偽りの渡航者
近々、パパがアメリカに出張することになり、手元のお金の両替を頼まれました。ショッピングモールなどには、宝くじ売り場のような形の外貨両替ブースがあって、利用したこともありますが、今回は他の用事のついでに銀行で済ませることに。番号札を引いて待っていると、窓口に呼ばれました。預金や振込の時のようなスタンドカウンターではなくて、一つずつ区切られた、椅子のあるカウンターであった。これしきの額の両替に、大げさなw500ドル、種類を取り混ぜて欲しいと伝えると、「米ドルでよろしいですね?ご旅行ですか?」えっ。口頭の調査か?不法取引に使うことがないように、窓口で水際対策、的な?くどいようだが、これしきの金額だが?家族が出張で、と言えばいいのでしたが、ここであむあむはちょっと面倒になって、思わず「はい」「そうですかぁ。いいですねぇ。で、こちらの銀行では、予めお札の種類を決めたパックになっておりますが、よろしいですか?それで、500ドルというものがございませんので、300,200,100のパックの組み合わせになりますが…」「では…20ドルがあったほうがいいので…300と、100を二つで」「では、在庫を確認いたします…ご旅行は、今週末ですか?」ぎょっ。詳細聞き取り?「…いえ…来週…」「グアムとか?どちらへ?」この金額だと近距離・短期間、と睨んで裏付け調査か?「…いえ、本土の…東海岸に…」「そうですかぁ!いいですねぇ!いま、気候ってどうなんでしょう?あったかいんでしょうか?」うわっ、そこまで聞くか!だいたい、粗大ごみを捨てるシール一つにしても、コンビニならレジで<200円を1枚ください>で済んでしまうものを、銀行だと名前や電話番号を書かなくちゃいけない。いろいろ、手続きうるさいところなんだねぇ、銀行は。にしても、ここまで聞かれたら、リアルなこと言わないと。フロリダとかなら少しは暖かいかもしれないけど…パパが行くのはニューヨークの方だから、それに沿って答えておいたほうが、齟齬が出なくてすむよね。「寒いみたいですよ。」「そうですかぁ~」何ですか?2月の横浜から、寒いところにわざわざ出かけていくのは物好きだとでも?そんなやりとりのうちにドル札パックの用意ができました。その場で開封して、内容を確かめることに。真新しいお札が入っています。1ドル札以外は、見慣れない色合いのものに変わったのね。なんだか<人生ゲーム>か何かの札みたい!日本のお札より若干小さめだし、慣れない作業なので、普通の紙を数えるように、2,4,6,8…とめくって数えるあむあむ。その手元をじっと見ています。物言いたげな雰囲気。刺すような視線。ああっ!旅行するのは私じゃないのですっ!「数えにくいですよね~、アメリカのお札って!」「日本のものと…違うかしら?」「ですねぇ!国によってはもっと、数えにくいのもありますよ。プラスチック製のお札の国もあるんですよ。オーストラリアだったかなぁ。大きさも違ってて、お財布買ってくると、日本のお札が入らなかったりするんですよぉ。もう、あれはがっかりでしたぁ」体験談か?ひょっとして、これって<必要な手続きの会話>じゃなく…この人がおしゃべり好きなだけ、か?点検も無事に終わりました。では、と立ち上がると「おまたせしてスミマセンでした!ご旅行、楽しんできてくださいね。お気をつけて!」…やっぱり、ただの世間話、だったんだ…