我食べる、故に我あり ～ 中国の故事 （嘘）

あぁ、今日は頭が重い。
昨晩飲み過ぎたということはまるでない。
風邪も思い当たらない。
が、重石を載せられたように頭が重い。

ついでに、というのも変だが、耳の奥が痒い。
綿棒で突付いてみたけど、痒みの震源地はもっと奥だ。
耳の奥で根が伸びて、脳の皺の奥深く隅々まで広く蔓延っているような気がする。
その脳を覆った根が神経を刺激する。
できることなら、根元を耳掻きで引っ掛けて、慎重に慎重に引きずり出してしまいたい。
脳の皺に食い込んだ細い根がペリペリとはがれ、ズルズルと耳の奥から出てくる。
魔法使いの箒のような根が耳の内壁をサワサワと撫でながら耳の奥から現れる。
そうなったらどんなに気持ちが良いだろう。

そんな訳の分からない妄想を抱きながら出社しているなんて、周りの誰一人気付いちゃいないだろう。
当たり前だけど。

昼食は、東銀座の越州という店に初めて入ってみた。
越州と名乗るからには、夜は日本酒の店だろう。
酒どころ新潟である。米が美味く水が美味い。ということは料理も美味い筈だ。

日替りは、桜海老のかき揚とむぎとろご飯。
天ぷらは昨日食べたからパス。
後は、煮物定食、焼魚定食、そばと鉄火丼。
煮物にしてみた。

米ナスと鶏の煮物、赤身と帆立の刺身、ひじき、漬物、アサリの味噌汁、ご飯という内容。

まずは、味噌汁を一口啜った。
むむむ、むっ。
一応アサリの風味はするが、塩の味ばかりがする。
味噌の香りはどこにいったんだ？ダシは？
塩辛いのじゃないけど、とにかく塩の味だ。
温かい食塩水を啜ったようである。

気を取り直して、刺身。
これはこの値段を考えればまずまず。
ご飯を食べる。
米どころ新潟を誇れるほどじゃないが、まあこんなものだろう。

そして、煮物。
あたたっ。
これも塩の味だ。
醤油もダシも効いちゃいない。

なんだろう？
味噌汁だけならたまたま失敗したのかとも思う（料理屋なのだからそれだって許されないのだけど）。
が、煮物もとなるとこれは確信犯だ。
これが新潟料理なのだろうか？

新潟の料理といえばへぎそばだ。あれは美味しい。
それから、若い頃に何度か上司に連れて行かれた池袋西口の新潟料理の店で食べたのっぺい汁も美味しかった。
出張のときにほくほく線の中で食べた駅弁「ほくほく弁当」も駅弁としては悪くなかった。

新潟料理ってこんなんじゃないと思うのだが。
やっぱり今日のこの店が問題だ。
でも、結構流行ってるんだな、これが。
体調不良の私の味覚の問題だろうか？

いずれにしても、この店にはもう来ないだろう。

ところで、越州って新潟で間違いないのだろうか？
新潟の酒が並んでいたのでそう思い込んだが、越後は新潟だけど、越中は富山、越前なら福井辺り。
さて？


体調が悪いので早く帰るつもりが、今日も案外と残業してしまった。

そして、帰宅途中に思い出してしまった。
今日は結婚記念日だ。
でも、まあいいや。どうせ妻も忘れているに決まっているのだから。

帰宅して妻に今日は何の日か知っているか尋ねたら、しばらく考えて「あっそうか。結婚記念日ね。それならもう少し良い刺身にすればよかった」
そういいながら、冷蔵庫から３切れ残った中トロを出してきた。
一応は本マグロだそうだ。
他には、がんもどきと野菜の煮物、昨日の残りの豚汁、納豆、ご飯、ビール。

まだ頭痛が抜けないから、こんな夕食で十分だ。
と言いながら、食後にドンクのチョコ・ミニクロワッサンを２個。


今夜は早く寝ることにする。


満腹、満腹…じゃないな、今日は。