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Selfishly

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駄目な男・番外編「みんなのアイドル2」



「みんなのアイドル 2」

そして、暫くする間もなく、大きな物音をたてて扉が明け放たれたと思うと、あっという間にリビングに姿を現した、この家の悪の親玉が登場した。
「兄さん!! 」 
 襲い掛からんばかりの勢いで突進し、ヒシと抱き付いているのは、つい最近もロイの我が家に来ていた、エドワードの弟、アルフォンスだ。
「兄さん、久しぶり~。 元気にしてた? ちゃんとご飯食べて、寝てるの? 何だか、前より細くなったんじゃない? 仕事が厳しすぎるんじゃない? ああー、また髪の手入れもサボってるでしょー、だから、僕が付いてなくちゃいけないのにー」
 大きななりをした大の大人の男が、一回りも体格の違う兄を抱きしめて、顔中にキスを落として、勢い余って頬擦りまでしている様子は、大変微笑ましい・・・わけがない!!
 はっきり言って、暑苦しい、みっともなく見苦しいの一言だ。
 が、さすがに美貌のエルリック家の兄弟。 ビジュアル的にはOKなのが、更にロイの腹正しさに拍車をかける。
 更に、この異様な光景を、この家族達・・・そして、エドワード自身、全く問題なく受け止めている、この状態。
 
「アル、お前相変わらず心配性だなー。大丈夫だって、ちゃんと食べてるし、寝てるよ。 お前の方は、どうなんだ?」
 笑い声を上げながら、アルフォンスをいなしている様子は、これがこの家の日常の光景なのを物語っている。
 延々と続くかと思われ、眩暈に襲われそうになった時間を止めてくれたのは、両脇で拗ねていた子供たち二人組みだった。
「もう! パパいい加減にしてよ。 いつも、エドちゃま独り占めして~。 大人でしょ? 少しは子供に譲る気持ちくらい持ってよ」
 子供とは思えない言葉は、多分、母親の口癖を真似ているからなのだろう。
「そうだよ、寝てる間はいつもパパが独り占めするんだから、
起きてる間位は、僕らが先でしょ!!」
 マースの言葉に、ロイの目は更に瞠られ、エドワードもさすがに、ここに至り、ロイの存在を思い出してくれたようだ。
「マ、マース、こ、こらっ。 お客様の前だぞ」
 エドワードが慌てて、静止の言葉を告げ、気まずげにロイの方を窺ってくる。
「ロ、ロイ。 マースの言った言葉は、昔の事で・・・別に、今はそんなにいつもじゃ・・・」
「・・・いつもじゃない? なら、時たまは?」
「・・・」
 表情は笑みを作っているが、目は険を含んで、アルフォンスを見つめているが、視線が突き刺さっている筈の本人は、元依り代にしていた鋼鉄が精神に影響しているのか、全く平然としている。
 一挙触発の空気は、この家のジャスティスの判断で救われた。
「エド、先にロイさんを部屋に案内して上げたら?
 今日はこっちに泊まって行くでしょ? エドの家の方は、泊まれる状態じゃないもんね。 部屋は、あんたの隣よ」
 その声に、エドワードはホッとしたように表情を緩め、素直に頷く。
「そ、そうだな。 ロイ、部屋に案内するよ、荷物置いて、着替えたほうがいいだろ?」
 促すように立ち上がるエドワードの後を、ロイは家人に挨拶をして、付いていく。
 気まずい空気は、結構広い家を横断し、部屋に辿り着くまで続いていく。
 2階の奥部屋に付くと、手前側の部屋を開けて案内をし招き入れてくれる。
「ロイ、ここの部屋を使わせて貰ってくれよな。 足りないものがあったら、俺の部屋が隣なんで、言ってくれたら・・・」
 扉を開け放して説明をしていると、パタンと言う音と、ガチャリと施錠する音が、やたらと大きく響き渡る。
 エドワードは、ゴクリと唾を飲み込むと、覚悟を決めて背後を振り返る。
 振り向いた先には、閉めた扉に、腕組をしながら凭れて、エドワードに眇めた視線を投げかけているロイが立っていて。
「ロ、ロイ、そのぉ~」
 気まずい空気に耐え切れず、何か話そうと言葉を告げようとして、相手の言葉に遮られる。
「何時、今日はここにお泊まりになったんだい?」
 それだけ告げると、無言のプレッシャーをかけてくる。
「い、何時って・・・さっき?」
 ヘヘヘと、宥めるような笑みを向けられても、ロイも騙されない。
「確か、こっちの君の家に泊まれないようなら、ホテルに泊まろうと話してたじゃないか。 それを何故、人様の家に泊まりこむ事になるんだい?」
 険を含む物言いに、エドワードもカチンとくる。
「人様って言い方はないだろ。 ここは、アルの家だぞ。 アルは俺の弟なんだから、ここは俺の家族の家でもあるんだぜ」
「でも、泊まるとは聞いてない」
「仕方ないだろ、ああ言われて帰れないじゃないか。
 それでなくとも、久しぶりに戻ってきたんだぜ、少しくらいは家族孝行も、必要だろ!」
 確かにエドワードの言いたい事も一理ある。 ロイと暮らす事になって、家族ともめったに会えなくしたのは、ロイに他ならないのだ。 が、まさか訪ねた先の家の内情が、こんなに危険な地区だとは、ロイとて知りえなかったのだから。
「判った・・・そこは、私も折れる事にする」
 憮然としつつも、了承の言葉を告げてくれたロイに、エドワードもホッと安堵の息を付く。
 エドワードにとって、大切で大好きな家族だ。 ロイにも仲良くして貰いたいと思うのは、当然だろう。
 が、気を緩めた瞬間を狙っていたように告げられた、次の言葉に、硬直する。

「で、一緒に寝てるのは、まだ続いてるわけだ」
 冷めた温度を伝えながらの言葉に、冬だと言うのに、エドワードの額に、冷たい汗が浮く。
「そ、そのぉ・・・前も言ってたけど、あいつが身体を取り戻したばかりの頃は、目を離すのも心配でさ。
 で、一段落して落ち着いてきたら、今度は俺だろ? あいつ心配性だから、傍に付いててくれてたんだよ。
 まぁちょっと、それが癖になってるのかも・・・なぁ?」
 さすがに、大人のなりでそれには思うところがあるのか、エドワードも恥ずかしげに、告白してきた。
「君ら兄弟が仲が良いのは、もう、それこそ軍の時代から、嫌と言うほど見せ付けられてきたけどね。
 まさか・・・、つい最近までとかは、ないだろうね?」
 呆れたように、諦めた気持ちで、浮かぶ疑問を聞いておく。
「ん・・・、さすがに俺らもこの歳だろ? いい加減、独り寝位なれなくちゃって、それとなく何度も言ってるんだけど」
 気まずげに告げられた言葉に、ロイが仰天して声を大きく上げる。
「君ら、まだ添い寝しあっていたのか!?」
 ロイの声が、思ったより大きく上がり、エドワードが階下の家族を慮って、慌てて声を小さくするように。指を口に当てて示してくる。
「ロ、ロイ、落ち着けよ。 そんなにしょっちゅうじゃないって。
 たま~に、たまにだよ。 あいつが、仕事とか他の事で落ち込む事があると、俺のとこ来る癖があって・・・。
 で、でも、そんなに頻繁じゃないぜ? 俺らもいい歳した大人だろ? そのぉ・・・やっぱり兄弟でも、色々と問題あるじゃんか・・・朝とかさ・・・」
 恥ずかしそうに呟かれる最後の方は、小さく口に中で呟かれる囁きになっている。
「だから、俺も何度も言ってるんだ。 俺は結構淡白なタチなんだけど、あいつは意外に・・・そのぉ、そっちの欲が強いらしくてさ。 まぁ、子供も二人作っちゃう位だからな。 アハハハハ~」
 無理やり明るく流そうと、うそ臭い乾いた笑いを上げる。
 ロイは、乾ききっている口内で、無理やり聞いては置かねばならない事を質問する。 声は掠れ気味だ。
「ちょっと、待て。 君は淡白で、アルフォンスは淡白じゃないんなら、一体どんな状態だと言うわけだ・・・、 と言うか、そんな状態で一体何時から何時まで過ごしてるわけなんだ?」
 恐々の質問は、開き直ったエドワードにあっさりと告げられる。
「ん? 一晩中?」
「ひ・・・一晩?」
「そう。 だから、かわいそうだろ? そんなに我慢するのって、身体に悪いじゃんか。 だから、奥さんとこ戻れって言うんだけど、妻に弱音を吐くところを見せたくないって。
 男気ってやつ? 可愛いとこあるだろ?」
 嬉しげに語られる言葉も、気が遠くなりかけているロイの耳には、意味不明な言葉にしか聞こえてこない。

『絶対、違う・・・。 アルフォンスが、妻に弱音を吐くのを見られるのが嫌なんて、そんなに殊勝な人間のわけが無い。
 っと言うか、仕事やその他モロモロの悩みなんて、あの兄1番で何の疑問も持ってない弟に、あるはずがない!
 き、危険だ・・・』
 今も目の前では、無邪気に弟や甥・姪の話を嬉しそうに告げてくる、純粋そのもののエドワードが居て。
 とても、自分が狼の群れの中に放り込まれた・・・いや、彼の場合は飛び込んでか。 な状況に気づいていないのは、丸判りだ。
 ロイの頭の中に、次々に浮かんでくる妄想は、不安を増大させるような内容ばかりで、ロイを苦悶に落とし込んでいく。 アルフォンスが危険な人物であることは、間違いない。
 問題は、その事をどうやってエドワードに告げるかだ。 下手に告げようものなら、超がつくブラコンで、家族大好きエドワードの事だから、怒り狂って、そんな事を告げるロイに攻撃の矛先が向く恐れもある。 下手したら、別居・・・もしかしたら、こっちで暮らす、なんて事も言い出すかも知れない。 それだけは、何としても避けたい。 
 それに・・・。 嬉しそうに家族の話をしているエドワードの笑みを見る。 幼少に家族と言う人の輪を失ったエドワードにとって、家や家族団欒は、夢であり憧れなのだ。
 それを壊すのは・・・忍びない。

 ロイは勢い込んで、エドワードの両肩をがっちりと掴む。
「エドワード!!」
 ロイの気迫に押さ気味に、上擦りながら返事を返す。
「は、はい? なっ、何?」
「いいかい、これだけは誓ってくれないか?」
「ど、どんな事?」
「絶対に、私以外と寝ないこと! 例え、添い寝であろうと、子供の昼寝であろうとも!」
「・・・えっー、マースとトリシャとも?」
 ロイの言葉に、不満そうな返答が上がる。
「彼らともだ!」
 エドワードの不平にも耳を貸さずに、再度宣告する。
「別に、転寝位ならいいだろ? 」
「いいや、ダメだ!」
 強く言い切る。 どうせ、子供の転寝に付き合っていれば、そこに便乗してくる輩がいるはずなのだから。
「それと、入浴や肌を見せるような場所も、決して他人とはしないように!」
「ちょ、ちょっと!! マースやトリシャは、俺が居るときは俺が風呂に入れてやってんだぜ? 急に、ダメだなんて、可哀相だろ!」
 甥、姪との入浴は、エドワードの楽しみの1つでもある。
 さすがに、憤慨したように言い返してくるエドワードにも、
ロイは毅然と首を横に振る。
「いいかい、エドワード。よ~く聞くんだ。 君は私と恋人同士、いやそれ以上の最愛の伴侶同士だな?」
 がっちりと肩を掴まれた状態で、ロイがズイッと顔を近づけて凄んでくる。 エドワードは、身を引きたくても引けない状態で、ロイの気迫に呑まれていく。
「は、伴侶って・・・まぁ、恋人同士なのは、そうなんだけど…」
 ロイの言葉に、薄く頬を染めて照れている風情は、初初らしさ全開だ。 思わず、ロイの頬も緩みそうになるのを、気を引き締めて、最後の詰めに挑む。
「なら、好きな者同士以外で、同衾するのは恋人のルールの違反だ、裏切りだぞ!」
「ど、同衾って・・・そんなぁ、ちょっと添い寝してる位で・・・」
「いいや、恋人を持った者には、それさえも許されないんだ」
 力強く断言され、宣告されると、恋愛方面にはとんと疎かった青年期を過ごしたエドワードには、そうだったのかと新しい驚きを生む。
「そうだったんだ・・・。 俺、そんな事はあんまり考えたことなくてさ・・・ごめん、全然、知らなくて」
 エドワードの反省を、ロイは重々しく頷いて返す。
「知らなかった事は仕方が無い。 が、これからは、絶対にしてはいけないよ? 君にはれっきとした、私と言う恋人であり、生涯を共にする伴侶がいるんだからね」

「う、うん、これからは気をつける。 アルの奴が忍んできた時も、ちゃんと追い出すことにするよ」
 不穏な発言に、ピクリと眉が上がるが、今はそんな事を追及している場合ではない。 
「わかってくれたなら嬉しいよ。 誰しも知らずに過ちを犯すことはある。 大切なのは、知ってからの自分の行動だ。
 エドワード、私に誓ってくれるね?」
「うん、わかった。 誓うよ、これからは、ロイ以外とは寝ないし、風呂とかも断る事にする!」
 晴れやかな笑みで誓われた言葉に、ロイは心底安堵した。
エドワードは、自分の言葉に責任を持つタイプなので、例え、口八丁、嘘八丁のロイの詭弁にも、返答をした限りは、必ず順守するようになるだろう。 まぁ、嘘がばれた時は、かなり怖いのだが・・・それはその時。 取り合えず、今のこの戦場を生き残り、清い身体で帰ってもらうのが先決だ。
 幾ら男の生理があるとは言え、対象もなく一晩中お勃てたままでいれるわけがない。 そんな状態が続くという事は、欲望の対象が傍にいるというわけで・・・。
 ロイは、信じもしない神に祈りたい気分だった。
 危険から、最愛の者の貞操を守ってくれた事に。

 どちらにしても、どこかいっちゃってるようなこの家族と、今後も付き合ってかなくてはならないのだ。 相手の理性が紙一重の薄さなら、後はエドワードに頑張ってもらうしかない。
 
 その夜は、ロイにとっては針のムシロの上と同様だった。
 楽しみにしていた入浴タイムも、エドワードが風邪気味だと嘘を付いて断り、アルフォンスの添い寝のお誘いも、頑として断るエドワードの様子に、その元凶がロイであろう事は、アルフォンスは当然、幼い子供たちにも、薄々感づくものがあったのだろう。 四方八方の冷たい視線の中、これも、エドワードの貞操の為と思えば、耐え忍べた。
 
 楽しみを奪われた代わりに、起きている時間の総奪戦は、過激に密度を高くしているようだが・・・。

「もう、パパ! エドちゃまの膝枕で寝るのは止めてよ。 私がお座りできない~」
「トリシャも、同じだろ! さっさとそこを退けよ。 エドの髪を編んで良いって言ってもらったのは、僕なんだぞ!」
「もう子供は寝なさい! ここからは、大人の時間だ。
 僕と兄さんで、寝ないで語り合うんだから」

 リビングの惨状は、その場に居ないロイにも簡単に想像が付く。 重いため息を付いて、用意されたお茶を飲んでいると、前に座っていたウィンリーが、クスクスと笑い声を上げるのが聞こえて、キッチンに残っているもう一人を思い出した。
「驚いたでしょ?」
 げんなりしているロイの表情を、可笑しそうに見ている。
「まぁ、正直・・・少し、いやかなりね」
 この家で一番まともそうな彼女になら、ぼやいても良いかという気持ちで、本音を零す。
「うちは、昔からこんななんです。 それこそ、子供の頃からね」
 楽しそうに語られた言葉に、ロイが不思議に思って聞き返す。
「子供の頃から?」
 ロイの疑問に、ウィンリーはにっこりと微笑む。
「ええ、子供の頃から。 いつも、アルとあたしで、エドの取り合いをしてたんです。 あの頃は、いつもアルに負けていて、本当に悔しくて仕方なかったんですよぉ」
 その言葉が、今も悔しいと思っている感情を、はっきりと伝えてきて、ロイは驚いたように、ウィンリーを見る。
「もしかして、君は・・・」
 聞きたくて聞けない言葉。 ロイの戸惑いがわかったのだろう、代わって答えてくる。
「ええ、あたしも彼を愛してますよ、勿論。 アルも知ってますし。 ずっとずっと昔から、私達はエドの虜なんです。
 もうそれこそ、刷り込み状態の重症なんで、今更変え様とも、変だとも思わなくなっちゃってますけどね」
 ロイは、衝撃の告白に、言葉もない。
「本当なら、あたしがエドの奴と結婚できたなら、独り占めできたんでしょうけど、エドには好きな奴がいたし、脇目も振らない性格でしょ? だから、家族になる道を選んだんです」
 さらりと語られる話の内容は、隣の部屋で争っているレベルの比ではない。 ロイは、張り付いている舌を動かして、何とか言葉を形どる。
「し・・かし・・、じゃあ、アルフォンス君は・・・それで?」
 ロイの動揺とは正反対に、ウィンリーは落ち着きを払って答えてくる。
「勿論知ってますよ。 誤解しないで下さいね。 ちゃんと、アルの事も2番目には好きですから。 
 良く言うじゃないですか、2番目に好きな相手との結婚が、幸せになるって。 あんな旦那でしょ? 浮気する心配は、全く無いし、大好きな人に会わせてくれる可能性を繋げてくれるしで、あたしにとっては、良い亭主ですから」
 硬直しきっているロイを置いて、ウィンリーは自分のカップを片付け始める。
「マスタングさん、覚悟して下さいね。 私たちのアイドルを奪って行ったんだから、それなりの根性がいりますよぉ~。
 あっ、ちなみに、帰るときは街の住民にも気をつけた方が良いですよ? うちの中と、然程代わらない状態になると思いますから。 健闘を祈ります、一応」
 言うだけ言うと、さっさと隣の部屋に参入し、纏わり付く大人子供を追い払うと。
「じゃあ、エド。 サッサと、チェックするよー」
「ええ~! 別にもう大丈夫だろ? 俺も機械鎧付けて無いし、健康診断も議会所で定期的にやってもらってるしさ」
「なぁ~に、寝言言ってんのよ。 そんな型どうりの万人向けの検査なんかじゃ、あんたのこと、わかるわけないでしょ?
 ちびの頃から診てきた私の腕が信用できないわけ?」
 そんな啖呵を切られて、どうやらエドワードは連行されていったらしい。
 急に静かになった隣の部屋では、つまらなそうに部屋に戻って行く子供たちの足音と、最愛の兄を攫われ、嘆いている弟の呟きだけが聞こえてくる。
 
 エドワードを手に入れる代価は法外な値が必要だ。
 ロイは一生涯支払わされる代価に、深く嘆息を付く。
 が、それでも、手に入った奇跡を考えれば、支払えるだけ
 ありがたいと思わなくてはならない。
 手に入れられなかった者の想いを、考えるのならば・・・。

 冷め切ったお茶を飲み干すと、明日の戦場突破の体力を養う為に、あてが割られた部屋へと、大人しく戻っていく。

 翌朝・・・。
 早めに、アルフォンスの家を辞去したにも関わらず、エドワードとロイが、無事に駅に辿り着いたのは、すでに最終列車がやってくる時刻だった。

 たかが数キロの距離の摩訶不思議だ。
 


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       ~ 「みんなのアイドル!!」~     end


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