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小説盆栽物語 14話 盆栽無事京の都に、その夜、比叡山燃える
空海を博多港で下ろした遣唐船第一船と第二船は瀬戸内海を難波港へと航行していたが、波風は安全とはいうものの岩礁がアチコチにあるために夜明けから日没までの航行しかできなかった。それに潮待ち風待ちで船内では最澄と太宰府での任期が終わって都に帰る高級貴族との顔合わせの宴会が連日開催されていた。 思えば奈良の平城京時代ではやはり奈良仏教の幹部らが連日連夜高級貴族との宴会で賄賂やコネ、人脈を活かして政治を奈良仏教の都合のいいように動かしで来たからこそ奈良仏教は莫大な権力と富を貯め込んでいたが、稲荷神社の宮司の父親はこの奈良仏教と権力の癒着を指摘して奈良仏教の刺客に殺されている。このことがあって同じ平城京の役人だった息子の伊呂具も危険を感じて一族を連れて藤森神社に逃げて来ていた。 この藤森神社の北の端にある伊奈利山の小さな「藤社」という祠を藤森神社から借りて新興宗教の稲荷神社を立ち上げていた。最澄も奈良仏教の末寺に入門したが、伊呂具の父親と同じ理由で奈良仏教を批判して比叡山で新興宗教の天台宗を立ち上げていた。当時の平城京の天皇は桓武天皇で桓武天皇も奈良仏教の暴走(武器を持っての僧兵を組織して貴族を威嚇)をなんとかしたいと思い稲荷神社の伊呂具にこの問題の解決方法を加持祈祷で占ってほしいと密書を送っていた。 その伊呂具の加持祈祷の結果は奈良を捨てて京に都を遷都することだった。つまり、奈良仏教と奈良仏教系列高級貴族と分離することで奈良仏教の力を弱める大作戦だった。そして奈良仏教が僧兵を使って奈良から貴族に圧力をかけるが、この圧力に対抗するために最澄は比叡山にも同じ兵力の僧兵を組織していた。最澄はこんなことを思い出しながら、賄賂もコネも人脈も肯定はしないが、民衆を救い幸せにするためには高級貴族に近付いて貴族を洗脳することも大事だと連日連夜の船の中での宴会を正当化していた。 盆景和尚が日本の港に着いた時の第一印象は人が少ないことと京の都に通じる街道にすれば道幅も狭く荷車の二台がすれ違いができない場所もあったのには驚いていた、それに険しい山はどこを探しても見つからずなだらかな丘があるだけだった。それに都から流れて来るという淀川も盆景和尚の唐国の尺度からすると小川であった。その淀川沿いの街道には松の木が植えられて日本人は松が好きなら松の盆栽が好まれるかと少し安心していた。 都に帰る隊列の先頭には最澄が30名の役人に囲まれて歩いているが、盆景が最澄の側で話しかけても役人は無視してくれている。やがて隊列は淀川の八幡から橋を渡り西国街道に入るが、この街道の西側の丘陵地には13年前には長岡京があったと最澄は説明している。その長岡京跡には建物はなく田畑が西山の麓まで続き竹藪と竹藪の間に農家があり、その前の畑では農民が農作業をしていた。 西国街道をさらに北へ歩くと桂川を渡る久世橋があるが、最澄は橋の上で立ち止まり西山、北山、東山と指を指して盆景に説明をしている。最澄は北東の一際高い山が比叡山で私の天台宗の本山がある、寺とお堂は根本中堂を囲むように250(その後500ヶ寺になる)ほどあると説明をしている。盆景は、 「ここからはまだ宮殿は見えませんが、あの高い山なら宮殿や皇帝を見下げることになりますが、唐国では到底考えられないことです」 「いやいや、日本でもそれが大問題になったが、私はあの比叡山は京の都にあるのではなく隣の近江の国にあるのでその指摘は当たらないと反論してそれを認めさせた」 「そうでしたか…それなら天台宗本山の山門は近江の国にあるのですね」 「そう、坂本に門前町はあるが、私は今夜から京側の朝廷から登山を禁止されている雲母坂登山口から山に帰ります。盆景さんも今夜は比叡山を見ながら般若湯を飲んでゆっくり旅の疲れを癒やして下さい」 一行は西国街道の京側の入口の九条大路に突き当たるが、そこは官営西寺の西の端で南大門の北側には金堂、講堂が見える。これは大きさ屋根構えまで盆景和尚の本山の西明寺や青龍寺とまったく同じで日本国の遣唐使が今まで18回も長安を訪れてはいるが、これらの巨大な建造物を模写して技術を日本に持ち帰ったと思うと日本の学者や僧侶はすごいと感心していると最澄は、 「いやいや、それだけでなく日本は唐国から漢字という文字に仏教、それに通貨の銭まで持ち帰って日本の通貨としている。京の都の碁盤の目と言われている町筋も洛陽の町筋を僧侶が書き写して持ち帰ったものだ、それに盆景さんが日本で広めようとしている盆栽や茶の栽培、それに水墨画もいずれ日本から古くからある文化になる」 官営西寺の東には羅城門を挟んで東寺がある。この東寺の講堂に最澄と空海が唐国から持ち帰った立体大曼荼羅や仏像、経典から仏具までを朝廷が没収して一旦保管するための時間待ちに最澄は東寺南大門の前にある空海ゆかりの九常寺に立ち寄り住職の戒本にこの寺は今日から真言宗の128番目の「真言宗九常寺」になる。その寺の住職は盆景和尚とするが、前の住職の戒本は東寺塔頭の筆頭塔頭寺院の住職及び東寺塔頭建造総責任者とするの栄転を命じていた。そして最澄は堂々と凱旋門(羅城門)をくぐり朱雀大路から比叡山に帰っていた。 盆景和尚はこれらの引き継ぎをして最初の仕事は荷車に積まれた47鉢の盆栽を降ろすことだった。どの盆栽も三ヶ月振りの土の上だがそれぞれ元気で樹齢100年の白と紅の梅はもう花を咲かして良い匂いを唐国から京の都へのお土産としていた。これらが一段落すると前住職の戒本が般若湯(僧侶の薬酒)と「山薬」という鍋料理を持ってきた。その戒本が「山薬」は山にある僧侶だけの特効薬でこれを俗世間では「牡丹鍋」というと笑かしてくれた。盆景和尚も最澄さんと空海さんと知り合ってまだ2年ほどだったがその2年間で般若湯を飲まなかった日は一日もなかったと今度は盆景和尚が戒本を笑かしていた。 この二人が般若湯を飲んでいるのは住職の宿坊で庭には小さな池がありこの池に反射する月明かり、星明かりだけで貴重な行灯の油も要らない。戒本は北東の上空を指差して昼間ならここから比叡山がくっきり見えるが、というなり…腰を抜かすような声で… 「お山が…比叡山が燃えている~」 最澄が比叡山の京側の登山口の雲母坂に到着すると同時に大歓声が沸き起ったと同時に比叡山の頂上から麓の参道口まで松明を持った1000名の僧侶が一斉に松明に火を着けて最澄の足元を照らした。この松明の火を見た貴族らは比叡山が燃えていると騒ぎだしたが、それが比叡山に最澄が帰って来た合図だということがわかったのは貴族だけでなく、それが洛中から発信されて日本中に広がるのは3日もかからなかった。空海もこの「比叡山燃える」を太宰府で3日後に知ったが、予定通りだと大笑いしていた。 ※この小説の前半の部分と後半の一部に「小説西寺物語 19話」と重複している場面があります。これは小説の中で最澄が京の都に帰って来た時期と盆景和尚が京の都に盆栽を持ち込んだ時期が重なった(掲載時期)ために同じ表現になったものです。今後は重複しないように物語を進めていきます。伊奈利 ★★★★★新連載小説をはじめました。 小説盆栽物語 1話 空海唐から盆栽50鉢持ち帰りへ 小説盆栽物語 2話 宗景造園業に弟子入りで盆景和尚となる 小説盆栽物語 3話 盆景(盆栽)のルーツ、雅山少年が発見 小説盆栽物語 4話 宗景、玉林の禁断の恋から若者たちが盆景を爆買い 小説盆栽物語 5話 玉林、宗景皇帝に祝福され結婚…豆盆栽 小説盆栽物語 6話 日本茶のルーツは武夷岩茶の盆景になる 小説盆栽物語 7 話 椿の盆景が明懸尼寺を再興させた 小説盆栽物語 8話 玉林(ユーリン)に赤ちゃんが! 桓武天皇崩御 小説盆栽物語 9話 空海屁理屈禅問答で盆栽は戦争をなくす 小説盆栽物語 10話 玉林、盆景和尚長安での最後の別れの夜 小説盆栽物語 11話 最澄、空海官位剥奪の上5年間謹慎処分 小説盆栽物語 12話 遣唐船嵐でニ隻難破、空海長崎で説法会 小説盆栽物語 13話 空海真言宗を開山、1月7日は「盆栽の日」に制定 ★★★ 小説西寺物語 1話 守敏と空海の因縁の争い・西寺跡発掘調査・女装小説家 オカマのイナコ 小説西寺物語 2話 九条葱が西寺を救った 小説西寺物語 3話 守敏、芹と葱で大僧正に! 小説西寺物語 4話 稲荷神社のお告げで長岡京遷都決定 小説西寺物語 5話 寺と村落ぐるみ乗っ取り大作戦 小説西寺物語 6話 東大寺権操、守敏長岡京へ抗議の旅 小説西寺物語 7話 東大寺僧兵300名稲荷神社と戦へ 小説西寺物語 8話 農民稲荷神社炎上を救う 小説西寺物語 9話 守敏僧都、都を代表する名僧に! 小説西寺物語 10話 最澄、空海唐へ、守敏奈良仏教から破門 小説西寺物語 11話 僧侶不足で奈良から僧侶引抜き大作戦 小説西寺物語 12話 神野親王武家源氏を旗上げ 小説西寺物語 13話 巨大権力(奈良仏教)には経済封鎖を 小説西寺物語 14話 皇太子の不倫…人妻・薬子の変 小説西寺物語 15話 平安時代の美魔女薬子の野望 小説西寺物語 16話 平安時代のスーパースター光源氏誕生 小説西寺物語 17話 薬子の限りない野望…その1 小説西寺物語 18話 807年空海真言宗を立ち上げる 小説西寺物語 19話 最澄罪人ながら凱旋門から入城、比叡山へ おかげさまで、この「伏見稲荷大社の物語」が大ヒット中で連日100ほどのアクセスで読まれています。さらに100話まで書く予定です。 無料の電子書籍…お笑い歴史コラム…「伏見稲荷大社の物語」~85話まで書けています。目次機能で好きなタイトルを探してゆっくりお読みください。 このコラムが少しでもおもしろかったら↓↓↓の画像をワンクリックしてください。ブログランキングに参加しています。現在5~7位どす。。。あなたの愛のワンタップが私に生きる勇気を与えてくれます。1位まではあと少し…よろしくおねがいいたします。 小説家ランキング ★★★…完全無料の大人気の電子書籍…ダウンロードしてゆっくり完読してください。 http://p.booklog.jp/book/108339/read ★…長編小説「トラック3姉妹・ダンプ姉ちゃん理恵」…31話・運輸・建設の職場には賃金の男女差別はなく高賃金でもう男なんどに頼らなくても子育てできる運輸業界、建設業界を確立した理恵社長の物語。女性に大人気の小説になっています。 ★…「働く女性たち 駆け込み寺居酒屋ポン吉」 1話2分で読める、51話まで書けている、少しHだが女性に大人気。目次機能がありますから好きなタイトルを探して読んでください。 ★…中編小説「天使の恋~美幸…明美…真弓…梨香…美雪…早苗…香奈~7名の恋の物語」…すべて京都のタクシードライバーが主役になっている少しHな若い女性のドラマ、女性に大人気で静かなヒット作になっている。二つの書籍から ★…天使の恋~美雪、早苗、香奈…3人の恋の物語も大人気 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2020年03月06日 09時42分29秒
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