978979 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

Selfishly

Selfishly

Pa 7、「約束」



 ~ スローライフ ~
          Pa7、「約束」 H17,12/5 12:00



何故、あんな事を言ってしまったのか・・・。
本当なら、彼には もう軍とは無関係の世界に
行かせてやることが、今後の為だというのに。

『私の家の家政夫をやってくれないか?』

そう提案すると、全く念頭になかっただろう答えに
大きな目を、さらに大きくしてロイを見つめた。
『あんたん家の?』
『そうだ、君もわかったとおり
 この家は、私以外の誰も入れないし、近寄れない。
 私も忙しい身の上でね。
 何かと留守にしがちになって、家の事は
 満足に出来ない有様なんだ。

 かと言って、軍の上部の家を そうそう
 留守にしたままと言うのも、余り良いことではない。
 なんで、君が留守番件で家に居てくれるようになれば、
 私も安心だし、君の希望にも沿えると思うが?』

しばらく思案していたようだが、答えはすぐに出せないと
思ったのか、『しばらく時間をくれ』と言って話を終えた。
ロイも『わかった、善処してくれたまえ』と返事をして
急がせる事はしなかった。

エドワードが国家錬金術師を辞めたとしても、
ロイの家に居るのでは、軍とは全くの無関係ではいられない。
本来なら、費用だけ出資してやる方法や、
一般の家で希望が沿うような所を
紹介をしてやるべきなのだ。

が、あの時のロイの頭の中には
そんな当たり前の事は、一つも浮かんでこなかった。
ただ、もう少し 彼の行く末を見つめていたいという
感情以外。

『まぁ、本当に危なくなってきたら
 離れるように手筈をすればいいだろう。

 もう少し位なら、大丈夫だろうし、
 逆に 彼の身辺が安全とわかるまでは、
 保護していたほうがいいしな。』
言い訳じみた考えを浮かべて、空のベットの横を見ながら、
先程のやりとりを思いだす。

「では、しばらくは家に滞在するといい。」
「・・・でも、そこまで世話になるのは・・・。」
律儀なエドワードらしく、思案しているように返事を
反すのを渋っている。
「いや、君が無事に戻ってきた事も、
 ホークアイ中佐や、ハボック達にも伝えてやりたいしな。
 できれば、元気な顔を見せてやって欲しいんだ。
 彼らも、私同様 君らから連絡が無いことを
 ひどく気にかけていてね。」
「・・・そうだよな。
 世話になりっぱなしで、挨拶もしてないままってのも
 気になるしな。」
「ああ、軍に来てもらえるのが1番簡単なんだが、
 それは避けたいだろう?
 かと言って、うかつに外で席を設けるのも難しいんで、
 時期を見計らって、彼らを家に連れて来るように
 しようかと思う。」
しばらく、考えていたようだが
中将の言う事が、1番理に適っているのも解るので
ロイの顔を見て、きっぱりと頭を下げた。
「じゃぁ、お世話になります。」

そういう礼儀正しいエドワードの姿など、
記憶にないせいか、まじまじと見てしまう。
「何だよ? 変な顔して。」
余りじっと見たせいか、エドワードが不審そうに聞いてくる。
「いや・・・、君にも礼儀を弁える事が出来るんだな~と。」
「何~!、なんかあんたが言うことは
 何気に失礼な気がするんだけど?」
むっとした顔をして不貞腐れる。
「くくくっ、すまない。
 悪い意味ではないんだよ。
 大人になったんだなと思って。」
「まぁ、確かに昔の俺は あんたには態度悪かったからな。
 あの頃は、自分が尊敬する人にしか
 礼儀尽くしてなかったし~。」
「・・・君も、確信犯で失礼だな。」
つまり、昔は尊敬してなかったと。

「あははは、悪い悪い。
 冗談だよ。
 あんたのことは、ちゃんと尊敬してたんだぜ、
 あれでもな。」とやり返すエドワードの口の悪さも
 磨きがかかったという事か。
 けれど、まだ1年程しかたっていないのに
 『昔』と言えるとは、彼が成長の速い少年期であると言うことか。

埋めれない距離が、少し寂しいような感じがする。
年寄りの感傷と言われそうだな・・・。

「まぁ、明日からの事は ゆっくりと考えるとして、
 もう、遅いから そろそろ寝るとしないか?」
「うん?
 ああそうだな、中将 明日は何時なんだ?」
今朝の事も考えて、時間を聞いてくるエドワードに
「明日は、重要会議が入っててね。
 朝は 6時頃に起こしてくれないか?」
「6時!!
 軍も大変だなー。
 じゃぁ、なおさら 早めに寝ないと
 もう、後何時間もないぜ。」
「そうだな、会議で居眠りもで出来ないしな。
 君も もう寝るだろう?」
「ああ、そうだな。
 あんた起こさないとやばいしな。」
「頼む」素直に頼んでくるロイは、自分の寝汚さを
きちんとわかっている。

「じゃぁ、行こうか。」
と、エドワードを促すように声をかけると
かけられたエドワードが「?」の顔を浮かべる。
「寝るんだろう?」
「え・・・、寝るけど・・・。
 まさか、あんたと一緒にってつもり?」
「そうだが?」
エドワードが、何を そんなに躊躇うのかがわからず
ロイも疑問文で返す。
「えっ、マジで?
 ここって他に寝るとこないのか?」
こんなに大きな家なのに・・・と思いながら聞いてみる。
「いや、2階に客間があるが、
 もう、数年来使ってもなければ、
 上に上がった事も無い状態でね。
 とても、人が寝れる環境とは思えないし。

 まぁ、昨日も一緒に寝て
 寝むれるのがわかってるんだから、
 問題ないだろう。」
特に気にした風でもなく、あっさりと返すロイに
エドワードの方が慌ててしまった。
「いや、昨日は俺も気づいてなかったし、
 いいよ、ここのソファーで十分だから。
 2階は、明日にでも掃除して使えるようにしておくから。」

「お客を ソファーで寝かせれるはずがないだろう?
 何を そんなに気にしているんだ。」
エドワードが断る意味が解らないとばかりに
ロイが言葉を告げるが、
『いや、普通 多少は気にするよ・・・。
 それに、今朝起きたとき 心臓に負担が
 でかかったし。』
「いいから!
 それに俺は客じゃー無くて、居候。
 あんたは気にせず、さっさと寝る!」
「けど、風邪でも引いたら どうするんだね。」
「何いってんだ、
 この時期に風邪引くわけないだろ。
 ブランケットか、シーツだけ貸してくれれば大丈夫だって。」
「しかし、子供をソファーで寝かせるなんて、
 私には出来ないよ。」
「あのなぁ~、
 あんた俺をいくつになったと思ってるんだ?
 もう、17だぜ。」
あきれたようにロイの顔を見るエドワード。
それでも、私がソファーで寝るから
君がベットで寝なさい等と言うロイを押し切って、
寝室に追いやった。
『別に、一緒に寝ても構わなかったのに・・・』
何となく、横が空いているベットが寒いような気がして
シーツに包まりながら、寝ることにした。

「中将! 中将ってば!
 起きろ、起きろってば~!!」
朝から、勇ましいエドワードの声が響いてくる。
そうこうする内に、シーツを剥ぎ取られて揺さぶり起こされる。
「わかった、わかったから。」
昨日の朝と同じシチュエーションなのが、何やら可笑しくて
苦笑を浮かべながら、もそもそと起きる。
「おはよう、鋼の。」
込み上げてくる可笑しさを表情に乗せて挨拶をすると、
そっけなく、「おはよう」とだけ返して、
部屋から出て行く。
・・・なんで、あんな起こし方されてるのに
 あんなに嬉しそうに笑うかな~?・・・
寝起きが悪いクセに、おきっぱなから機嫌の良いロイを
不思議に思いながら、朝食の準備の続きに戻っていく。

「やぁ、美味しそうだね。」
きちんと身なりを整えてやってきたロイに、
早く食事をするようにすすめる。
「けど、鋼の。 
 朝から これだけきっちりとした食事を作るとなると、
 かなり早く起きたんじゃないか?」
「うんにゃ、そうでもない。
 朝作る分は、大して手間がかかるものはないからな。」
自分も、パンを齧りながら答える。
「けど、あんたも自分の目覚ましが鳴ってるんだから、
 わざわざ、俺に起こされる前に起きろよ。」
「なかなか、目覚ましでは起きれなくてね。」
悪びれなく言うロイに、
今まで どうしてたんだろう?と不思議に思う。
「あんた、遅刻常習犯だろう?」
「まさか。
 中佐が許してくれないよ。」
しれっと答えるロイに、
「ふ~ん、じゃあどれ位は遅刻しそうになるんだ?」
「そうだな、まぁ せいぜい2~3日に1回くらいだろ。」
聞いたエドワードは、ホークアイ中佐と迎えに来るハボック少佐の
苦労を思い、同情した。

「で、ハボック少佐は 今日は何時に迎えにくるんだ?」
「あぁ、今日は私が車に乗って帰ってきたから
 迎えはないんだ。
 自分で運転して行くんでね。」
「えっ、中将クラスのあんたが自分で運転して?」
エドワードも、あまり深く軍の事はわからないが、
それが あまり普通でない事はわかる。
「たまには、運転しないと忘れるからね。」
食後のコーヒーを楽しみ終わると、出かける準備をする。

「そうだ、鋼の。
 そろそろ、食料が少なくなっているだろう?
 配達をさせるんで、受け取っておいてくれ。」
「わかった。」
玄関の内側で送り出す。
「じゃぁ、行って来るよ。」
「ああ、いってらっしゃい。」
ロイを送り出すと、キッチンの片づけをし、
数年来ほって置かれているという2階を
掃除すべく準備をする。
ロイにもらった服は高価そうで、とても掃除には使う勇気が無く
エドワードは洗濯を済ました、自分の着てきた服を着る。
階段を上がろうとして、通った跡に足跡がつくのを見て、
『これは、気合を入れないと』と気を引き締める。
上がった2階は、閉め切られていたせいか
空気もにごっているように感じられる。
5つの部屋を開けてみると、拍子抜けしたことに
部屋になっているのは1つだけだった。
1番手前の部屋だけが、家具が置かれ、
後の3つは何もない。
最後の1つは浴室になっていた。
エドワードは、ここを誰が使っていたのかが
おぼろげに解ったような気がした。
気のいい、今はもういない彼のたった一人の友人が
訊ねて来る時の為に用意されていたのだろう。
しばらくの間、昔に思いをはせていたが
忘れようとするかのように、首をブンブンと横に振り、
掃除に取り掛かった。


その頃の軍司令部では、
ホークアイ中佐が、変なものを見たような目で
出勤してきた中将を見ていた。
「中将・・・、
 時間に間に合われたんですね。」
「変な事を言うな?
 君が 昨日、今日は遅れない様にと釘をさして
 いたじゃないか。」
「はぁ、それはそうなんですが・・・。」
けど、まだ始業には早すぎるような時間に
連れて来られる事無く、ロイが出勤してきた事もない。
早くから居るときは、戻らずに泊り込んでいる時だけだ。
「で、いそがせて悪いが、
 本日分の仕事を確認して、会議の始まる前に終わらせれる分は
 終わらせたいんだが。」
いつになくやる気のロイに、戸惑いを隠せないホークアイだが、
自分の疑問はおいておき、頭を切り替え テキパキと
中将に本日の業務の確認をしていく。
いったいどこに切れ目があるのかと言うロイの本日の予定を
上げて行く中で、ようやく
「が、以上の予定と仕事内容です。」と言う言葉が聞けた。

「・・・わかった。
 先に 街からの嘆願書と施策の案件を見る。
 それと一緒に、この前から来ている警備体勢の見直し案と
 昨日の会議で決まった反抗分子の対抗策を指示するので、
 その資料を集めてきてくれ。」
「はい、資料はすでに準備してあります。」
用意したファイルを取りに戻る彼女に、
「さすがだな。いつもすまない。」
「いえ、自分の職務ですから。」
控えめに礼を言い、書類を取りに行ったホークアイ中佐に
感謝の眼差しを向ける。
彼女が言う職務とは、軍の仕事と言うよりは
「いかに、ロイが動きやすくなるか」を考えると言うのを
指している事をロイは、よく解っていた。

ふと、そうだ昨日エドワードに言った事も聞いてみなくてはと
思い出し、書類を持って戻ってきた彼女に
聞いてみる事にする。
「中佐、ここの面々が一斉に動ける日はあるかな?」
「はっ? 任務なら すぐにでも調整しますが?」
ロイの質問の意図がわからずに、そう答えると
「いや、そうではなくて勤務外に
 ここのメンバーを自宅に招待したいんだが。」
「中将の自宅に、皆をですか!?」
「ああそうだ、どうかね?」
いったい何事が・・・と思いながらも
スケジュールを頭の中で素早く確認していく。
「そうですね・・・。
 メンバーだけなら、3日後の夕刻からは時間が合わせれます。
 ただし、その日は中将のみ 夕刻に以前から希望のあった
 隣国の外相との会見がはいっております。
 それ以降になりますと、査察と指導研修が重なり 当分は
 全員が顔を合わすのは難しいかと・・・。」
「私だけが遅れると言うわけか・・・、
 まぁ、いいだろう。
 謁見後の会食は、他の将軍を行かせれば済むしな。
 見張りはつける必要があるが。」
腹黒いお偉方は、気をつけなければ
どんな裏取引がされるかわかったものではない。
そこまで、度胸が有るものは今のところいないが、
不安要素は除いておくに限る。
「わかった。
 では、その3日後の夕刻は 皆に私の家に行っといて
 もらってくれ。
 私も終わり次第帰る事にする。」
「はぁ? 中将が居ないのに家に行っておくのですか?」
ロイの家には、ロイが居ないときには入れないようになっている事を
知っているホークアイは、思わず確認をする。
「あぁ、大丈夫だ。
 中に入れるようにしておくさ。」

その後は、会議の前に一仕事を終わらせ、
軍のメンバーが出勤してきては、
中将の変わりぶりに驚きの目を向けていた。
その日のロイの仕事ぶりには、ホークアイ中佐にも
満点を付けて貰えるだろう勤務態度であった。


あらかたの掃除が終わり、一息つこうとした時に
ちょうど、門のベルが鳴る。
「は~い」と返事をすると、頼まれた届け物をしにきましたという
業者の返事があったので、
今朝 ロイが言っていた食材の配達だろうと練成陣を解いた。
扉を開けて、びっくりしたエドワードに業者は不思議な顔をする。
「あのぉ~、ここはロイ・マスタング様のご自宅でいらっしゃいますよね?」
「は? ええ、そうですが・・・。」
「お荷物をお届けに上がりましたが?」
「あっはい、どうぞ。」
ではと荷物を運び込む業者達の姿に唖然とする。
門の外では、大きなトラックが横付けされ
中から、次々と荷物と言うより、家具が 一体どれだけあるんだ?と
思う位に出てくる。
「では、お2階に上がらせて頂きます。」
「えっ、2階?」
「はい、2階の奥の部屋に置くようにとの指示を頂いてますので。」
業者はかって知ったるで、次々と荷物を運び込んでいく。
ある程度の家具が運び込まれたと思ったら、
次に「お届け物です。」とまた違う業者がやってくる。
今度は、大き目のダンボールを何箱も抱えた身なりの良い者達が
入ってくる。
「この度は、沢山のお買い上げをありがとうございます。
 いつも、マスタング様には ご贔屓頂きまして。
 お届け物はお2階で宜しかったですね。」
「えっ・・・。」
これも、エドワードの困惑をよそに 会釈をして運び込んで行く。
嵐のように皆が去った後、呆然と取り残されているエドワード。
いったい、あいつ何をしたいんだ・・・?と考えていると、
「お待たせしました。
 商品をお届けに来ました。」とやっと、食料の配達がやってきた。
が、これもエドワードには 理解が及ばない品数だった・・・。
高級な箱詰めにされている肉やらハム。
彩りも質も良さそうな新鮮な野菜に、魚。
めったに見ないような食材の瓶詰めやら缶詰。
入っている瓶さえ美しい調味料やオイルに酒。
綺麗にラッピングされたお菓子の数々。
とれたてに違いない艶やかな山盛りのフルーツやら、
何かパーティーでもするのだろうか・・・?と思わずには
いられない食材が、キッチンのテーブルには収まりきらずに
至る所に置かれている。
『と、とにかく片付けないと・・・。』
ロイの家には、一人暮らしにしては大きすぎる冷蔵庫があるので
入れるのには問題はないだろうが、
傷む前に食べれるかは問題だろう。
せっせと、片付けていくエドワードは
ロイの奇怪な行動に首をひねるばかりである。


夕刻もとっぷりとふけて、夜になった頃にロイが帰宅をしてきた。
今日も自分で運転して戻ってきたようで、
車が入って来るのがわかった。
多分、エドワードが家にいる為だろうと思うと
かなり申し訳ない気になってくる。
玄関が開いたのを見計らって、
「お帰り」と迎えに出る。
「やぁ、ただいま。」
「遅かったな。」と労いの言葉をかけると、
「そうかな?
 まだ今日は それほどでもないさ。」と
ロイの忙しさが垣間見える。
「先に風呂に入るか?」
「いや、今日は食事を先にさせてくれると嬉しいな。
 食事を取る暇がなかったんで、お腹が空いててね。」
と疲れのにじむ顔に苦笑を浮かべる。
「朝のあれから?昼も?」
驚いて聞き返すエドワードに
「ああ、そうだが?」と不思議そうに返事を返す。
上着を受け取り、食事の準備をしながら
エドワードは昼に来た業者の事を話す。
「ああ、届いたんだ。
 どうだい、気に入ってくれたかな?」
待ちきれず テーブルの上に置かれている料理を一つ摘んで
口に放り込む。
「うん、上手い。」

「気に入るって言うか、あれをどうしろと?」
ロイに温めたスープを渡してやりながら、
エドワードが困惑を見せる。
「君が居る間、使ってもらう分だが?
 何か足りないような物があったら、遠慮なく言ってくれれば
 すぐ揃えさすよ。」
いただきます。ときちんと挨拶をしながら
料理に手をつける。
エドワードも一緒に食事を取りながら、
「いや、そうじゃなくて 
 俺も まだ家政夫して住み込みを決めたわけでもないし、
 勿体無いだろ?」
「あぁ、別に君が気にする事はない。
 居る間に不自由がなければと思って揃えただけで、
 物で釣ろうと思ってるわけじゃない。」
せっかくの好意に難癖を付けるには、ロイは疲れすぎている。
忙しい中を あれだけの手配をするのも大変だっただろう・・・。
納得はできないのだが、ロイが純然たる好意でしてくれた事には
きちんと感謝の気持ちを伝えるべきだろうと、
エドワードはロイに礼を言う。
「あのぉ・・・、ありがとうな。
 俺、居る間は大切に使わせてもらうよ。」
「いいや、君が喜んでくれるだけで十分さ。」
にっこりと微笑むロイを見ると、素直に礼を伝えて良かったんだと
思えた。

「あっ、でも食料は多すぎないか?
 あれ、全部食べるのには無理があるぜ。」
「あぁ、それなんだが、
 3日後の夕刻に 軍のメンバーを自宅に招待したんだ。
 私は 少し、帰るのが遅れるんで
 先に皆と楽しんでいてくれ。
 その時にでも、食べさせてやればいいさ。」
「え、皆が来るのか?
 そうか、なら 大丈夫だな。」
 軍のメンバーが大喰らいの大酒飲みなのは
エドワードも知っている。
「料理は手伝ってやれなくて申し訳ないが、
 まぁ、適当な物で構わないから。」
綺麗に食べ終えた食器を片付け、
リビングに席を移したロイに、コーヒーを淹れてやる。
「なぁ、俺 あんたが帰る頃は電気とか消しておくぜ?」
「鋼の?」
「だって、俺がいるから 送迎させれないんだろ?」
申し訳なさそうにロイを見るエドワードに、
『この子は、聡過ぎるな。』と
エドワードを安心させるように返事を返してやる。

「それは全く気にする必要はないよ。
 別にハボック達に知られるのが嫌なわけじゃない。
 ただ、出来れば皆を驚かせるなら思いっきりと思ってね。

 想像してみろ、あのメンバーに泡を吹かせるなんて、
 そうそうにないぞ。」
 人の悪そうな笑みを乗せ、エドワードに誘いかける。
 エドワードも、ロイの気持ちを察して
 「そうだな、皆 ビックリするだろうな~。」と
 ロイに思惑に便乗するようにする事にした。

ロイがエドワードの為に整えた部屋は、
2階では1番広く、バルコニーも着いた日当たりも良い
部屋だ。
初日は 恐る恐るベットに寝てみたエドワードだが、
さすが一流の品だけあって、しっくりと身体になじむ。
部屋には その他にも、この時期を考えた通気性の良い
カーペットやカーテン、エドワードなら一杯にするだろう
大きな本棚に机。
自分がすっぽりと入れそうなクローゼットの中には
ロイが買い揃えた衣服類が、所狭しと並んでいる。
入り口のシューズBOXにも、履き心地が抜群の靴が
綺麗に並べられている。
その他にも
アンティックのランプに小物だな、
中央にはローテーブルと二人がけ程度の大きさのソファーまで
用意されている。
「至れり尽くせりだな・・・。」部屋を見回して
はぁ~と思わずため息をつく。
中将で、国家錬金術師のロイは
どうやら、少し・・・いや非常に、金銭感覚が一般とは
ずれているらしい。
ここに居る事を断っても、彼なら気にもしないのだろう。

「どうすっかな~。」
ロイの提案は、エドワードにとっては願ったり叶ったりな
好条件だ。
それにも関わらずに「是」と言えないのは、
ロイの応対が優しすぎて、大きすぎるからだろう。
ここにいる限り、エドワードはロイに どんどんと返せない
借りを作る事になる。
ロイは 全く気にしないだろうが、
エドワードとしては、これ以上してもらう
ここにいる自分の価値が見出せない。
優しくされるだけ、はいとは言えない思いを抱える事になっていく。

そんなこんなで、軍のメンバーがやってくる日がきた。
事前からエドワードは料理の下ごしらえ等を進めて、
準備万端にして楽しみにしていた。
ロイは、自分が言い出した事なのに、
そうやって、他の事で嬉しそうにしているエドワードを見ると
何となく、自分が蔑ろにされたようで面白くない。
決して、エドワードが 手を抜いた等と言うことではないのだが。

「では、行って来るんで、後のことは宜しく頼む。」
「あぁ、任せておけ。」笑顔で返事を返すエドワードを見て、
何となく気分が乗らなくなる。
「あんたも、出来るだけ早めに帰ってこいよ。
 皆で待ってるからな。」
にっこりとロイに話しかけるエドワードの言葉に、
落ちていた気分が浮上し、
「ああ、出来るだけ早めに戻るようにするよ。」と
今度は心からの笑顔で返事を返す。
「あぁ、でも無茶はするなよ?」とロイの行動を読んでいる
エドワードから釘をさされる。
「もちろん。」と余りあてには出来ない返事を返しながら
意気揚々と出勤して行くロイの後姿を見送る。


「では、中将。
 私たちは お先に行かせて頂きます。」
代表にホークアイ中佐が声をかけてくる。
「あぁ、家に着いたら 門のベルを鳴らしてくれればいいから。」
この後、まだ残らなくてはならないロイは不満顔だが
招待した部下に文句を言えるわけでもなく、
しぶしぶ送り出すことにする。
「んじゃ~、先に行ってます。」
「大佐、お先に失礼します。」
「お待ちしております。」と口々に言いながら出て行く面々を
見ながら、今後の謁見が面白いものでないだけあって
出て行ったメンバーをうらやましく思った。

『まぁ、エドワードの事だから
 後のことは心配ないだろうが・・・。』
はぁ~とため息をつきながら、待つ時間を持て余して考えに浸る。

エドワードからは、家政夫の件での返事も、話に触れる事もない。
何度か、ロイから聞こうかと思ったが、
断られてエドワードが去る事も考えると、
少しでも引き伸ばしたくて、なかなか聞けずにいる。
エドワードからは、なんとなく断る雰囲気があるので
さらに、ロイの憂鬱に拍車をかける。
どうしたものかな・・・。


「本当に大丈夫なんでしょうね?」
『中将が そうおっしゃるんだから、間違いはないと思うわ。」
「けど、足を踏み入れたらボンなんて事になったら・・・。」
それを想像するだけで、ブルブルと体が震える。
「とにかく、ベルを鳴らしてみます。」
冷静なファルマンが ベルを押すと・・・。
『は~い、待ってたぜ~。』と嬉しそうな声がインターフォンから
流れ出してくる。
一瞬、その場の皆が その声を思案するが、
その後 一斉に
「「「 エドワード!!」」」
と叫ぶことになった。

「あははは、ごめんごめん、驚かせて~。」
リビングを即席のパーティー会場に改造したエドワードが
皆に飲み物を振舞って廻る。
「お前な~、戻ってきてるなら、戻ってきてるといえ~!」
頭を抱えられグリグリとやられても、エドワードは嬉しそうに
笑っている。
「痛い、痛いってハボック少尉・・・と少佐~。」
「エドワード君、本当よ。
 誰の差し金かはわかるけど、どれだけ心配していたか。」
ホークアイは、玄関でエドワードの姿を見つけると
泣き笑いの顔を浮かべて、エドワードを抱きしめてくれた。
「ごめん、中佐だよね今は。
 本当は、もっと早く連絡だけでもしたかったんだけど・・・。」
「わかってるは、軍には来にくいでしょし、
 これを言い出したのが誰かも解ってるから、
 叱るのは そちらにするんで。」
 にっこりと笑うホークアイ中佐の顔に、一同がシーンと静まり返り、
 その後の上司に同情した。

 「大将、戻れたんだな・・・。」
 「・・・うん。」
 しみじみと皆に見られて、身の置き所に困るエドワードが
 俯いて返事をする。
「良かった・・・、本当に良かったな。」
「うん・・・、ありがとう。
 皆にはお世話になりっぱなしで、迷惑も一杯かけて・・・。」
「いいんですよ、エドワードさん。
 僕達は 全然迷惑なんて感じてませんから。」
 感極まって涙目になっているフュリー。
「それで、あの・・・」と聞きにくそうに言葉を止める彼に
「あぁ、もちろんアルも元に戻ったぜ!
 今は、師匠の所に居候してるけど。」と聞き出せない事を察して
 元気に返事をする。
「・・・良かった~。」その場の全員が同じ思いを抱いていた。
こうやってエドワードが元気にしていると言うことは、
アルフォンスが無事だろう事は察せられる。
エドワードなら、自分ひとりが戻って許すはずがないだろうから。

その後は、居ない間のアメトリスの事やロイのケガの事。
皆の近況や、エドワード達の話と 延々と話が尽きない。
エドワードの今後の事も、ロイから言い出してくれているが
どうしようかと考えている事も話していく。
いい加減、酒ばかり飲んでいては身体に良くないだろうからと、
本当はロイが帰るのを待つつもりだったが、
料理を出す準備を始めた。

皆には座っていてくれるように言って、
エドワードはキッチンで準備始めた。
「大将~、氷くれっかー。」
「ハボック少・・佐、ペース速すぎだぜー。」
「ば~か、これが飲まずにいられるか~!」
氷を入れて渡してやると、すぐに戻るかと思ったが
ストンとキッチンの椅子に腰をかける。
「大将、本当に良かったよな~。」
「・・・うん、ありがとう。」
ハボック達が、自分の事のように喜んでくれているのが
痛いほど解るから、エドワードにとっても嬉しくて仕方がない。
「それに、中将にも 本当に良かったよ~。」
盛り付けていた料理の手を止めて、エドワードが
ハボックを振り返る。
「なんで、中将にも良かったんだ?」
「だって、あの人。
 この前、多分 お前さんが帰ってきた日だと思うんだけど
 俺が迎えに行ったら、ひどく機嫌が良くてさ。
 俺が、『何かいい事があったんっすか?』て聞くとな、
 それはもう、幸せそうな顔して
 『あったよ、とてもいい事が』っていうんだぜ~。
 俺、中将のあんな顔、見るの本当に久しぶりだった。

 あの人も、変な所で素直じゃなかったから
 昔は結構、お前にきつかった事もあったろうけど、
 ずっーとお前らの事は気にしてたんだぜ。
 よっぽど、嬉しかったんだろうな~。」
しみじみと言うハボックの言葉に、エドワードも
思うところがあった。

「だからさ、お前が ここに残るのは
 俺らの希望からとしては賛成だね。
 まぁ、軍を抜けるお前が お偉いさんの家に居るのは
 本当は あんまいいことじゃーないだろうけど、
 でも、今のあの人には 一人でも信頼できる人間を
 傍に置く事は必要だ。
 俺らも、軍に居る間は出来るだけ守るけど、
 私生活まで付きっ切りってわけには行かないだろ?

 いくら、中将が万全を尽くしているっても
 やっぱり、生身の人間だ。
 もしかしたらな事も考えられる。
 
 あの人には、まだ今は敵が多すぎる・・・。」

しみじみとつぶやかれた最後の言葉は、
エドワードの心の中に すんなり入ってきた。
「サンキュー、少佐。」
「へぇ?」
礼を言われた意味が解らず ぼけっとするハボックを
よそに、
「さ~て! 料理出すぞ~。」とリビングのメンバーに
 声をかける。
「待ってました~」と大喜びをする皆の声を聞きながら、
次々と 腕によりをかけた料理を皆に披露していく。


「だから、何度もお話したとうり
 即日の返事は出来かねます。
 
 事が事だけあって、互いに慎重に談義を重ねるべきだと
 思いますが。」
ロイは、物分りの悪い隣国の外相に
先ほどから何度も同じ説明をさせられている。
もう、いい加減にして欲しい!と怒鳴り返しそうになるのを
幾度も我慢して、最後通告をする。

「フォンベルト外相。 
 貴方の言い分は よく解ります。
 が、私も公僕の身。
 勝手な判断を出来る事も、発言する事も憚られます。
 私が ここでお伝えできる事は、
 今日お話いただいた内容を、きっちりと
 軍に伝える努力をするという事だけです。

 そして、このアメトリスでは その道に外れる者は
 去る運命にあるという事は、どの将軍にも
 よ~く理解されている事柄と思っておりますので、
 ご自愛いただけますよう心から願います。」

 他に粉をかけるなら、お前にも被害が及ぶぞと
 言外に告げ、ロイは会見を終了した。

 「車は!」
 「は、はい。
  入り口に待たせてあります。」
 「リーマン隊長。」
 「はっ。」
 「付き人は?」
 「大丈夫です。 すでに各所万全に待っております。」
 「わかった、怪しい行動や、動きがあれば
  報告を上げてくるように。」
 「はい!」
 余計な手間をかけさせられない為に、
 ロイは 外相達が動きそうな場所に合う人物を
 あちらこちらに置いてある。
 火のない所に煙はたたないからな・・・。

 「さて、急ぎで自宅に戻ってくれ。」
 ロイは、思ったより時間が過ぎている事を気にしながら
 車を急かせる。
 待ってくれいるだろう、彼を思って。

「本当に、これ全部 お前が作ったのか~!」
「あぁ、腕によりをかけたから
 心して食えよ。」
「頂きます!エドワードさん。」
「坊主、見直したぜ。」
エドワードの披露してくれた料理の数々は、
ロイが褒めるだけ合って見事なもので、
しかも、酒も食材も一級品を使っているとあって
贅沢に慣れない軍のメンバーにとっては、
信じられない幸運である。

皆が大喜びで食べている最中、
「エドワード君?」
「中将が帰ってきたようだ。
 迎えに行って来るから、皆は食べててくれよ。」

料理に夢中で、車の音には気がつかなかった
恥ずかしい面々は、取りあえず、今は目の前の
ご馳走に集中する事に決めたようだ。

「お帰り、お疲れさん。」
扉を開ける前に内側から、エドワードが顔を出した。
「鋼の・・・、ただいま。」
ずいぶんと遅くなったから、宴もたけなわで誰も気づかないだろうと
思っていただけあって、
エドワードが こうして迎えに来てくれた事が嬉しかった。
「皆は?」
「うん、今 料理だしたらから食べてもらってる。」
「今? ずいぶん遅かったんだな。」
準備は昨日で済ませていたようだが?と首をひねると
「あんたが、戻るのをまってもらってたんだよ。
 あんまり遅いから、もう食べ始めたけど。」
 エドワードが、自然にロイを中心に考えてくれていた事が
わかると、自然と心が温かくなり ロイを喜ばせた。
「それは済まない事をしたね。
 私の分は残っているかな?」
「ない!と言いたいところだけど、
 ちゃんと、あんたの分はよけてあるよ。」
連れ立ってリビングに入ると、テーブルに乗りかかるようにして
食べているメンバーを見て、
自分の分を避けておいてくれたエドワードに感謝した。
「あっ、中将、お先に頂いてま~す!」
「お疲れ様でした。」
「モグモグ・・・。」
ロイに挨拶はするが、誰も料理を食べるのを止めようとはしない。

「ほら、あんたも こっちに座れよ。」
 エドワードが 席も用意してくれていたようで、
 自分も その横に座り手招きする。
「あぁ、ありがとう。」
座ったロイに、冷やしたワインを渡してやる。
「んじゃ、お疲れ様でした~!」とエドワードが
声をかけると、皆も「お疲れ~!」
「おめでとう~!」「よくやった!」等など色々な
祝辞が雨あられのようにエドワードに降り注いだ。
エドワードは、驚いたような顔をして、
その後、大輪の華が咲いたように微笑んだ。
その笑顔に その場に居た者は皆魅せられたように
呆然としている。
「えっ!?
 何だよ? 何か俺、変な事したか?」
自分の事には 全く無頓着な彼は、今の自分の笑顔が
どれだけ、皆を惹きつけたかは解っていない。

「いや、別に君は 全く変な事はない。
 ただ、皆が君の良さに再度気がつかされたと言う事だ。」
そう説明するロイのセリフに、さらに意味が解らず
困惑顔なエドワード。

「中将~、うらやましっすー。
 こんだけ料理上手で、気が良くついて
 別嬪な家政夫なら、俺も欲しいっすよ~!」
「本当。
 家政夫じゃなくて、お婿に欲しいわ。」
ホークアイの言葉に、思わず真実が含まれているような気がして、
思わず冷やりとした男性陣である。
特にロイは、危機をひしひしと感じる言葉だった。

その後、酔いすぎて エドワードに
「家政夫に来てくれ~」と抱きつこうとするハボックを
そんな事は年収が1千万センズを超えてからにしろと
ロイにすげなく撃退されたり、
何かとエドワードと二人になろうと話しかける輩を
排除してと、「「上司、横暴~!」」のブーイングが
上がるのを蹴散らし、唯一蹴散らすなど出来なかった
ホークアイ中佐を右に、ロイは左をとエドワードの横に陣取って
夜は どんどんと深けていく。


「じゃぁ、何か足りないものとかあれば、
 奥の部屋だからいつでも、言ってくれよな。
 水は、ベットの横に置いてるから。
 シャワーも24時間使えるからな。」
エドワードは、少々酔いが回っているようなホークアイ中佐に
姉のように接する。
「えぇ・・、ありがとう。
 オヤスミナサイ・・・。」
大丈夫かな?とは思ったが、部屋まで案内もしたから
後は大丈夫だろう。
本当は、エドワードの部屋の方が 色々と揃っているし、
部屋自体も良いので、最初は そこに寝かせようかと思ったのだが、
ロイが 渋るので、手前の部屋に寝かせる事にした。
後の男性陣など、リビングでゴロ寝でほって置かれたままだ。

戸締りだけ、再度確認しようと下に降りて行くと
憮然と立っているロイの姿が目に入った。
「どうしたんだよ?」
降りながら、皆を起こさないように小さめな声で聞くと、
「君は、中佐に優しすぎるんじゃないか?」と
わけもわからぬ難癖を付けられる。
「なんだよ?
 女性に優しくするのは、あんたの専売特許だったろ。

 それに・・・」
「それに・・・?」
「ホークアイ中佐は、俺らにとっては
 姉さんみたいな感じだしな。」
少し照れながら、エドワードが打ち明ける。
「姉・・・?
 そうか、それもそうだな 君らにとっては姉に違いない!」
ホークアイ中佐に聞かれたら、その嬉々とした声は
銃を抜かれても仕方ないような揶揄が入っている。

「中将?」
急に機嫌が良くなったロイに、変な事で喜ぶんだな?と
思いながらも、ロイに声をかける。
「いいかげん。あんたも寝ろよ。
 明日は 休みじゃ~ないんだから。」
「・・・そうだな、寝るか。」
嫌なことを思い出したという顔つきで
観念してロイも寝室に向かおうとする。
「あっ、中将。
 俺 明日からアルの所に行って来るから」
後ろから呼びかけるエドワードの
言葉にギクリとする。
今日で終わりなんだろうか・・・。
やはり、彼は去ってしまうのか・・・。
言葉では言い表せない思いが、心をよぎっていく。
「家政夫引き受けるのも、伝えなくちゃー行けないしな。」
と続いて言われた言葉に、思わずエドワードを振り返る。

「引き受ける?」
「そうだよ、何 やっぱり迷惑?」
「いや、嫌! もちろん、そんな事はない。
 すごく嬉しいよ。」
「って言うことで、宜しくお願いします。」
礼儀正しく挨拶をするエドワードに、
思わずロイも姿勢を正し、宜しくお願いされます。と
変な返事を返し、エドワードに笑われた。

「それと、俺は国家錬金術師は辞めない。
 そんで、そこの所はあんたに上手くごまかして欲しい。」
きっぱりと言い切る、エドワードに
「何故?」と聞き返す。
「その答えは、またいつか話す。」とエドワードが言い終える。
彼が言い切った限りには、決して聞き出せない事も
ロイには解っている。
「解った、引き受ける。」としぶしぶと返事をする。
「それと、」と言いかけるエドワードに
まだあるのか?と言う顔を向けるロイに
「今後、俺への買い物は 俺が欲しいと言った物だけに
 してもらう。」
へっ?と言う顔をするロイに、
「あんた、俺に金を使いすぎる。
 俺も、欲しいときにはお願いするから
 それまでは、買わないでくれ。」
まさか、そんな事を要求されるとは思わなかったロイは
不思議な生き物を見るようにエドワードを見る。
今まで、知り合ってきた人の中で
逆は言われた事があっても、エドワードが言うような事を
言った人間を見た事がない。

彼は 全く、他の人間とは違う。
価値観、想い、存在の仕方、全てが 他の人間とは
大きくかけ離れている。
可笑しくなって、ロイは調子に乗って聞いてみる。
「じゃぁ、誕生日とかの記念日は?」
「・・・うっ、そおいう時は まぁ許す。
 但し、あんまり高価な物はダメ。」
「実用的な物は?」
「まぁ、家で使うものとかは良いと思う。
 けど、二人が使うってのが原則で
 俺専用はダメ。」
「どうしても、上げたいものが出来たら?」
「それは・・・、取りあえず聞いてくれ!。」
エドワードも、そろそろ ロイが楽しんでいる事をわかって、
「もう、お終い!」と話を打ち切ってきた。
「解った、善処する。
 で、私からも1つ。」
なんだ?と聞こうとするエドワードに
「プライベートでは、名前で呼び合うようにしよう。
 私も家に戻ってまで、階級で呼ばれるのは
 ご免こうむりたい。」
「・・・名前って?」
「君はエドワードだし、私はロイだが?」
「・・・む、無理。
 名前でなんか呼べない・・・。」
今まで 階級で呼んできたのだ。
いきなり、ファーストネームで呼ぶには抵抗がある。
「そうか・・・、それなら私も君の約束を
 守る必要はないな。」
早速、明日にでも店を覗きに・・・と不穏な言葉を吐く男に
「わかった! わかったよ!
 呼べば良いんだろう、名前で!。」
ぜいぜいと息が上がるのを整えながら、ロイを見る。
「ろ・・・・、ぃ・・・。」
「良く聞こえなかったんだが?」
くそっ~と相手を睨み付け
「ロイ!」 
どうだこれで良いんだろうと胸をはるエドワードに、
「エドワード、なんだい?」と
蕩けそうな笑顔を見せる。
「ロイ、お休み!」と ここは逃げるが勝ちとばかりに
言い捨てて駆け上って行くエドワードを
「お休み、エドワード。」と微笑みながら見つめていた。


[ あとがき ]
 
長くなった~。( ̄□ ̄;)
ちかれました・・・。
取りあえず、書きたいとこまではと粘った結果ですが、
終わった今は、素直に半分にしとけば良かった・・・と。
読む方も大変だと思います。
すんません、お許しくださいね~。


© Rakuten Group, Inc.