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JUNK ISLAND

第5話

「イキシア」
第5話

まったくこいつは何やってるんだ・・・。
本当にこいつがパートナーでやっていけるのか。
私はそう思いながら間抜けにもポルティに吹き飛ばされて
情けなく地面にしりもちをついているパートナーを見た。
ハァ・・・・・。


「ヴェイス、ポルティはあまり人に害は及ぼさない。
 だから、こうして少し・・・・・」

淋はポルティに銃口を向け2,3発弾丸を撃つ。
その弾丸はポルティの頭の少し右側をかすり地面へとめり込んだ。
危険を察知したのかポルティは急いで地面へともぐってゆく。

「こらしめるだけでいいんだ。」

それを見たガースは少し頷く。

「そうだ、ココで危険なのは感染したヴァーラとコルトバだな。」

ガースはもはや笑うことを隠さず俺に向かってこう言った。
これはこれで腹が立つ。

ようやく俺は立ち上がり、しりもちをついた部分の泥をはらいおとす。
あれがもし凶暴な生物だったら俺は死んでいただろう。
俺は今戦場にいる。やっとそのことが身にしみて分かった。
これは訓練じゃない。実戦なんだ、と。

「ほぅ、ようやく気が引き締まった目しだしたじゃねぇか
 そうさ、これは命がけの喧嘩なんだ。何でもありの飛びっきり上等のな。」

ガースの笑いは俺に対する嘲笑から、少し獰猛な笑いに変わっていた。
背筋に冷たいものが這いずり回る感じがする。これが・・・一流の殺気。
さっきのポルティはこれだけでも逃げていくんではないか、
と思えるぐらいの悪寒が走った。

ヴェイス達は道なりに進んでいく。
近接武器のヴェイスは一番前、少し距離を置いてライフルを持つ淋。
最後にはただ腕を組んで見守るガースが縦に並び歩いていく。

ガサガサっと道の向こうにある草むらが不自然に揺れた。
明らかに自分達を待っている、
相手はヴェイスが通りかかる瞬間を狙っているのだろう。
淋が小声で気をつけろと呼びかける。
ヴェイスは軽く頷いて、できるだけ気づいていないような素振りで近づく。
自分が注意していることが相手に気づかれたら厄介だ。

ヴェイスがちょうど草むらの前に差し掛かった時、
2匹のヴァーラが殺意剥き出しで思いっきりヴェイスに飛びかかる。
飛びかかってくると同時にヴェイスはバックステップでその爪をかわす。
そして自分の身長ほどもあるソードを乱暴に薙ぎ払う。

運悪く当たった右側のヴァーラは上半身と下半身を切り離され
地面に叩きつけられた。
見事にバックステップでかわしたもう1匹のヴァーラは体制を整え、
もう一度ヴェイスに襲いかかろうとした。
その体制を整える一瞬の隙を淋は見逃さない。
一発の弾丸がヴェイスのすぐ横を通り抜け眉間に打ち込まれた。
たまらずヴァーラはのけぞり、痛さに体をくの字に曲げる。

「へぇ、タフだな・・・。だが、さようなら・・・だ。」

淋はそうつぶやいてもう一度トリガーを引く。狙いは・・・眉間。


痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い・・・イタイ!!
ヴァーラには何が起こったかわからなかった。一人の男が剣を振り
自分は避けたが仲間は殺られた。
その仲間を殺した男へ襲いかかろうとした所までは、いい。
しかし、その時何か硬いものが自分の眉間にめり込んだ。
何だ・・・何故自分がこんな思いをしなくてはならない・・・。
怒りに身をまかせ、痛みを忘れ頭をあげる。その時ヴァーラは見た。
凄い勢いで自分を襲う暴力の塊を・・・。

鈍い音が響き渡る。ヴァーラの頭蓋骨の一歩手前で止まっていた弾丸は
2発目の弾丸により頭蓋骨を突き破り脳を破壊した。
驚くべきはその技術。寸分違わぬコントロール、
発射速度、冷静さ、どれをとっても天分の才を感じさせる。
ガースも驚いたような素振りを見せている。

「お前ら息ぴったりじゃねーか。いいコンビになりそうだな。」

こりゃ鍛えがいがあるぜ・・・。
もしかしたら俺とオリビアを超えるかもな・・・。

こんなに楽しいのはいつ以来だっけな・・・。
どうやら俺は当たりを引いたらしい。

いつの間にか口の端が持ち上がっていた。

「淋・・・凄いな!これは足引っ張らないようにしないとな・・・。」

本当に俺はこんな事を思って口にしていた。
実力差は歴然。同じ新人でも、こうも違うものか・・・。
悔しさはもちろんある。けれど、それは今後自分が力をつければいいこと。
淋の足を引っ張らないように・・・。
そう心に決めたとき淋がふと口を開いた。

「いや、ヴェイスも悪くない動きだった。威力も申し分なさそうだ。」

そう言ってくれた。気休めでもかまわない。純粋に嬉しかった。

「ただ、良い動きとは言えないがな。動きに無駄がありすぎる。
 それと見境いなく振り回しすぎだ。
そんなことじゃ多勢に囲まれたとき死ぬぞ。」


・・・少しガッカリした。


ヴェイス達は何の問題も無く巣への道のりを進んでいく。
確かにいいコンビだった。ヴェイスが敵の動きを止め淋がそれを狙い撃つ。
弾丸の軌跡を気にしながら動けるヴェイスに淋は少し感心もしていた。

普通ファイターと言うものは自分が倒すという気負いが強すぎて
他の奴は自分の援護をすればいい、という自己中心的な勘違いな奴が多い。
ガースのように実力が飛びぬけているなら話は別だが。
そんなファイターが多い中、ヴェイスは状況をよく把握し、
淋が動いて欲しいように動いてくれる。
少しアドバイスをすると素直に受け止め、良く吸収して自分のものにする。
パートナーは不要だと思っていた淋は考えを改めざるを得なかった。

最後のコルトバを切り捨てたヴェイスは額の汗を腕でぬぐい、
ふぅっと深呼吸する。

さすがに人よりタフなヴェイスでも一人で前衛をこなすとなると
疲れが出てきて、息があがる。

「これで・・・終わりか・・・?」

「あぁ、一応この次のエリアがディ・ラガンの巣だ。
 終わりっつーかこれからが本番みたいなもんだな。」

ガースは大胆に笑いながらそれに答えた。

「それじゃ、さっさと終わらせるかー。」

頑丈そうな扉を開けると、そこには転送装置のような物があった。
どうやらコレがディ・ラガンの巣へとつながっているらしい。

そんなもんがあるならもうちょっと前のエリアに置いておけよ・・・
と思ったが、それができるなら
とうの昔にやっているだろうから何か理由があるのだろう。

3人が転送装置に乗ると、青白い光が辺りをつつむ。
その光が辺りに散らばっていき、視界がクリアになるころには、
別のところにいた。

だだっ広い平野。本当に何もない平野だった。
もちろんそこには、その平野の主がいた・・・。
しかし、ディ・ラガンにしては大きすぎる。
ガースの話とは随分違うでかさだ。
ガースと淋を見ると、二人とも唖然としていた・・・。

「馬鹿な・・・話に聞いたでかさじゃねぇ・・・
ありゃエンシェント・ドラゴンじゃねぇかっ!!」

ガースが怒鳴ると同時に平野の主・・・
いや、「絶対王者」はこっちを振り返る。
背筋の凍るような殺気。俺では絶対に敵わない。一瞬にしてそう悟らされた。

「淋、ヴェイスをつれて逃げろ、援軍つれてこい・・・速くしろッ!!」

淋は頷き俺の手を取り転送装置へ乗ろうとする。
待て、ココに一人ガースを残す・・・?

「ふざけるなっ!ガースを見殺しにするのか?」

気づいたら淋の手を振り払いそう叫んでいた。
自分がいても何もできやしない、そんなことは分かっていた。

「俺を見殺しに?ふざけんな、俺がこんなとこで死ぬかよ。
いいから速く行け!邪魔なんだッ!」

そうハッキリ言われた。淋も珍しく怒りをあらわにして俺に言った。

「お前とガースの力量の差はどれぐらいだと思う?5倍?10倍?
 そんな生ぬるいもんじゃない。100倍以上さ、
つまりお前が100人いてもガースには敵わない。
それだけ差があるんだ。私たちがいても邪魔なだけだ。
なら出来ることは何だ?援軍を呼ぶことだろう!」

俺がいても邪魔なだけ・・・。今出来ることは援軍を呼ぶこと・・・。
だがガースが死んだら?色々な考えが頭をよぎっては消えていく。
いつの間にか俺は言われるまま転送装置に乗っていた。

「おいヴェイス、これをニューデイズにいる
 オリビアっていうニューマンに渡してくれ。金髪のイカした女さ・・・
頼んだぜ。」

そういって青白い光に包まれて行く中、ガースは何か投げ込んだ。
青白い光が散っていき、
入り口に戻された俺の前には封筒に包まれた手紙があった・・・。



「ふぅ、なぁ竜っころ。何でお前今の間に攻撃しなかった?
 いくらでも隙はあっただろうに?
つーかお前そんだけ生きてたら人語ぐらい喋れるんだろ?」

ガースはヴェイス達が行ったことを確認し、ディ・ラガンに問いかける。
するとディ・ラガンはゆっくりと口を開いた。

「貴様ノ行為ニ水ヲ差シタクナカッタデナ。
 何故アノ人間達ヲ逃ガシタ?
 奴ラヲ囮ニスレバ貴様ノ生存確率ハ10%程度ハ上ガルダロウニ。」

地面が揺れるような声だった。これが噂に聞くエンシェント・ドラゴン・・・。

「そりゃどーも。意外と礼儀正しいんだな。
 ところで俺の生存確率がどーのこーのって
 100%が110%に上がった所で何が違うんだ?」

心なしかディ・ラガンの口が歪んだ。これは・・・笑ったのだろうか。

「フ・・・脆弱ナ人間如キガホザイテクレルワ。
 我ヲ楽シマセテクレルカ人間ヨ・・・。退屈シテイタノダ。」

ガースは口の端を獰猛に歪め、腕を回す。
こいつは一筋縄じゃいかないだろう。下手をしたら死ぬかもしれない。
だが・・・その緊迫感が俺に生きていることを実感させる。

「こっちも退屈してたんだ。普通の奴じゃ弱すぎてなぁ・・・。
 その点お前は違うんだろ?さぁ・・・暴れようゼ、竜っこ
ろォォォォォォォォ!!」

                                続く


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