昼下がりの迷宮~

2011/03/15(火)23:49

『英国王のスピーチ』

映画・ドラマの話(63)

1936年の英国。 国王ジョージ5世の後継として長男のエドワード8世が即位するが、離婚歴のある米国女性と結婚するために1年もしないうちに王座を捨ててしまう。 ジョージ6世として王位に就くことになった弟のヨーク公は内気な性格に加え幼い頃から吃音症に悩み、公務でのスピーチは常に苦痛の種だった。そんな夫を優しく励ます妻のエリザベスは、オーストラリア人のスピーチ矯正専門家ローグを見つけ出すのだった。 (goo映画より) 公式サイトはこちら アカデミー賞をとったから、見に行ったんじゃないよ。 コリン・ファースが好きだから、ずーっと前から、公開を楽しみにしていたんだよ。 アカデミー賞は嬉しいけどね! 幼い頃から吃音に悩んでいた王子・ヨーク公は、ジョージ5世の次男。 王に変わって万国博覧会閉会式のスピーチをすることになるのですが、緊張も追い打ちをかけて、失敗してしまいます。 国民も落胆の表情です。 数々の治療も成果なく失意のヨーク公。 彼を励ましながらスピーチ矯正の専門家・ライオネルのところへ連れて行ったのは、妻のエリザベスです。 この奥さんが、優しく、ユーモアがありとてもキュート! ヨーク公がふたりの王女のある家庭をとても愛していたのもわかります。 ヨーク公は、王のもと厳しく育てられました。左利きを無理に矯正し、好きなものを好きとも言えない生活。 そのような生い立ちから吃音に至ったのではないかということは、見ている現代の我々には容易に想像できるのですが、当人にとってはそう単純な問題ではないのでした。 長年の暮らしや孤独なその立場が、彼の心に頑丈な鎧を着せているのです。 ライオネルとの2人3脚の治療の過程でも、次のステップに進もうとするたび、拒絶の言葉を口にして交わりを絶とうとする繰り返しです。 それを支えるのがエリザベスです。 王の死後、兄も王位を降り、ジョージ6世として即位することになってスピーチの必要性に迫られるヨーク公。 やがて、第2次世界大戦の開戦を迎え、国民に、いよいよ、声を届けなければならなくなります。 その時に向かって吃音を克服してゆく、というのがストーリーの主題なのですが、治療の過程というよりも、これはジョージ6世とライオネルの、心で結ばれた<友情>の物語です。 そして、2人それぞれを支える家族の、愛情の物語でもあります。 見目麗しいイケメンスターが揃っているのでもなく、サスペンスやアクションも一切ありません。 ただ穏やかで温かな、そんな映画です。 当時のイギリスの人々が、王家をどのような気持ちで見ていたのかもなんとなく伝わってきました。 崇拝の対象というのではなく、アイドルでもない。国民の心をつなぐ象徴、というような言葉しか見つからないけれど… スピーチのシーンでは、思わず手を握り締め、無事な進行を祈りながら、その言葉に励まされ奮い立つ人々の気持ちを共感して、スピーチ終了と共に泣き笑いになってしまいました。 暗い時代の入り口ながら、温かな光の満ちてくるのが感じられるような、素敵な映画でした。 鑑賞前、午前中に聞いていたラジオで、クリス智子さんが 「私は壁紙も気になって!室内もほんとにステキだったんですよ」 と言っていたので、インテリアも注目しましたが、たしかに仰るとおり! どの年代の、どちらの性別の方が見ても、幸せを感じる映画ではないでしょうか。 英国王のスピーチ / オリジナル・サウンドトラック「英国王のスピーチ」 輸入盤 【CD】  

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