『クーデターとタイ政治』
タイ情勢について、何か書いたほうがいいのかなと思いつつも、事態の推移をまとめるなら既に他の方のブログ等でやってるでしょうし、今後の見通しについても単なる憶測にしかならないので、やめておきます。何よりも、ここのところ刻々と入ってくるニュースをずっと追っているうちに近視眼的になっている自分に気が付いたので、しばしニュースを追うのをやめてみようと思ったことが大きいのですが(汗)狭くなった視野を広げるためと気分をリフレッシュするために、今日はいっちょ本でも読んでみよう、と選んだのがこの本! 『クーデターとタイ政治 -日本大使の1035日-』 小林秀明著、ゆまに書房、1,890円(税込)出版されたばかりのためか、楽天ブックスにまだUPされてません(汗)タイトルのとおり、2005年11月から2008年9月までの1,035日間、駐タイ日本大使を務められた小林秀明さんの回顧録です。読むことで、現状の打開につながるようなヒントが見つかればという期待も後押しし(←結局頭から離れてない)、一気に読了。何よりも面白かったのは、登場する王族や首相、閣僚の方々の人柄がなんとなく想像できる点。大使というお仕事は、相手国の大事な方々を晩さん会にお招きして親睦を深めておくのが大事な任務の一つなんですね。その描写から、頭脳明晰で現実主義的なタクシン元首相、豪快な一方で大の美食家のお茶目な故サマック元首相、誠実で実は信頼できる人物に感じられるソムチャイ元首相・・・などのキャラクターがイキイキと伝わってきます。さらに興味深い点としては、昨今の政治状況を著者は、「タクシン旋風」と称しています。そして「タクシン旋風」の源泉は3つあるとし、その1つは、「地方の農民」とのこと。今までタイの政治プロセスの中に入ってこなかったこの「政治的フロンティア」に着目して開発。その結果、地方の農民の間でタクシン氏の人気が出たことが旋風の源泉になっているんだそうです。あとの2つの源泉は?それは、読んでのお楽しみということで!(笑)回顧録とは言っても、登場するのはつい最近の出来事ばかり。読んでいて、「あ、そうか。コレはあの時のことか!」と記述と自分の記憶とがリンクすることが度々あって著者の体験を追体験しているような気にもなりました。貴重な本です。タイ政治に少しでも興味のある方には、是非一読をオススメします!