2020/05/11(月)00:25
弱音
繰り返し脈打つ鼓動が耳朶を伝播して
蔓延る世の倣えに沈んでいく
数多の音の中にも表現できないものは幾つもあって
触れ合えた時に言葉でなく伝えられる音もある
揺らぎ塞いでしまっていた根底の声音が
震えて弱々しく泣いたように囁く時
寄り添って傾ければ
何処にも辿り着けずに零れ落ちて消えるだけ
愛憎つらつらと燻らせては
何度も着いては消える灯火の様に
点灯点滅繰り返しまたそれも脈となる
過ぎし日に枯れていく花々のように
思い出重ねてもいつか色褪せて思い出せなくなる
悲しい思いも辛い思いさえも今は今際と
描き消しても今を過ぎゆけば忘るもの
今し方隣を過ぎ去った人の面も
覚えようとせねば刻まれぬように
目を逸らせば感じることもないだろうと
自分の声には蓋をして見ぬ振りをして
立ち止まってしまった時に
喘ぎ泣いては蓋を揺らして
零れたのは音だけではなく
伝うのは温い水滴
幾重にも重なった音の伝播膨張して
空気中を犯すような熱に変わり肺が揺れる
噎ぶ程の思いの丈
内臓焦がし芯を失ってぐらりと傾けば
零れ落ちて消えるだけ