空想世界と少しの現実

2008/08/12(火)15:12

夢への第一歩

ダンシング・オン・ザ・ウォーター(172)

Sarraute(サロート)さんがパリに帰って二週間後、僕はJolivet(ジョリウ゛ェ)さんと空港のロビーにいた。自分の夢に向かっての第一歩が、此処から始まるんだ!多くの人々が行き来するこの空港には、きっと様々な想いが交差しているんだろう!ロビーに設置された、グレーのチェアーに腰掛けながら、行き交う人を見つめて想う。 姉さんが仕事を抜け出して、僕の見送りに来てくれると言う。Jolivetさんと一緒とはいえ、やはり慣れ親しんだ国から、誰からの見送りもなく、出発するのは少し寂しかった。素直に彼女の申し出を受け、待ち合わせのロビーで到着を待っているところだった。 「浄瑠璃!」背中から聞こえる、聞き覚えのある優しい声に振り返ると、そこには待ち人の姿があった。「姉さん!」チェアーから立ち上がって彼女と向き合う!「久しぶり!元気そうね!」「姉さんこそ!ついに出発の日が来ちゃったよ!今、凄くドキドキしてるんだ!」自然に笑顔が浮かぶ僕に、姉は優しく微笑み掛けてくれる。 「夢への実現の、第一歩に立ち合えるなんて光栄よ!貴方ならきっと夢を叶えられるわ!浄瑠璃!」力強く励ましてくれる言葉に、心がじんわりと温かくなっていくよう!「ありがとう!とことんまで頑張ってみるよ!あ、そうそう!姉さん、この方はコンシェルジュのJolivetさん。今回渡仏にあたって、たくさんお世話になった方なんだよ!」 彼が立ち上がるタイミングを見計らって、傍らのJolivetさんを姉に紹介すると、握手をしながら姉は日本語で、Jolivetさんはフランス語で挨拶をする。「美しいお姉さんですね!浄瑠璃、まだ時間はあります。積もる話もあるでしょう?2人で、お茶でも飲んできたらいかがですか!」 「でも・・・Jolivetさんは?」一人になってしまうと言おうとする、僕の言葉を遮る彼!「浄瑠璃!プライベートなのですから、あまり気を使い過ぎるものではありません。私は、一人でゆっくり過ごす時間も大切にしたいのです。それに目上から勧められたなら、素直に応じたほうがいいですよ!そうですね、一時間後に、出発ゲート前でおち合いましょうか!」 胸ポケットに忍ばせていた、懐中時計を取り出して時間を確認した後、彼は静かに話す。「解りました。じゃあ、また後ほど」言葉に頷き、その場から足早に離れるJolivetさん。自身の主張をはっきりと言う彼らしい。日本人みたいな曖昧さがないのは、やはり彼がフランス人だからだろうか?背中を見つめて思う。 「フランス語が話せるなんて凄いわね!浄瑠璃!」「まだ、簡単な日常会話くらいしか喋れないんだけどね!」姉を伴ってフロアを歩き始める。「スタバがあるね、あそこでどう?」提案にこくりと頷いた。 空港の滑走路の一部が見える窓際席に、姉と2人で肩を並べて腰掛ける。どうやら好みが似ているらしく、選んだのは、ミルクがたっぷり入った冷たいカフェ・オ・レ。どちらからともなく話し始めて、先日Sarrauteさんとデート中、白雅に逢った話になると、彼女はさも可笑しそうに笑う! 「その時の白雅の顔が浮かぶようだわ!仏長面で、貴方を見つめていたんでしょうね!結婚式でSarrauteさんに会った時、露骨に嫌な顔していたのよ!(>д

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