってみると、受付の人が毛布に包まれたまま、床に半身になっていた。やはり60代くらいか。ともかく、やっと入場の手続きをとることができた。 昼寝は気持ちいい。それがわかるだけに、こういう場合のおこし方を研究しておけばよかった。 おしまい お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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