Lake Moraine ~Book Cafe~

2007/06/02(土)22:44

マイライフ・アズ・ア・ドッグ

映画・ドラマの感想(95)

『サイダーハウス・ルール』のラッセ・ハルストレム監督の名を、世界に知らしめるキッカケになった作品。舞台は50年代末のスウェーデンの小さな町。12歳の少年イングマルの毎日は、兄にいじめられ、出稼ぎに行った父は戻らず、母は病気、とうんざりするようなことばかり。母の病状が悪化し、イングマルは叔父の住む田舎の村に預けられる。やがて母が死に、家族はバラバラになってしまうが、一風変わった村の人たちとの交流が、イングマルの心をゆっくりと癒していく…。 今日 BSで放映されていて懐かしさ一杯で観ました。 1985年制作で日本公開1988年だそうですが公開当時映画館に足を運びました。 主人公のイングルマン12歳は(もっと小さいと思い込んでました)つらくてやりきれなくなった時 「ぼくはあのライカ犬のことを考える。わずかな餌しか与えられず 自分の意志に関係なく人工衛星で打ち上げられたあの犬のことを。彼に比べたら僕はまだましだと」(台詞うろ覚え)とつぶやきます。 この殺し文句とDVDのジャケットと同じポスターにまさしく魅了されて映画館に行って泣いたり笑ったり感動したりとめまぐるしかったのを思い出しました。すっごく好きな作品です。 それゆえ内容結構覚えているせいか大好きな作品なのに再度観たことがない”ニューシネマ・パラダイス”(こっちなんてビデオまで持っている)と同じ運命でしたが、20年経て観て色褪せてないのに感激です  先の台詞 なにも知らないと傲慢ともとれますがイングルマンをとりまく環境は実際かなり辛い状況です。父親は仕事だかなんだか南洋にいったきり(音信不通ともとれます)母親は病弱で兄には意地悪ばかりされています。そして彼は悪気がある訳じゃなくお母さん大好きっこなのに行動が ことごとく裏目になってお母さんの怒声ばかりかヒステリーまで呼び込んでしまいます。 この序盤は観ていて切なくなってしまいます。 そんな彼の心の支えはガールフレンドと愛犬のシッカン しかし、さらに母の病状は悪化し兄は祖母の所、イングルマンはシッカンとも離されて叔父夫婦の所へと向かいます。 この叔父夫妻が駅まで迎えにきていて、タクシーで一緒に帰るなにげない描写に二人のイングルマンを暖かく迎える雰囲気が伺えます。 この叔父夫婦ばかりでなく住んでいる村の人たちがもうユニーク(変とも言います)な人たちばかりで、 トラブルばかり呼び込んでいたイングルマンの行動すらなんでもないことのようになってしまうようなエピソードがちりばめられます。  寝たきりだけどイングルマンに女性の下着のパンフレットを(官能小説のように)読み上げてもらう同居人のおじいさんやら、 村一番美しい屋根を目指して春夏秋冬  毎日トンカチトンカチと窓の修理にいそしむおじさん、 黄緑色の髪の毛をしたサッカーのチームメイト、 ドラム缶?改良して「人口衛星」と銘打ちモノレールらしきものを作って子供達をのせてくれる彼の父親、 そして世界中の男の子達の敵(←どこぞのBSの日本を紹介(?)する不思議な番組から引用)の綺麗で巨乳のお姉さんとそのお姉さんをモデルにする彫刻家などなど。  また おじさんの働くガラス工場内の様子がたびたびでてきますが工場内の”火”の描写がこの村のひとたちの気持ちの温かさをつたえてきます。 真打ちは美少年風少女のサガです。公開当時もかなり話題になり成長して出演した作品でも魅力が増していましたがとっても凛々しくて可愛くてかっこいいチームメイトです。 ボーイシュでボクシングもめちゃくちゃ強く、成長期で変化していく自分の身体へのとまどいも率直に打ち明けてしまうくらうくらいイングルマンと仲良しになります。 こんな楽しい村の生活の中でも考えることはお母さんに自分が楽しい時を過ごさせてあげたいという思いと愛犬シッカンと再び一緒に暮らすこと ここで家族との回想がめぐらされジャケットの表紙のエピソードが紹介されます。 お母さんは健康な頃写真家をしていて写真を撮るのはおてのもの。表紙は写真を撮ってもらおうとファインダーに向かって「笑えシッカン、シッカン笑え」と犬の口に手をあてて自身もニコニコしている姿です。 悲しいことにイングルマンの望みは打ち砕かれます。そして打ちひしがれて一人つぶやくのが冒頭の言葉 わずか12歳でこんな言葉をつぶやいて悲しみに耐えなければならないイングルマン  でも たしかに彼の方がましなのです。彼には手を差し伸べてくれる叔父夫婦やサガ、村の人たちがいて、愛され必要とされていて、それに対して彼がきちんとこたえていくであろう姿がつたわってきます。

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