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Selfishly

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忘却の枷4


~忘却の枷 4~

サァサァと音が響いている。
どうやら、雨はまだ降り続けているようだ。
エドワードは酷くだるい身体を感じながら、ゆっくりと覚醒していく。
『なんで、こんなにだるいんだろう・・・』
ぼんやりとした頭で、部屋の中を見回すと、もう1つの寝台には、
スースーと気持ちよさ気な寝息と共に人影が横たわっている。

相手が余りにも気持ち良さそうに寝ているものだから、
エドワードは自分の不調を省みて、湧き上がってくる苛立ちを
八つ当たりと思いながらも、ぶつけたくて仕方なくなる。
『最近どうしたのかな、俺?』

つい最近と言うほどではないが、前回もこんな風に不調を訴えた時があった。
あの時は唯の風邪の引き初めかとも思って終わったが、またしてもとなると、
どこか身体を悪くしているのだろうか?
心なしか、前回より症状が重い気がするし・・・。

起き上がろうにも起き上がれない自分に、苛々しながら寝返りを打つと、
気配に気づいたのか、隣で寝ていた男から声がかかる。

「どうかしたのか?」

そう怪訝そうに問われた声に、どうしようかと思いながらも、
暫くの逡巡の後、正直に話す。

「なん・・か、体調が良くないんだ・・・。
 前もそうだったし・・・。
 それも、前の時よりしんどい気がして、俺なんか悪い病気でも患ってるのかな・・・」

そのエドワードの言葉に、一瞬顔を引き締めたロイが、起き上がってエドワードの様子を窺いに
近づいてくる。

「どこか、痛いところは?」
「ん・・、全体が痛いと言うか、だるい感じ」

気遣うように布団越しに摩られている手の平の温もりに、少しだけ安心感が湧き上がる。

「熱は?」
そう告げながら、額に手の平が触れてくる。

「・・・少し高いようだな。 雨の所為で、古傷が痛むのかも知れない。
 少しだけまってなさい」

そう告げて、ロイが自分のベットの方においてあるバックを探り、
備え付けの水差しから、コップに水を注いで持ってきてくれる。

「ほら、飲んで。 少し休めば良くなるさ、その頃には雨も小降りになってるだろうしね」

差し出された薬を、疑う事無く飲み込んで、ロイを見上げてくる。

「なぁ、俺、どっか悪いのかな?」

心細そうな声に、ロイは神妙な表情で返事を返してくる。

「少し様子を見てみよう。 最近忙しかったから、疲れの所為かもしれないし。
 一休みしても、まだ調子が悪いようなら、病院に行ってみるのも手だよ?」

そう諭す言葉に、エドワードが反論するのは予想の上だ。
エドワードは、病死した母親のせいか、酷く病院を嫌う習性があるのだ。

「・・・・ん、どうしても戻らない時は、考えてみる」

「そうだな、少し休むといい」

そして、優しく髪を梳いてやると、エドワードが驚いたように瞳を瞠る。
ロイはその表情に、自分が昨夜の情交を引き摺る行為をしてしまった事に気づいたが、
急に止めるのも不自然過ぎる。 それに、もうそれ程経たなくとも・・・。
目の前で横になっているエドワードの瞼が、ゆっくりと閉じられていく。
前回同様、ロイが差し出した薬は痛み止めと、催眠剤の入ったものなのだ。

「ゆっくりとお休み」

そう告げながら、相手がまどろみ始めたのを良い事に、
髪を梳いていた手を、今度は頬へと移し変えていく。
そうやって、つぎに起きたときには全て綺麗に流される程度の違和感で、
エドワードの記憶にも、少々の体調不調で終わらせられる事なのだ。

それは、ロイとの行為が、エドワードにしてみれば、
瑣末な事柄と言われているような気がして、ロイを酷く落ち込ませる事になろうとも・・・。



忘却を得る為に払った代償は、金銭だけではなかったのだと
この時に知った。
愛しい相手に不安を生ませる事となっていても、秘密にし続けなくてはならないことを抱え、
ロイは自分が背負った枷が、心に食い込むのを感じていく。

 
[あとがき]
漸く更新の不具合箇所が判明致しました!
なんと・・・、漢字の1文字が更新をしようとすると
化けるんですよ! で、エラーに引っ掛かっててアップが
出来なくなると・・・。
初めてのことで、驚きました。
が漸く並べれて、良かったです。
皆さまには、ご面倒をおかけしました。m(__)m


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