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Selfishly

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Pa22 「それぞれの想いの行方 act、1 」


Pa 22 「 それぞれの想いの行方 act、1 」



H18,5/7 21:00

「スプリング・フェス?」

がやがやと賑わいをみせている、大学内のカフェで
エドワード達4人は、授業の空きの時間を潰していた。

「そっ、掲示板とか校内に張り出しが出てたろう?」

デイビットが、カフェ内にも張り出されているポスターを
指して言う。

「ああ・・・、そう言えば 最近よく目にするな、
 あのポスター。」

エドワードは、興味の無い事には余り深く追求するタイプでは
ないので、見てたとしても 内容までは詳しく見ていなかった。

「よく目にするな・・・って、
 最近の話題は、フェスの事でもちきりだっただろうが。」

デイビットは、少々 あきれたように返事を返す。

「そ、そうだったけ?」

そうだっただろうか?と首を傾げて考える素振りをし、
困惑を示すエドワードに、さりげなく横から助けを出す。

「ディ、もちきりだったのは君だろ?」

正確と同様に、温和な話し方をするアルバートが
勇み足のデイビットをたしなめ、話を続ける。

「エド、僕とディが最近
 バタバタしていたのは、実は このフェスのせいなんだ。」

そうなんだとうなずくエドワードに、
デイビットは そうだと胸をはる。

「実は、僕とディが このフェスの実行委員をしててね。
 それで、最近 忙しかったってわけ。」

「お前、冷たいよぉ~!
 友達が 何やってるか、ちっとは興味持ってくれたって
 いいだろうー。」

そう、嘆くようにデイビットに言われると、
返す言葉もなく、エドワードは恐縮してしまう。

『確かに、ちょっと冷たすぎるかも・・・。』
心の中で、そう反省をしながら二人を謝罪する。

「ごめん・・・。
 俺、全然 気づかなくて・・・。」

素直に謝る姿勢のエドワードに気を良くしたデイビットが
それでな、と話を続けてくる。

「お前と、レイにも ぜひ参加して欲しいんだよ!」



デイビットは 面倒見の良い顔の広い青年で、
そこを見込まれて、今回の実行委員長に抜擢された。
こまかな配慮は、補佐としてアルバートが行い
後は、各学部から選抜で選ばれた者で、実行委員会が組まれている。

エドワードとレイモンドに勢い込んで、
参加を要請したデイビットの横で、アルバートが事の顛末を話し始めてくれる。

スプリング・フェスは、入学1年目の学生を対象に行われる恒例行事だ。
大学が保有地として持つ、セントラルの郊外のキャンプ地で行われるのだが、
偏差値の高い この大学では、成績を維持するのも大変だし、
入学時点ででの年齢層が高い事も要因の1つなのか、
毎年、参加者を集めるのに苦労をして
あれこれとイベントを催して、参加者をかき集めるのが
委員会の1番の仕事なのだ。

まぁ、1番の要因は 
エリートで進んできた学生達が
今更、キャンプを張ってアウトドアをしたいと思わないからだろうが。

フェスの成果は、委員に選ばれた者の 今後の大学生活の評価に
大きく左右し、特にデイビットのように 卒業後に民間の企業に
入るのが希望の者には、就職の際に有利に進めてもらえる。

そこで、今回の目玉イベントは
注目を集めているエドワードと、女性に人気の高いレイモンドが参加する!
と言う、エドワードにしては 何が特典なのか 今ひとつ解らない企画が
デイビットの打ち出した案なのだ。

レイモンドとエドワードが仲良くなり始めの頃は、
余り良い顔をしなかったデイビットだったが、
噂とは違い、エドワードと真面目に研究を続ける姿や、
女性との関係も、きちんと節度を守って接している態度、
そして、澄ましているのではなく 
余り軽々しく物事に口を挟まない性分なのを知ると、
最初の印象を変えていき、今では 4人で集まる事が多くなっていった。

「レイはわかるけど、俺が参加しても
 別に特典でも何でもないんじゃないか?」

素直に自分の考えを口に出して聞いてみるエドワードは、
自分の事には、とんと無関心だ。

「い~や! すごい特典だ!
 参加者急増間違いなし!」

自信満々に言い切るデイビットに疑わしそうな目を向け、
横に座るアルバートに目を移す。
アルバートも、同様の意見らしく にこやかに頷いている。

「で、参加してくれるんだろうな!?」

半分 脅しのように言い切られるが、
エドワードは、悩みながらも 控えめに断りの言葉を告げる。

「う~ん、ゴメン・・・、俺 ロイの世話とかあるしさ・・。」

エドワードの断りに、デイビットは 大ショックな顔をし、
期待の眼差しで、レイモンドを見る。

「俺は、エドワードが参加するならしてもいいが。」

落ち着いて自分の意見を告げる。
レイモンドは、余分な言葉を告げない話し方をするので、
つまりは、エドワードが参加しないなら、
自分もしないと言外に伝えてくる。

二人の返答に、大げさに肩を下げてガックリするデイビットを見ていると
エドワードも、申し訳ないような気がしてくる。

「ディ、無理を言って困らせるのはダメだよ。
 二人には、二人の都合もあるんだし・・・。
 仕方ないから、他の企画を考えようよ。」

アルバートも、気落ちしているデイビットを慰めているが、
残念に思っているのは同様な様子を見せる。

「えっ・・・と、俺は ロイの面倒をみなくちゃいけないから
 無理だけど、レイは言ってこいよ。
 せっかくのお誘いなんだからさ。」

エドワードが、せめてレイモンドだけでも参加出来ないかと
告げるが、レイモンドは 笑って首を横に振る。

それを見たデイビットは、大げさに崩れ落ちんばかりに嘆き、
アルバートが 横から慰める。

「ああ~! 俺の未来設計が~!
 フェスを成功させて、良い企業に就職したら
 田舎で 苦労しながら、俺を大学にやってくれたお袋を
 楽にさせてやろうと思っていたのに~!

 下には、まだまだ小さい兄弟もいるから、
 俺が しっかり稼いでやらなくちゃダメなのに~。」

さめざめと泣くデイビットの横から、アルバートも
うっすらと涙を浮かべながら、デイビットを慰める。

「そうだよね・・・、君は長男で
 これからが大変な兄弟も多いし・・・。
 このフェスの成功が、将来の足がかりになるって
 喜んでたんだもの・・・辛いね。」

そんな二人のやりとりを、エドワードは罪悪感に襲われながら
聞いていた。

もともと、情に弱いエドワードが 妥協をするのには
そんなに時間はかからない。

「えっ・・・と、俺が参加するのが
 そんなに大切なのか?」

躊躇いがちに話すエドワードに、ディビットとアルバートは
首を ブンブンと振って返事を返す。
横のレイモンドを見ると、苦笑しながらエドワードに頷いている。

「わかった・・・。
 絶対に参加できるかは返事出来ないけど、
 ロイに相談してみるよ。」

エドワードが そう言うと、今まで泣き崩れていたデイビットが
カバッと顔を上げ、「頼む!」と縋るような目でエドワードに嘆願する。


マスタング氏には、俺達からもお願いするからと
家に付いてきそうな勢いの二人に
自分で話すと諭して、思いとどまってもらった。
いくらなんでも この歳で、友達に外泊の説明をしてもら、
保護者の許可を取るような事は恥ずかしかったからだ。


その夜、彼にしては やや早い位の時間に帰ってきたロイに
フェスの話を、今日の事の顛末を付けて話をする。

「なるほど・・・、泣き落としされてきたわけだ。」

その情景を思い浮かべているのだろう、
ロイは クスクスと笑いながら言う。

「いや・・・だって、なんか悪いだろ。
 俺、あいつらが そんなに頑張ってるなんて
 ちっとも気づかなくてさ。

 友達として、ちょっと それはどうかなって反省したんだ。」

そこが、つけこまれるエドワードの弱いところであり、
優しい面でもある。

「そうだな・・・。
 確かに、学校は 勉強をする為だけの場所ではないから、
 交友関係を大切にする事も必要だろう。」

そう渋い顔で、ロイが肯定するが
間違っても 歓迎しているようには見えない。

『ダメかな・・・。』とロイの表情を見て
エドワードが考えていると、
ロイが あきらめたように許可をする。

「まぁ、3日間の事なんだから
 友人に協力をする為にも 参加してあげてはどうかな?」

そう、ロイが面白くなさそうに許可を出す。

「えっ・・・、でも 困るようなら
 俺、参加しなくてもいいぜ?」

エドワードが、自分の態度のせいで困惑をしているのをみて、
ロイは 大人気ない自分を反省し、
明るく振舞う振りをしながら、安心するように返事を返してやる。

「いや、私の事は気にしなくていい。
 君が来てくれてから、休みと言うものを取ってもらった
 覚えも無くて、逆に申し訳ない位だ。

 この機会に、ゆっくりと楽しんできなさい。」

そう、微笑んでつげてやると
エドワードは、じっとロイを見つめて
躊躇いがちに 礼を告げてくる。

「うん・・・、ごめんな。
 留守の間、ロイが困らないようにしていくからな。」

そう告げる律儀なエドワードに、ロイは苦笑しながら返事をしてやる。

「そこまで気にかけてくれなくても、
 3日間位、自分の事は自分でできるよ。
 君は、そんな事を気にしないで
 自分の用意をしなさい。」


以前とは違う。
前にエドワードが この家を離れたときは
アルフォンスに許可をもらえなければ
戻って来ないのではという不安があったが、
今回は 同じセントラルに居るし、
エドワードは ただ出かけるだけなのが解っている。
だから、エドワードが心配するような 生活放棄までは
しないで・・・済むはずだ。

気になる事があるとすれば・・・。

「では、レイモンド君も参加するわけだね。」

「うん、俺が参加するなら 行くって言ってたからな。
 あいつだけでも参加してくれれば、俺が 行かなくても
 よかったのになぁー。」

ロイが心配しているレイモンドとエドワードの仲は
今は 仲良い友人のままで続けられている。
ロイとしては、気になるところだが エドワードが大切にしている友人に
文句をつけるわけにもいかない。
あの青年が、このままで終わらせる事は期待できないが
今回は 他にも大勢参加する事になるし、
二人がイベントの目玉企画なら、
さほど 心配する状況にもならないだろう。
そう思うことで、ロイは 湧き上がる不快感を圧し留める事にした。



フェスの初日当日、キャンプ日和の良い天気に恵まれ
大学始まっていたいの参加者で、賑わっていた。
今回は、あまりの参加希望者多数のため
厳選な抽選によって、参加者が絞られた程だ。
おかげで、委員長の面目躍如のディビットはすこぶる上機嫌であった。

「エドー、こっちも頼む!」

「わかった、もうちょっとなんで待っててくれー。」

いざ、テントを張ると言っても セントラルの都会育ちの学生達では
何から手をつけてよいのかわからずに、
ウロウロ、オロオロしているばかりで ほっておくと夕刻になっても
寝床を確保できそうになかった。
自分達のテントを早々に張り終えたエドワードと、レイモンドは
あちらこちらから声がかかり、その手伝いに追われていた。
手伝いは 主に女性に声をかけられる事が多いレイモンドが女性陣を
この機会に仲良くなりたいと思っていた男性達が エドワードに声をかけるので
エドワードが男性陣を指揮して組み立てさせている。
、女性達も男性達も組み立てる手伝いをしながらも
 しごく嬉しそうしているのを、
監督として見回っているデイビットとアルバートは満足そうに眺めていた。

「アル、やったな!
 この企画は大成功だぜ。」

にこにこと上機嫌に見回すデイビットがアルバートに声をかける。

「そうだね。
 やっぱり、少々 無理をしてもらってでも
 二人に参加してもらって正解だったね。」

アルバートも嬉しそうに そう告げると、
その後、申し訳なさそうな表情になる。

「でも、僕は少々後ろめたい気持ちだけど・・・。」

「いいの!
 結果良ければ、全てよし!
 皆も幸せ、エド達も 新しい友人・・・くっ、彼女にも
 出会えるチャンスなんだからな。」

この機会に、レイモンドのお株が上がり、
またしても、女性の人気が上がるのは辛いが、
先々を考えると、大事の前の小事だと開き直るしかない。

デイビットの実家は、地方都市ではあるが なかなか裕福な家庭で
両親とも健在して、別に 下にいる兄弟の心配など
彼がする必要もない。
まぁ、友人の事を知ろうとしなかったエドワードが
余りにも友達甲斐がなかったのが悪いのだ。
これも、勉強だとデイビットは 自分に納得をさせていく。

アルバートも、全面的に賛成はしないが
これで、エドワード達が もう少し 周囲にいる人間に
興味を持ってくれるようになればと、苦笑して頷いている。



「つ・つかれた~!」
自分達用に用意したテントに転がり込んで、
エドワードはばったりと地面に倒れふした。

「お疲れ様。」

そんなエドワード以上にハードだっただろうレイモンドは
さして疲れもみせていない。

ここは、エドワードとレイモンド専用のテントになっている。
本来は 4名で1組なのだが、レイモンドが参加する条件として
2人に1組のテントを使わせるようにさせたのだ。

確かに、この二人と同じテントを希望する人間の数を考えると
無用な争いを避けさせる為にも 適切な判断だと
デイビット達も賛成をした。

寝転がるエドワードの髪を レイモンドが労を労うように撫でてやる。

それを感じて、エドワードが クスッと思い出し笑いをするのに
レイモンドが、不思議そうに問いかける目を向ける。

「う~ん、なんて言うか、
 レイが撫でるのって、ロイが同じようにする時と似てるなぁって
 思っちゃってさ。」

「そうか。
 君とマスタング氏の付き合いは 長いんだな。」

聞いてくると言うよりは、確認してくるように言うレイモンドに
エドワードは 頷いてみせる。

「ああ、俺が12歳の時からの付き合いだから
 かれこれ、5年以上になるかな?」

その短いとも、長すぎるとも言えない時を思い出しているのか、
エドワードは、綺麗な金の瞳に優しい色を浮かべている。

「一緒に住むようになって、長いのか?」

「う~ん、夏で1年になるから
 まぁ、そこそこ。」

エドワードが、そう言いながら よいしょっと起き上がって
座ったため、レイモンドが撫でていた手ははずれてしまった。
レイモンドは、触れ足りない髪を 名残惜しそうに見る。

エドワードの髪は、本当に綺麗だと思う。
日の光の中では、まるで後輪のように輝き眩しい位だ。
そして、夜の人工の明かりの中では、
艶めいた陰影を生み出し、思わず触れたくなる。
彼の保護者のマスタング氏も 多分、自分と同様の事を
思ってきたのだろう。

そして、あれほどエドワードに執着を見せる彼が、
何故、エドワードに対して
何の進展を見せるような行動をしていないのかも
エドワードと付き合いだしたレイモンドには
わかる気がするようになってきていた。

エドワードと友人として付き合うようになって、
ますます 彼の事を気にいる自分に気づくと、
この関係を潰してまで、無理やりに関係を進展させたいとは
思えない・・・いや、失う事が怖いと思うようになってくる。
エドワードが 寄せてくれる信頼が、
最初から100%自分自身に向けられていたのだとは
おめでたくないレイモンドにはわかっていた。

エドワードが言うように、マスタング氏と自分は
どうやら 同じタイプの人間のようだ。
エドワードの言い分でいうなら、口調や、態度、
考え方までもが似ているのだろう。
最初から、エドワードが自分に好意的だったのも、
警戒心が薄かったのも、多分 それが大きな要因なのだ。

今は、きちんと自分の事を知ってくれての信頼だとは思っているが、
最初は、マスタング氏に自分を重ねてみての事だと思うと、
少々、不快な気分にはなるが
嫌われるより、好かれる方が良いに決まっているし
元来、きっかけ等の小さな事は気にしないタイプでもある。
逆に、そう思ってもらって 物事が好転するなら好都合と思う位だった。

だが、エドワードの事になると
出来れば、最初から自分自身を好きになって欲しかったと思う。
まぁ、出会いだけは 変えれない事なのだから
気にしても仕方が無いのだが・・・。

知らずにため息をついていたらしく、
「疲れたのか?」と気遣う表情を見せるエドワードに
「いや。」と小さく微笑みながら返してやる。

そうすると、エドワードが安堵したように
同様に笑顔を向けて嬉しそうにする。

『これも、マスタング氏に似ているのだろうか?』
思わず聞きそうになるレイモンドだが、
自分で自分を落としてどうすると、気弱になっている自分に渇を入れる。

そうこうしていると、夕飯の準備ができたと誘いに来てくれた女性に
エドワードが 待ってましたとばかりに飛び出して行く。
エドワードの登場で、場が一段と賑やかになるのを耳にしながら
レイモンドも、乗り気でない足を動かして
夕食に参加する為に テントを出て行く。


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