算数テストでの九九表の使用 ~『学習指導の「足並みバイアス」を乗り越える』その3
以下の本の読書メモを、かなり部分的な記述を拾いながら、何回かに分けて書いてマス。今回が、第3回。『学習指導の「足並みバイアス」を乗り越える』(渡辺道治・フォレスタネット、学事出版、2021、1980円)第1回→ADHDの子どもにとって動くことは必要!第2回→作文の「書き出し」をプロから学ぶ図書館の活用僕のブログ記事では「足並みバイアス」に関わる中心的な論をあえて避けて周縁部にあたるところだけを紹介している気がしますが、そういった細かなことの積み重ねが、「足並みバイアス」を乗り越えることになるのだと思っています。とにかく良書であることは間違いないので、ぜひ買って読んでください。今回は、九九を覚えていない子に、九九表を見ながらわり算の学習をさせてもいいじゃない、といったお話。これ、実は「テストの時にも使わせていいのか」という議論が、よく起こります。「評価」は公平でなければならないという、呪縛です。通常学級の学習をインクルーシブなものにしていくには、この議論は、避けては通れません。みんな同じテストを、誰も頼らず、何も使わず、自力でやらないといけないという「思い込み」や「足並みバイアス」が、特に知的障害や学習障害のお子さんが通常学級で共にテストを受けることを妨げています。大事なことは何なのか、考えたいです。本書では以下のように書かれています。■算数の学習を変える 「算数の授業改善」ステップ3 お助け教材はどんどん使わせよう・私は、4年生以上であれば、以下の九九カードと割り算表を表裏印刷にしてラミネート加工し、全員に配布します。そして、いつでも使ってよいこととします。テストの最中もです。なぜなら、小数の割り算のテストは、かけ算九九の習得状況を図るものではないからです。(p96より)※同ページには九九表と割り算表の画像が紹介されていますが、著作権の関係でここには載せていません。僕は長年通級担当をしていますので、かけ算九九が覚えられなくて困っているお子さんは、とてもたくさん担当してきました。そういうお子さんには九九表を渡して、学級担任の先生にも「普段の学習から使わせてあげて」とお話をしています。そうすると、「〇〇さん以外にも、これが必要な子がほかにもいます」と言われることも多いです。なので、多めに作って、「いる子には、使わせてあげて」と、複数枚を担任に預けることも多いです。そんなときの僕は、九九表製造工場になって、せっせと九九表をつくっては担任に配ってまわるのです。ただ、普段の学習で使う分には、担任も快く了承していただけるのですが、テストでは使わせてあげられない、と言われることも、けっこうあります。#テストで普通に使わせてあげる担任も、います。#同じことが、電卓の使用についても、言えます。本書の実践ではテストでも使ってよいことにしていることが明確に書いてあるので、「テストでは使っちゃダメでしょ!」と言われる担任と話をする際に、この本の記述をちょっと読んでもらって、「こういう例もあるようですよ」とお話してみるのも、いいかもしれません。#あくまでも、例です。#これはいわゆる「合理的配慮」にあたるもので、合意形成のうえでおこなわれるべきものだと思っています。#「あなたは間違っている」と糾弾するものではありません。ちなみに僕が作る九九表は、上のリンク先のようなものではなく、イラストなしで数字が色分けされているシンプルなものと、段ごとに別々のカードになっているものをよく作ります。子どもによっては、マス計算のかたちで答えが並んでいるものが一番よかったりもします。↑これは、今さっきエクセルで作ってみたものです。子どもによってどんな形式の九九表がその子に合っているのかというのは違いますので、そのへんも含めて、子どもに合ったものを使わせてあげればいいんじゃないかと思います。↓世の中には、20までの九九表もあります。#もはや九九表ではないかけ算表【1-10のだん】【B3+A4 2枚セット】▼『算数の授業で教えてはいけないこと,教えなくてはいけないこと』5~算数のやり方は一つじゃない!(2010/04/30の日記)