2008/09/23(火)18:10
なんチュー夢を
うとうとしていた
8年前を思い出していた
「すまなかったなあ、suga。だけどお前は大丈夫だからな」
何が大丈夫だか分からないが、一緒に飯を喰っていたのは副社長だ
飯を喰い終わったあとに、俺は一緒にいたなっちゃんに訊いた
「謝っていたのか、あの人」
「そうなんじゃないかしら」
「なんで?」
「それは無理やりsugaさんを引っ張ってきたからじゃない。体悪いの知っていて」
「なるほど。でも謝ることなのか」
「当然よ。勝手に人のこと判断してほしくないわ。sugaさんだって人間なんだから」
「でもなっちゃんのお陰で東北に帰れるな」
なっちゃんは俺の仙台での出来事も体がどれだけ悪いかも知っていた。そして東京生活は限界だと上司にかけあってくれたのだ
「体を治してね。東京に来たのを悪いことばかりだと思わないでね。私に会った事を良い思い出だと思ってね」
足腰立たずに会社に出るので精一杯。ほかは全て寝る生活。ぴったり人生の1/3しか稼動しない毎日。街じゃヤクザを脅して虚勢を張っていたが無理だったのだ、体は
仙台で俺が注意していたことが全て悪いほうに進み、お袋からの毎日の脅迫電話、父親の入院・手術で週末東京と田舎の往復、祖母の死、そして友人の死と、やくざ出来事の東京よりも激しい田舎でのイベント。俺はほとんど3重生活をしていた
今思えばおかしくなって当たり前だったが、その頃はなっちゃんのお陰だっただろう、心は元気だった。うっかりもしょっちゅう見に来ていたし。
「何でこんなこと思い出したのか」
本当におかしくなったのはこちらにきてからだった。後で気付いたが「しまった、ここは岩手だった」と反省した。岩手も俺も同じくらい変わったかと思ったら、岩手は岩手だった
というか、改悪していた
「sugaというのはけしからん」
が蔓延した。そのまま言えばそう言われるだろう。俺は間違えていた。ここいらには小親分は一杯居るのだ。大親分は居ない。だから俺みたいな一匹熊は目立つのだ。
で、3ヶ月の休暇。もう他で働く気力も(当然働き場所も)無く、そのまま会社にいた。
親父もこの頃は事務所を開いて働いていたし、まあ、いいだろう。そんな元気なら俺が東京に居る間に死に掛けてほしくないものだ
病気はよくしたもので、俺を目立たせる存在にしなかった。徐々に会社でも街でも暮らせるような雰囲気ができた。なにせ、知らない人に「毎週どこどこにいるでしょう」とか、目撃情報が多い俺だが、誰も声をかけてこなかったんだから。今では声もかけられる。
それから3年は怨んでいたものだった。頼みの体が動かないのはこういう精神になるものだ
しかし弱い。そんな俺にひっぱたかれて逃げていく奴ばかりなのだから余程弱い、ここのやつらは。
徐々にだが体が動くようになってきたが(何といっても1/10も筋肉が使えない状態だったらしい。ま、先生の冗談にしても相当筋肉が使えない状態だったのは間違いが無い)、頭はぼんやりしたままだ。実は余り物を思い出さない
その間はひたすら仕事と武術をしていたのだと思う
先年、暫く練習をしていなかったが、ミットを撃ってみて自分の突き蹴りが異常な力を得ていたことが分かった
「武の質って変わるんですよ」
先生の言葉だ。確かに打ち方とか角度とか関係なしに、どうやっても威力があるのだ
なるほど。考えてみれば武術をするには相当良い環境だった
好きなボクシングとは全く違う身体の使い方をする中国拳法だが、俺は先生が苦しんだ体の使い方の変更(先生は実戦空手から太極拳へ変わって苦労したらしい)を、体を壊すということで簡単にやってのけた
というか、中国拳法式にしか激痛が走って体は動かないのだ。
ここに来るまでは、社内外問わず人に囲まれて暮らし、さまざまな情報を得て知的にも満足していたが、ここでは独りだ。することも武術以外ないので、武術をするしかない。本も武術中心になった
シェイクスピア・カンパニーも頭が狂った状態では何をやっているか分からないし、仙台にすら行けない。乗り物アレルギーにもなっていたし、移動にもの凄く時間がかかるのだ。今では会社に30分でいけるが、前は50分かかっていた。
1/10しか使わなかった筋肉が1/3になって、その頃ハムレットが始まった。それにあわせて居合いにまで発展した俺の武術だが、転んでもただでは起きないもので、居合いとハムレットが実に良く合う
俺だけのハムレット構想ができた。東北人であること、元が「天然理心流」みたいな体術を持ち、更に居合いでは中国拳法の「暗殺」剣と「薩摩」示現流・・・カンパニーでは幕末の登場人物を肌で感じることができた
カンパニーの皆には悪いが、俺は選ばれたハムレットだったよ。本当に俺は明るい
だが、抜けちまった
さっきの夢ですっかり抜けた。俺はそれでも8年前と何も変わらず、ただやってくる事象が変化しただけだったと
東京に行く寸前には、俺はてっぺんまで目指せた気分だった
それがあのたった一回の出来事で今に至り、もしやこの先もと思っている
しかも自分の生活を変える勇気もないし体力もないとは・・・とほほ
「何でこんなこと思うのか」
寝るのも良い事ないな