Lake Moraine ~Book Cafe~

2008/03/30(日)00:18

春になったら苺を摘みに by 梨木 香歩

本の感想 作家別-な行(20)

「理解はできないが、受け容れる」それがウェスト夫人の生き方だった。「私」が学生時代を過ごした英国の下宿には、女主人ウェスト夫人と、さまざまな人種や考え方の住人たちが暮らしていた。ウェスト夫人の強靭な博愛精神と、時代に左右されない生き方に触れて、「私」は日常を深く生き抜くということを、さらに自分に問い続ける―物語の生れる場所からの、著者初めてのエッセイ。 「西の魔女が死んだ」の映画化もとっても気になる 梨木香歩さんのエッセイです。 これも検査待ちの入院生活の時に読みました。 読んだ作品はまだまだ少ない、けれど 心にしっかりと刻みこまれる作家、梨木香歩さんのエッセイ 著者の海外生活での知人達との交友録です。 読んでいて、著者はこういった生活の経験から 作品を育んでいるんだと感慨ふかい話が一杯です。 あらすじにある英国での下宿の女主人ウエスト夫人を とりまく描写は秀逸で 村田エフェンディ滞土録を彷彿とさせます。 心を通いあわせている一方で、 異邦人としての自分の存在をかみしめ 相手をどうやったら理解できるかと考える 行為の響きは美しく しかし 実にむずかしいことの数々に むきあっていこうとする人々には すがすがしさと、こうありたいという勇気も 分けてもらえる気がします。 「銃をもつことのできなかった」ウエスト夫人の父 著者が偶然乗り合わせた 戦中をアメリカで      生き抜いた日系アメリカ人の男性 様々な国、様々な習慣、様々な思考回路をもつ下宿人に    分け隔てのない対応を心がけるウエスト夫人 かぞえあげるときりがないほどに  著者の友人、知人とのエピソードは さながら彼女の描く作品の登場人物以上の 輝きを持っています。

続きを読む

このブログでよく読まれている記事

もっと見る

総合記事ランキング

もっと見る