2011/12/04(日)13:01
男は明日履くためだけの靴を磨く
夕暮れの街並みは
少しずつ暗くなってゆく
ひとりの男が
今日も坂道を降りてくる
アパートのドアを開け
手探りで灯りをつけた時
今日一日が
ふと目の前を通り過ぎる
ひとり暮らしは
気楽と言えばいい
過去の事は思い出さず
これからの事はわからない
男は明日履くためだけの靴を磨く
その日暮らししていても
ほらこんなにしあわせだと
大きな声で
笑える日もいつかはくる
時の流れに身をまかすのもいいさ
優しい女が
どこかにいたような気がする
そんな気持ちに
たとえこたえられなくても
男なら恋心を
何気なくポケットに入れて
そのあとでそっと
どこかで取り出してみたとき
熱い想い出
静かに消せばいい
男なら夢のひとつ
覆すこともできるし
夢から覚めたら
また新しい夢をみればいい
窓辺で枯れてゆく
一輪挿しの花でさえ
この部屋の中で
精一杯咲いていた
そんな小さな生き方を見つけたい
男は明日履くためだけの靴を磨く