|
全て
| 徒然奇2
| 【小説】加藤英雄無頼控え
| 【小説】但為君故(完)
| 風来坊の唄
| モリの大冒険~金曜の夜と土曜の朝~(完)
| Jeysomコーナー(旧ギャラリー)
| 【小説】風来坊旅の途中にて
| 【ドキュメント】ハムレット
| 【ドキュメント】細谷十太夫
| 【小説】加藤英雄無頼控え最終章(完)
| 実話控え
| 【小説】恋愛小説?
| 【小説】フィクションアクションハクション
| 【セミフィクション】無頼控え外伝
| 市民Ken
| 【小説】十太夫先生お日向日記
| 片岡さん
| 片岡義男北紀行(北海道2007)
| 嗚呼 先輩
| 片岡義男北紀行(北海道2009)
| 【小説】不動明王
| 【小説】鴉組
| ミステリーハンター
| ちゃーちん
| 武術
カテゴリ:【小説】風来坊旅の途中にて
居酒屋唐子から“からくり人形館”までは、そう遠い距離ではない。通る車も人もなく、自分の足音がやけに路地に響く。空には月がポッカリと浮かんでいる。
自分の影がやけに青く見える。 「せっかくの、いい心持が醒めてしまうな・・・」 背中を丸めながら夜の町を歩く。 “からくり人形館”は入り口が閉ざされ、建物の一部が街灯でわずかに照らされているだけだった。 入り口の前に立ってみる。ガラス戸にはカーテンが降ろされ、中を窺い知ることはできない。2~3分待っただろうか、建物の横からさっきの男が現れた。 「よう、待ってたぜ。入り口はこっちだ」 建物の左側に人一人がやっと歩けるような通路があった。 裏手に回ると2階に上る急な階段がある。 「ここに入る前にこれをつけてくれ」 男から渡されたのは縁日で売っているお面であった。 扉を開け、中に入ると板塀が目の前に立ちはだかる。 板塀には所々穴があけられている。 中を覗くための穴のようだ。部屋の中にはすでに数人の男達がいて、穴から隣の部屋を覗いている。 どいつも顔にお面をつけていて、その様はこれから始まるショーの性格をある程度予想することができる。 「ショーはまもなく始まる。その前にいただくものはいただいておくか」 男は右手の指を5本かかげた。 「ちょっと他では見られないショーだぜ。これじゃ安いくらいだ」 木の椅子に腰を下ろし、板塀の穴から隣の部屋を覗いて見る。 部屋には傘のついた裸電球がポツンとひとつだけ点けられていた。その光は部屋のほぼ真中を、スポットライトのように照らしていて、そこに使い古した簡易ベッドがひとつ置かれていた。裸電球の光が届かないところは、月の明かりで仄かに青白く光って見える。 「準備が出来たようだ。俺は下にいるから、ゆっくり楽しんでくれ。それからお互い言葉は交わさないようにな。ショーが終わったら、端の人から順番に降りるように。お面は下の篭に入れておいてくれ。それじゃ」 男は扉を閉め、階段を降りていった。 覗き穴から隣の部屋を覗きこむ。部屋の一番奥に扉があり、それがス-ッと開いた。 そこには着物を着た女がひとり、立っていた。昼間見た美子の着物だ。背格好は美子そのものである。しかし顔が見えない。仮面をつけているのだ。女はスポットライトに照らされたベッドの横まで進み、立ち止まった。おもむろに帯をスルスルととき始め、着物の前がはだけ、白い肌があらわになった。 豊かなバストが見え隠れする。 「この女は美子なのか・・・」 女は奥の扉の方を向き、手招きをしている。 再び扉が開き、中から出てきたものは・・・。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006/03/07 06:25:29 PM
コメント(0) | コメントを書く |
|