●復活祭のお話と、卵形のチョコレート
わたしは、キリスト教徒ではないし、キリスト教徒になることもないでしょうが、フランスに住んでいると、この国の文化を理解、とまでは、いかなくても、すくなくとも糸口を探すには、やはり、キリスト教の歴史に、興味を持たざるを得ないなぁ、と何度も思います。今日は、復活祭の、レユニオン島、フランス、そして、ヴァチカンのミサの模様が、テレビのニュースでも、大きく報道されていました。フランスにきてから、この復活祭が来るのが、楽しみになってしまいました。復活祭の前後には、お休みになるのが、最大の理由。そして、復活祭が近づいてくると、卵形の、美しく飾られたチョコレートが、チョコレート屋さんに並び、それだけで、うきうきした気持ちになってくるのも、理由の一つ。チョコレートは、苦手でほとんど、たべないのだけれど、そんなチョコレートを、チョコ好きな人や、子供にプレゼントするだけで、楽しい!この復活祭の前後から、フランス本土では、春めいた日が多くなり、庭のクロッカスや、ネコヤナギ、Premier japonとよばれる春の花たちが、目を楽しませてくれます。だから、復活祭って、宗教的な意味、というよりは、もう楽しい春を告げるお祭りみたいな感覚で、待ち遠しいものだったのですね。 <写真・ロレーヌ地方の春を告げる、クロッカス>復活祭は、十字架にかけられたキリストが、復活したのをお祝いする日、というのは、その名からもよく知られています。復活、というのは、英語、resurrectionの訳で、キリスト教では、復活のことを、ラテン語の resurrectio を使い、復活祭のことは、英語ではイースター(Easter), フランス語では、パック(Paques)、といっています。復活、といっても、イエスの「復活」は、元に戻った生命のことではなく、かえって、新しく起きあがったこと、キリストが、新しい状態の命を得たこと、なのだそうです。その日程は、以下のとおり。木曜日=聖木曜日(キリストの最後の晩餐)金曜日=聖金曜日(キリストの受難、(la passion))土曜日=聖土曜日(復活徹夜祭)日曜日=復活の主日(月曜日=休日)日付が、かけないのは、ご存知のように、復活祭の日は、毎年ごと変わるからなのです。復活の日曜日は、春分後の、最初の満月の、次の日曜日と決められています。この日は、古代世界のなかでは、遊牧民の春の祭りだったのですが、キリスト教布教の、長い歴史を経て、キリスト教のなかで、独自の、新たな意味を獲得していきました。しかもキリスト教の歴史の中で、もっとも初期に成立した、特別な祝日とされるようになりました。長い歴史の中で、キリスト教は、非キリスト教(アングロ・サクソン民族等)の慣習をも、その教えの中に取り込み、大きな発展を遂げてきたのですね。英語のイースター(Easter)という名前は、アングロ・サクソン民族の、光と繁殖の春分の女神、 「エアストレ」(Eastreか、Ostaraか、もしくは、バビロンのIshtar)に関係があると、いわれているのだそうです。つまり、Eastreの意味は、「春」そのもの、なんですね! だからこそ、キリスト教とは関係のないわたしまで、こんなにウキウキした気分になってしまうのでしょう。光と繁殖の祭りの祭り名を、光と命を与えるキリストの記念祭に移すことは、キリストの文化とはなじみのなかった、アングロ・サクソンの地に、新キリスト教への改心をしやすくする、と考えられたのでしょうか。それにしても、キリスト教の知恵、(というか、こじつけというか)は、すごいですね。 <キレイに飾られたウィンドウのチョコレートたち。手前に見えるのは、ウサギなのだけれど、見えるかしら???>さて、復活祭の中でも、たのしいのは、復活祭が近づくに釣れ、町のチョコレート屋さんをいろどる、美しく飾られた卵の形のチョコレートです。復活祭の休みの日には、フランスでは、お昼のディナーの後、このチョコレートを使って、庭で、チョコレート狩りをします。子供達が、大人が、隠したチョコレートを、庭のそこ、ここで見つけ出すのです。この卵の由来は、一体なんでしょう?卵は、北ヨーロッパ文化の重大な宝だったのです。卵は、春には、小作料の支払の一部に使われたり、利子の計算単位にもなっていたそうです。着色した卵はすでに4世紀のゲルマン・ローマンの墓でも、発見されているそうです。イースターエッグは、すでに、12世紀ごろのものが、発見されているそう。この赤色は、十字架上で注がれた、キリストの血を暗示しているのですって。また、卵は生命の象徴とされ、また始・終のない形のために、永遠のしるしとされていました。きれいに飾れた卵は、16、17世紀から現れます。(プラハにも、美しく飾られた、卵の殻のお土産を、よく見つけました。)いつの頃からか、お嬢さんたちが、愛人に卵を送る習慣も広がり、その数は、愛の深さの表現と解釈されたとのこと。現在では、イースター・エッグはいろいろな材料、例えば磁器、チョコレート、マルチパンから作られ、奇妙に塗られ、きれいに包まれます。(フランスでは、やはりチョコレートが、一般的のようです。)<ヌガーで作られた卵もある>フランスでは、一般的なイースターエッグですが、お隣ドイツでは、金色のアルミに包まれ、赤いリボンをつけたウサギ・チョコが、もっともポピュラーに見かけられます。(卵は、ゆで卵を使って、色付けしたものを、隠します。)ウサギは多産なので、自然に繁殖のシンボルとされたのが、始まりのようです。また、ウサギは、女神、エアストレのシンボルでもあったし、極限られた範囲では、キリストの象徴にもなっていたそうです(昔のビザンツ教会)。それにも関わらず、イースターのウサギは、非キリスト教的伝統とはほとんど関係がなく、近代の発明のようです。このウサギは、特にドイツ、アメリカで人気になりましたが、カトリック教会のシンボルには、なっていないのですね。レユニオン島の、復活祭は、ちょっと 、いままでの復活祭とは、赴きが違ってきます。なにしろ、季節が、逆になるのですから。せっかくの復活祭の連休ですが、レユニオン島は、雨が降り続いています。復活祭らしくない、南の島の復活祭ですが、こちらも、そろそろ、暑かった夏も終わり、すごしやすい、南の島の冬に突入していく季節です。チョコレートを食べる子供達には、復活祭は、夏の終わりのシンボルになるのでしょうね。 <もっとも一般的な卵型のチョコレート。20センチくらいの高さがあり、中には、いろんな形をした小さなチョコレートが入っている>各国のイースターの過ごし方も、教えてくださいね!それでは、みなさん、よい週末を。・・・・・・・・・・・・・・・・・・「絵日記をかきたい気持ち」の 更新情報 ●フランス ロレーヌの聖少女、ジャンヌ・ダルク ●火と砂の作り出す魔法ークリスタル、ロレーヌの小さな町、バカラより ●フランスの水を供給する町、ロレーヌのコントレックセヴィル(コントレックスの町) ●光と影を描いた、17世紀のなぞの画家、ロレーヌのラ・トゥール