2010/01/23(土)03:30
支配者の為の狂死曲。
『麻由と麻奈の輸血箱』感想 第三回
平成吸血鬼合戦(「支配者の為の狂死曲」END)
世紀の悪漢・七瀬しずる。
エンディングを見て、心地よい嗜虐心に満たされた。
序盤から中盤の展開は、しずるがヒロイン達の人格破壊を繰り返しながら次々と下僕にしていく事に終始しており、退屈かつ不快。
しかし、それら全ては布石であり、最終局面の婚礼の儀における仄暗いカタルシスに繋がっている。
この結末は、しずるが自身の過去を踏み付けにしながらも、最後には全てを手に入れてふんぞり返って笑っていることに意味がある。
本編では、様々な物を吸血鬼に奪われた過去を引き摺り、一種悲壮感すら漂わせていたしずるが、ここに来て遂に吸血鬼として全てを奪い返したということ。
これは本来なら最高の痛快事であるが、同時に本編の優しいしずるを知る俺は歯痒さも感じる。
何れにせよ、しずるが自分で自分の過去を抹殺してしまうことほど破滅的な事は他には無く、これこそ『MinDeaD BlooD』全篇通して最高のバッドエンドだと断言出来る。
なお、俺は大悪党に成り上がったしずるに対して畏敬は抱けど、人間的な魅力は一切感じることが出来ない。
それは同時に、しずるの木偶に成り下がったヒロイン達についても同じ。
だから、シナリオ中でかなりプッシュされてはいたけど、正直「この悠香」のことはかなりどうでもいい。
終盤で独白する通り、彼女は既にしずるの支配下にあり、自由意志の殆どを奪われて、以前の人格を半ば抹消された状態にあると見える。
自分で錯覚だと気付きつつも、しずるの腕の中を居場所として受け入れたいのなら好きにしたらいいんじゃないの…。
今更になって木偶一体が何を思おうが、しずるの一人勝ちには変わらないのだから。