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カテゴリ:言葉
前回は「漢字」に関わる謎解きをいくつかご紹介しました。
これからは、少し「かな」で遊ぶ「謎かけ」を見てみましょう。そこで、古典の世界に目を向けて、日本の「古き面白きもの」を楽しみましょう。 前回「中世のなぞなぞ」で取り上げた室町時代『後奈良天皇御撰何曽(ごならいんごせんのなそ)』『謎立て』、及び江戸時代前期『寒川入道筆記』から出題です。 まずは練習。次の「何曽(なそ)」を説明してみて下さい。 十里の道を今朝帰る 濁り酒 「十里の道を今朝帰る」とかけて「濁り酒」と解く、その心は?という謎かけです。 (答え) 「十里」は「二つの五里」(にごり)+「今朝」が帰って(逆になる)「さけ」=「にごりさけ」。濁音なくてもOKです。 では、同じ要領で「初級問題」を三題。 (い)酒の肴 袈裟(けさ) (ろ)もろこしの果てはあらじと立ち返る 衣 (は)泉に水なうしてりうかえる 白うり (答え) (い)「さけ」の「肴(さかな)」=「逆名」に気づけば簡単。返って「けさ」。 (ろ)「もろこし」の「果て=最後の字」がないので「もろこ」。返って「ころも」。 (は)「泉」から「水」を無くして(取って)「白」、「龍(りう)」が返って「うり」。 合わせて「白うり」。 「かな」文字の一部を取ったり、順番を変えたりと、文字で遊んでいます。 特に(は)は泉に龍が立ち昇るという伝説を思わせる内容となっています。 「かえる」は文字をひっくり返す「基本」パターンです。中世のなぞなぞにはよく使われます。 次も「初級問題」三題です。 一語で謎をかけて一語で答える瞬間芸風の謎かけを選んでみました。 (に)隠せ 白砂 (ほ)破れ蚊帳(かちやう) 蛙 (へ)虎 兎 (答え) (に)「隠せ」とは「知らすな」(白砂)です。 (ほ)「破れた蚊帳」には「蚊が入る」、つまり「蚊入る(蛙)」です。 (へ)十二支で「虎」の次は「卯(う)」つまり「虎」は「卯」の前(さき)です。 「かな」文字の「しゃれ」つまり掛詞の伝統が生きています。「ことば遊び」の基本と言えるでしょう。 次は「中級問題」として、「かな」を分解した謎かけ三題です。 (と)上消えしたる雪ぞ絶えせぬ 狐 (ち)児(ちご)の髪なきは法師にはおとりゐなかにおけ 碁石 (り)嵐ののち紅葉(もみぢ)道を埋(うづ)む 霜 (答え) (と)「雪」の上が消えて「き」、「絶えせぬ」=「常(つね)」で「きつね」。 (ち)「ちご」の髪(上)なきで「ご」、「ほうし」の「お」つまり「尾」をとる(採るの意味)と「し」、合わせて「ごし」。「い」を中に置く(間に入れる)と「ごいし」。 (り)「あらし」の後(最後)は「し」、「もみぢ」の「みち」を「埋める=なくす」と「も」が残る。合わせて「しも」となる。 ずいぶんと複雑になってきました。「かな」を分解して消したり、残したり、挿入したりとあれこれ工夫しています。「かな」での文字遊びを楽しんでいます。 では最後に難しい「上級」問題を二題。少しひねっています。場合によっては「ある法則」を使います。 (ぬ)狐鳴かで帰る 月 (る)命は笛の間 猫 (を)海中の蛙 蔦(つた) (答え) (ぬ)「狐鳴かで」は「きつね」の「ね=音」がないので「きつ」。返って「つき」。 (る)「いのち」は十二支「亥の後(のち)」で「子(ね)」。「ふえ」の間はいろは歌で「~けふこえて」から「こ」の字。合わせて「ねこ」。 (を)「海中」は「う(卯)」と「み(巳)」の中(間)で、十二支の「龍(たつ)」。蛙は「返る」で「たつ」が返って「つた」」。 特に(る)と(を)は難問です。ただし、十二支を思い浮かべればすぐに解けます。中世の日本人にとって、「かな」の配列は身近なものだったのでしょう。「言葉」と「かな」文字へのこだわり、愛着が感じられます。 いかがですか。今回は中近世の「謎かけ」から「かな」文字を分解したり、組み合わせたりと、あの手この手で、文字を関連づけて謎を作ろうとしています。 今回も、日本人の「言葉」への親しみとこだわりの強さを感じます。 まだまだ、日本の「ことば遊び」は豊富に蓄積されていますので、関連本などご参照下さると、さらに面白い謎かけに出会えるかも知れません。 とてもわかりやすくまとめられている本をご紹介しましょう。 小林祥次郎著『日本のことば遊び』(勉誠出版) 興味を持たれた方は、のぞいてみて下さい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2012年10月18日 21時13分17秒
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