国道沿いにある釣具の正一屋で入漁券を買い、我々は鱒沢駅の近くへ向かいました。
Google Map 遠野市
私は北海道の隠れ家にサクラマスロッドを置きっぱなしにしていたので、柔らかめのエギングロッドにPEラインというタックルです。まず3gのアワビ張りスプーンで釣りを開始。本流と小友川の出会いで最初の一投。
「こんなカンジ。アップクロス・キャストで探ってみな」
「了解」
「オレは支流をやってみるよ」
本流と支流に別れてすぐの一投目。支流の水深は50センチぐらいだったでしょうか。日照り続きでだいぶ減水しているようでした。浅いので流芯の底を這わせるようにスプーンを引いてくると、岩に“コツッ”と当たったような感触がありました。
つづいて第二投。今度は岸に張り出した木の枝ギリギリにサイドハンドで打ち込みました。そして、先ほど岩に当たった感触があったところまで引いてくると・・・ヒット!
あっさり一匹目が釣れてしまいました。22センチのヤマメです。
「オーイ、釣れたぞー!」
何度もカーズを呼んだのですが、なかなか来ないのでリリースしました。あまりにも簡単に釣れたので、写真も撮っていません。
でも、その後どんどん状況は悪くなっていきます。北緯38°の遠野市で日付は6月2日、しかもまだ午前中。気温何度だと思います?
なんと31℃ですよ。ふざけてるでしょ。おまけに、ここ10日ばかり、ほとんど雨が降っていません。
5分ほどして、ようやくカーズが支流に現れました。
「なにやってんの。気温が高いから支流の方がイイぞ」
「川岸の泥に埋まっちゃって、なかなか動けなかったんですよ」
「あの辺、岸が歩きづらいだろ。こっちを釣り上るぞ。オレはクルマに戻ってフライのタックルを持ってくるから、コレでやってみな」
私はカーズにヒットルアーを渡してクルマに戻りました。
しばらくして支流に戻り、土手の上からカーズにいろいろコーチングしました。
「浅いんだから、もっと真ん中に立ち込んでいいんだよ。流芯の底を這わせるように引いてこいよ」
「そこはもっとゆっくり。表層より底の流れがゆっくりなんだ」
「あと3メートル先。そう、そこ。底に大きな岩があるから沈めて」
「あっと、反応したぞ。今キラッと光った」
「あれぇー、鮎かな? なんかいっぱいいるぞ」
なかなか釣れないので、私は少し上流の橋の下へ移動しました。するとライズです。橋の影でメイフライがハッチしていました。そろりそろりと近づいて、16番ぐらいのフローティングニンフをキャストすると・・・またしても二投目で釣れました。
「オーイ、釣れたぞー!」
20センチぐらいのヤマメでしたが、カーズに見せようと思って、吊り下げていたらポロッと落ちてしまいました。したがって、今度も証拠写真がありません。
ここまでたった4投です。減水でかなり状況は悪かったはずですが、魚影は濃い!
私の場合、釣り場に着いて第一投か、第二投で魚を釣ることが多いんです。しかし、あとが続かないんだな。要するにドラマチックじゃないわけです。あれこれ試行錯誤を繰り返して、最後の最後に答えを出す・・・みたいな演出ができません。
途中にいろいろあった方がドラマチックでしょ。惜しいバラシとか、疲労との闘いとか、うんちくをダラダラしゃべるとか。釣り番組を見ていると、1匹釣るまでにイヤと言うほど聞かされるじゃないですか。アレがないんですよ。アレが。
プロゴルファーだったら、いろいろ見せますよね。林の中からのリカバリーショットとか、見事なバンカーショットとか、超ロングパットとか・・・
それがいきなりホールインワンなんですよ。でも、そのあとはボギー、ダブルボギーと崩れていって、午後になると集中力がプッツン。15センチのショートパットをはずしたり、空振りしてみたり・・・
そして最後はグダグダになってグルメリポートで「ハイ、終了」・・・的な1日になるわけです。それでも、何もないよりは、はるかにマシですけどね。
この日もそんなカンジになりそうな予感でした。原因は、ウェーディングシューズです。これも北海道の隠れ家に置きっぱなしになっていたので、カーズ閣下から借りていました。それがね、サイズは合っていたんだけど、底がフェルトじゃなくてゴム底だったんですよ。
※アラスカにウェーディングシューズを持ち込む場合、フェルト底は認められていない。なぜかというと、苔や微生物が生きたまま持ち込まれて、アラスカの生態系を破壊する危険性があるから。(カーズ閣下から借りたウェーディングシューズはアラスカ遠征用だったのです)
これがツルツル滑るんですねー。風呂場でセッケンをふんずけたみたいに。そのせいで、だいぶヤル気を削がれたのです。
つづく