Lake Moraine ~Book Cafe~

2007/08/10(金)20:26

吸血鬼ハンター"D" by 菊池 秀行

本の感想 作家別-か行(16)

辺境地区の一小村の街道に少女は黒い鞭を手にしてたたずんでいた。通りかかる旅のハンターに戦いを挑むために。父親仕込みの腕に覚えはある。自分を倒せるハンターなら、吸血鬼に噛まれた喉の傷痕を消してくれるかもしれない。一度 "貴族の口づけ" を受けた者は、その吸血鬼を倒さぬ限り、永久に呪われた存在になる。少女ーードリスは、吸血鬼ハンターを探していたのだ。西暦12090年、卓越した科学力を駆使して人類の上に君臨した吸血鬼は、種としての滅びの時を迎えても、なお人類の畏怖の対象であり、吸血鬼ハンターは最高の技を持つ者に限られた。そして、ドリスはついに出会った美貌の青年ハンターは、だが冷たい口調でこう尋ねた。《おれはダンビール(吸血鬼と人間の混血)だ。それでよければ》   ~あらすじより~ 32冊目 1983年シリーズスタートで今も続いている人気シリーズですが私は菊池作品自体初めて読みました。Book Off物色していてたまたま目に入ったのですが数年前に劇場版のアニメをレンタルしてたのを思い出して購入! その劇場版アニメ(原作では3作目)は米国で先に(当然台詞は英語)公開され字幕版にて後から日本で公開、セルDVD化時に日本語吹き替え入れたという異色作。貴族と呼ばれる吸血鬼の居城の中世ゴシックロマンの背景とロケットランチャーやらミサイルなどの武器と、設定がよく分からなかったのですが映像の美しさにしごく満足していたのが記憶にしっかり残ってましたのですが一巻目を読んで 設定に納得。SFものでした。 根本は猿の惑星のように地球が最終戦争にみまわれ残された数少ない人類達は業火の果てに荒れ果てた地で生活の水準も知識も後退をよぎなくされ文明の精度も中世時代におちてきた中、伝説の中にうずもれていたはずの吸血鬼たちが歴史の表舞台へと登場し超科学と魔法を酷使した新たな文明を生み出し、自らを貴族と名乗り人類を隷属していく。しかし不老不死である貴族達の歴史も5千年たらずでなぜかしら終焉への道のりを歩みはじめ、勢力を盛り返してきた人間の反乱にあい形勢は逆転、そんな中でも人間の貴族"吸血鬼”に対する畏怖・恐怖は消えることがなくその恐怖を排除してくれるのが吸血鬼ハンター達。  吸血鬼ヴァンパイアという存在は小説・映画・漫画・ゲームで延々題材として取り上げる枚挙にいとまはないほど人を惹き付けてやまない存在ですが、この作品はこれにまた懐かしき西部劇のすじがきが加わります。荒野で窮地にたたされた姉弟が雇いいれた流れ者が危機を救って無言で去っていく 私が書いてしまうととっても安っぽく思えてしまいますが設定、登場人物の個性がきわだっていて、なによりも不老不死である吸血鬼達の命のはかなさというのがしみじみ伝わってくるところがぞくぞくしてきます。 冴え冴えとした美貌の主人公Dの魅力もさることながら女性キャラ達の勇み肌ながらかいま見せるDに対するせつない恋心も読ませます。  正直あまり期待してなかったのですがノスタルジックでありながら凝っている設定の中に納得がいく語り口調が心地よく楽しんで読みました。

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