Lake Moraine ~Book Cafe~

2009/05/04(月)22:06

蟹工船 by 小林 多喜二

本の感想 作家別-か行(16)

今市子さんの「萌えの死角」を読んでいたら  ドラマCDの「蟹工船」が聞きたくなったんですが(腐っ)  原作ちゃんと読む前に よからぬ?脇道にそれると 頭の中のイメージがぐちゃぐちゃになって 感想もろくすぽ書けなくなるということが 判明したので ここは大人しく原作から きちんと 読むことにしました。 (夏目漱石の”こころ”でちと失敗    いまだに 感想がまとまりません)   蟹工船 海軍の保護のもとオホーツク海で操業する蟹工船は、 乗員たちに過酷な労働を強いて暴利を貪っていた。 “国策”の名によってすべての人権を剥奪された未組織労働者の ストライキを扱い、帝国主義日本の一断面を抉る「蟹工船」  小林多喜二の名前を聞いたのは たしか 小学校の高学年か中1の頃、学校の先生からで、 特高警察に拘束され拷問死したという話を聞いて  ただただ 怖い、恐ろしい 可哀想 といった 感情だけが残っていたような気が、  経歴は一応 把握していたのですが その強面な印象から著作から遠のいてました。  様々な出自の出稼ぎ労働者を安い賃金で酷使し、 高価な蟹の缶詰を生産する海上の閉鎖空間である 蟹工船が舞台で文字通り陰惨な状況が続くのですが  表現、描写にどこかしらユーモアを含み 例えるなら  パリパリと煎餅を食べている音のような 生きのいい比喩で 読み進めやすかったです。  共産主義、社会主義に触れた部分というのは ごく一部で、ただ それをきっかけにして サボタージュ、ストライキへとすすむのですが  むしろ”気づく”ことがこの作品のテーマじゃないかと 自分の現状、状況を見つめ  より良くいきるために 何をすべきか考え  行動できる 権利が人間にあるんだと 搾取するもの(資本家、工場側の人間)に向ける言葉も  現在と比較すると 辛辣ではあるけれど オブラートに包んだような控えめな表現で  蟹工船、タコ部屋などという世界が あたりまえに存在し また、そんな社会に対する疑問、憤り、批判を こんなわずかに盛り込んだだけで 更迭される 危険にさらされていた時代があったことを 忘れてはいけないし 逆戻りしてはいけないんだと 身震いする思いでした。 こっちに入っていたのを読みました。

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