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2007/10/11(木)09:33

エーカンバレーシュヴァラ / Ekambareswarar

【E】(3)

                   シヴァ神 エーカンバレーシュバラ、又はエーカンバラナータは星の数ほどある「再創造のための破壊神」のシヴァ神様の別名の1つ、でも私がこの名前を見たのは南インドのタミル・ナードゥ州の州都チェンナイ(旧マドラス)から南西77kmの距離にあるカンチープラムだけだったと記憶しています。 エガーターラーという非アーリア系のチェンナイの守護女神がいるのですが、タミル語感から察するにこの方とも何らかの関係性があるのかもしれません。 この女神様もチベット密教風のターラーという語尾がミステリアスですよね。 そんな非アーリア系のドラヴィダ文化がインドで最も濃いタミル・ナードゥ州に位置するカンチープラムは、ヒンドゥー教の7大ティールタ(聖地)の1つ、南インドのヴァラナシ(ベナレス)とも言われる重要な場所。 7大聖地とは、1・アヨーディヤ、2・ウッジャイン、3・ハリドワ-ル、4・マトゥラー、5・ヴァラナシ、6・カンチープラム、7・ドゥワールカ、そして7ヶ所の中でも南インドにあるのはカンチ-プラムだけです。 4C頃に開かれたカンチープラムはパッラヴァ朝の首都として栄え、続く9C頃からのチョーラ朝でも隆盛を保った古都。 高さが100mにも及ぶゴープラム(切石を積み重ねたドラヴィダ様式建築の尖塔)が建ち並び、敷地面積もこの町最大のエーカンバレーシュバラ寺院の内奥に祀られている巨大なリンガは、南インドの5大リンガの1つを形成しています。 寺院の内庭には樹齢3500年のマンゴーのご神木があったのですが、残念ながら2005年の大雨で無残にも倒れてしまいました。 この寺院の壁面には涅槃仏や結跏趺坐で坐る仏陀のレリーフがあり、元々は仏教寺院だったのではないかと言う学者さんもいらっしゃるように、カンチープラムはタミルでは13Cに衰え、17Cには滅んでしまった古代の仏教の中心地の1つでもありました。 中国に禅をもたらしたと言われるボーディダルマ(赤いダルマさんのモデルでもある菩提達磨)、大日経とともに密教の2大経典を成す金剛頂経をやはり中国に伝えたヴァジュラボーディ(真言八祖の第3祖の金剛智)など、日本とも縁の深い仏教僧達の出身地説もあるようです。 花嫁衣裳にはカンチ-・サリーか、ヴァラナシ・サリーか、ダッカ・サリーを着るのが若いインド女性の夢とよく言われるようにカンチ-プラムは絹織物の名産地。 そのハンドルーム(手織り)の伝統はパッラヴァ朝にまで遡り、金や銀の糸で模様を施した高級な美しいシルク・サリーは南インドの保守的なバラモン女性などからも愛好され続けています。 【海のシルクロード】はもう1つの壮大なネットワーク・システム、シンガポールには現在も多くのタミル人が住んでいますがそこから日本までは海上を船で進めばあともう一息です。 (海のシルクロードつながりで良かったらこちらもどうぞ~。) タミル語はインドのタミル・ナードゥ州だけの言語ではなく、スリランカやシンガポールでも公用語の1つ。 「日本語=タミル語起源説」の大野晋さんによれば、「コメ、ナヘ、アゼ、タンボ、カネ、タカラ、オル、ハタ、マツル、ハカ、アハレ、サビ」などの何百という単語にその類縁性が認められるそうですよ。 大野晋さんのお説をほんの少しご紹介: <日本に来たのはタミル語という言葉だけではなく、米、金属、機織りなどもともにやって来ました。 この文明複合体は当時としては圧倒的なパワーを持っていた、今のインターネットなどと同じような猛烈なテクノロジー。 ですから日本人達はそれについていって消化したいと考え、ものの単語や文章をはじめ「係り結び」も「五七五七七」も覚えて全てがそこへ巻き込まれいたのが朝鮮半島からの文明が流入する以前の弥生時代の事でした。 「カミ、モノ、ハラエ」などの古い祭祀は用語も内容も、何故か古代日本語と古代タミル語ではほとんど同じなのです。> インダス文明を築いたインドの原住民のドラビタ族の仲間であるタミル人は、BC1500年頃にアーリア人の侵入を受けてインド南部へと追いやられました。 アーリア人の築いた文明はその言語のサンスクリット語に象徴されるように圧倒的に優秀なものだったので、それに対抗する事は困難を極めたようです。 タミル語はその起源をインダス文明に遡り、さらにメソポタミア文明へと遡ることが出来ます。 そこに大野晋さんの説を加味すると、日本語の起源は遠くシュメー人の文明まで遡れる事になり海と陸のシルクロードが微妙に交差し始めますよね。 ウラル・アルタイ語族に所属し、中国語の漢字を使い、「ハナッカラ」の「ハナ」は韓国語で「1」の意味、そんな日本語の起源についてはタミル語説の他にも諸説が存在しています。 シュメール語説、ヘブライ語説、アラビア語説、マオリ語説、ポリネシア語説などなど、よく考えてみると意味不明の「チャント」「キチント」などは韓国語、「ソイヤ、ソイヤ」や「ワッショイ」などはアラビア語、「エッサホイサッサ」などはヘブライ語がそれらのルーツなどの興味深いお話の数々。 人間も国境も言葉も常に変化し続けている生き物なので真実の所は不明ですが、いくつかの類似語があるとちょっとそんな気にもなって来ます。 意識を拡げて心を柔軟にして、音から導かれるイマジネーションを遊んでみるのもおもしろいかもしれませんね。 インダス文明にその起源を持つとも言われ、ヨーガのグル(師)の中のグルでもある最もポピュラーなエーカンバレーシュバラ=シヴァ神様も、BC1000~BC500に成立したリグ・ヴェーダでは暴風雨の神格化である荒ぶるルドラ神様(咆哮を上げる者という意味)の別名として以外にもマイナーに登場。 後には仏教にも取り入れられ、 不動明王 、 降三世明王 、大黒天、伊舎那天、大自在天などにもなりました。 シヴァ神様は名前も姿も変化も神話もゴシップ・ネタもやたらと多い中々のプレイボーイ、これは多分元々の南インドの地元神をヒンドゥー化する際に都合の良いキャラだったからなのでしょう。 上の図像はシッダ・アーサナ(半跏趺坐)もクールな、深~い瞑想状態のヨーギ(ヨーガの修行者)・ヴァージョンです。

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