エピソード 6 牡蠣フライの帰還
あぁ、今日も食った飲んだ。今週は鴨南蛮ウィークだった筈だ。一昨日は家で鴨南蛮を食べようと思ったのに鴨肉が手に入らなかった。昨日は、そば屋に入ったが、その店には鴨南蛮がなかった。そして、今日。昼休みになるとそそくさと会社を抜け出し、目星を付けてあったそば屋へと向かった。正直なところ、迷いがないでもなかった。鴨南蛮は美味しいのだが、コストパフォーマンスに劣る気がする。ビジネスマンのランチは、ある程度腹が膨れてくれないと午後の仕事に差し支えるのだが、鴨南蛮でそれを期待するのは難しい。となると、たまに食べるのは良いが、毎日は続きそうにない。そんなことを考えていた罰が当たったのか、目指す店の前に来て見ると「本日定休日」。他にもそば屋はいくらでもあるのだが、「本日定休日」の5文字を目にした途端、吹っ切れたように足が勝手に動き始めた。辿り着いた先は、プランタンの近く、並木通りから少し入った袋小路に立つ三州屋銀座店。この店に入るのは初めてである。初めてだが噂は耳にしている。居酒屋である。居酒屋でランチ営業をしている店は珍しくはない。しかしこの店、ランチ営業ではないのだ。定食も出すが、昼の11時半からきちんと居酒屋営業をしているのである。店内には白木のテーブルとカウンターが並び、広々とは言わないが、居酒屋にしては広い方だろう。隅の方では、昼酒を楽しんでいる一団。ビールを一杯という半端なものではない。焼酎のボトルをどんと置き、次々と肴を追加している。スーツにネクタイのごく普通の勤め人風の5,6人。店内に入ってしまえば昼だということを忘れてしまいそう。注文は牡蠣フライ定食。当然である。注文してあまり待つこともなく、料理が出てきた。作り置きかというとそんなことはない。熱々の揚げたてだ。タルタルソースはない。レモンと普通のソースで食べる。それもまた良い。牡蠣フライ自体は美味しいが特筆するほどのこともない。そして、ここの特徴はサラダだろうか。千切りキャベツも付いていながら、その横には山盛りのサラダ。トマト、キュウリ、レタス、ジャガイモ、黄桃?がマヨネーズで和えてある。牡蠣フライもさることながら、近くの男が食べていたアジタタキ定食もそそられた。アジは見た目も新鮮で美味しそうだし、汁が牡蠣フライは味噌汁なのに対し、アジタタキはトリ豆腐という、鶏肉と豆腐の入ったすまし汁(だと思う)がドンブリに入って出てくる。アジだけでなく、カツオタタキや煮魚なども選べるようだ。今度はあれにしてみよう。それにしても、だ。牡蠣フライ…やめられない。満腹、満腹