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カテゴリ:安心
今回は、私の友人でオランダ留学歴のある大学の研究者(薬学部)からの寄稿を
ご紹介します。示唆に富む内容ですので、ぜひご一読を。 ↓↓↓ 最近気になること、それは日本人の過剰な「安心」指向です。 これは現在話題の「食」に関してもそうですが、他の例として 「インフルエンザ対策」「潔癖性」等にもあてはまります。 狂牛病対策としての「全頭検査」、新型インフル対策としての 「タミフルの政府主導の備蓄」、「抗菌グッズの大ブーム」 などを見るにつけ、違和感を感じざるを得ませんね。 オランダで生活して、日本を客観的に見る機会が あったことも影響しているとは思います。 科学的に見ると、これらのアクションには、実は、根拠がありません。 寧ろ、弊害を含んでいます。 昨今、タミフルの乱用により、耐性菌が発生しています。 今年の冬はタミフルが効かないインフルエンザが新聞紙上を賑わせると予想しています。 薬と微生物は所謂いたちごっこを繰り返しており、 オランダでは、風邪を引いたとしても「ほうって置けば治る」、 高熱の場合にのみ、解熱鎮痛剤で対症療法を行う、くらいの スタンスでした。これには、むやみに抗生物質を投与すれば、 耐性菌を生むという、科学的理由によるものです。 タミフルの全世界での消費量の実に8割が日本にて使用されています。 まさに今の状況は「因果応報」です。 風邪と一言に言っても、原因としてはいろいろあります。 その中でも最も多いのがウイルス感染によるものです。 抗生物質はウイルスには効きません。 まれに日和見感染と言って、ウイルス感染により免疫力が低下し、 その結果、細菌感染が続いて起こり、肺炎等の重篤な症状を 引き起こす可能性を想定し、念のため、投与されるのが抗生物質です。 我々が風邪をひいて、病院に行けば十中八九は抗生物質が処方されます。 医者も利益が上がるし、患者も「安心」するからでしょうか。 先日、あるテレビ番組で放送していましたが、生後一年間、家畜と 接触する機会があった幼児にはアレルギー疾患が少ないという内容でした。 我々人間は、進化の過程でいろいろな防御機構を獲得してきました。 清潔すぎる環境で過ごすと、こういった本来備わっている機能の発現さえも 鈍ってしまうのではないでしょうか。 オランダでは、同僚たちはコーヒーカップを洗浄することなく、使い続けていました。 前回飲み干したコップに、直接あたらしいコーヒーを入れていました。 また市場(いちば)では、購入したリンゴをズボンで少々擦って、 そのまま皮ごとかじっていました。 こういった生活により、彼らの体は本来の機能を発現し、 防御機能を発揮しているのでしょう。 世界中には手で食事を摂る民族が多くいます。 彼らは我々と比べて、よくお腹をこわすのでしょうか。そうではないでしょう。 「安全」は科学的な根拠で結論付けられるべきものであるのに対し、 「安心」とは個人の価値観に委ねられた非常に曖昧なものであると思います。 今の日本は、過剰な安心指向です。メディアもそれを助長しているように見えます。 周りにあふれる情報の洪水に飲まれることなく、適切な線引きを自らの判断で行うこ とで、(自分なりに)安心して生活していこうと意気込んでいる今日この頃です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008.12.03 19:13:14
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