解女溺泉薬
「どんかん!」「あんたに言われたくないわよ。」乱馬とあかね、毎度のことながらケンカをしながら歩いていたところ突然雨が降り出し、乱馬は女らんまになってしまった。「何でいきなり雨なんか降るんだよ!」 だぼだぼになってしまった服から少し手をのぞかせ空に向かって怒鳴るらんま。すると突然後から声がした。「ちょっと、そこのアナタ・・・もしかして娘溺泉落ちた者あるか?」カタコトなこの喋り方からしてどうやら中国人なようだ。乱馬とあかねは驚いて後を振り返る。「ああそうだけど・・・・。」らんまがそう呟くとその男は深く頷いた。「やはりそうあるか!水かぶるごとに女なる・・・この体質イヤじゃないか?」その言葉にらんまは頭のうしろで手を組んだ状態で『けっ』とでもいいたげな表情で返事をする。「そりゃイヤだよ。おまけに変な男に追い回されるし・・・。」 変な男というのは九能のことだろう。「それならこれ買うといいね!」 そう言って男が怪しげな袋を差し出そうとしたときさっきまで黙って聞いていたあかねが不信に思ったのか男にそうたずねる。 「ていうか誰なのよ、あなたは。」「ああ、自己紹介してなかったね。 わたし、中国で漢方つくて売ってるものよ。 今丁度、解娘溺泉薬っていう 男の体にならないですむ漢方持ってるからお客さん、買わないか?」 あかねは相変らず、怪しいと思い不信な目で見ていたがらんまの方は男にならない、という単語を聞いて、すぐにでも買おうと言う気になっていた。「その漢方っていくらですか?」 身を乗り出してたずねるらんま。「ちょっとらんま、あんた買う気?」「あったりめーだろ。この体とおさらばできるんなら2000円だって安いぜ。 で、いくらなんですか?」「4000円ある。」その値段を聞いてらんまは叫ぶ。「高いって!オレ今200円しか持ってないのに・・・。」 その言葉にあかねが呆れる。「2000円でも安いんじゃなかったの?」「だってよお・・・。あかね、頼む!3800円貸してくれ!」 手を合わせて上目遣いで頼み込んだらんまだったがあかねはあっさり言う。「あたし今お金持ってないわよ。」「そ・・・そんなあ・・・。」「お客さん残念だけど諦めるね。」 スタスタ歩き始める中国人をらんまは慌てて引き止める。「待ってください!!」「諦めなさいよ」 冷たく言うあかねに対してらんまは言い返す。「俺が完璧な男に戻れる日が来るのを どれだけ待ち望んでるかお前には分からないだろーよ。」「それは分かってるわよ!でも・・・怪しいと思わないの?都合よすぎるわよ。」あかねにそう指摘され黙り込むらんま。 しばらく黙ってから再び口を開く。 「確かにそうかもしれないけど・・・・・・ でも男に戻れる可能性が少しでもあるっていうならそれに賭けてみたいんだよ。」 今度はあかねが黙り込む。いつも傍にいるから、そういうらんまのキモチは痛いほど分かる。黙って聞いていた中国人が突然言う。「わかたね。お客さんそこまで強い意思お持ちなら特別に200円で漢方売るね。」「本当ですか?」 思いがけない言葉にらんまの目は輝く。あかねは(200円で男に戻れるなんてそんないい話あるわけないじゃない)と思ったが口にしなかった。 「ただし1つだけ条件があるね。 この漢方は男に戻れる可能性が他のは100%なのに対して 50%しかないね。だから男に戻れなくても文句言わないて約束するなら売るね」(やっぱりね)そう思ったあかねだっだがらんまの表情は明るかった。「1/2ってことですね!分かりました。ありがとうございます。」 そう言って200円と引き換えに漢方を受け取る。 「シェイシェイ」中国人はそう言って手を振るとどこかへ歩いていってしまった。 「よし帰るか。」気がつくと雨はもうあがっていた。 「男に戻れる~男に戻る~♪」そう浮かれているらんまにあかねが『まあ1/2の確率だけどね』などといえるはずが無い。 あかねはらんまが嬉しそうに笑ってるのを見てつられて笑顔になる。 「らんま、よかったね」「おう!」 それがまさか、あんなことになるなんて誰が想像できただろうか。