鴨がワインしょってきた

2016/12/30(金)02:00

アンリ・ジャイエの購入価格

ワイン購入(87)

いつにもまして品がないが、お金にまつわる話題。  アンリ・ジャイエの価格は今となってはとてつもなく高額だが、彼の名前が売れ始めた頃は著名なレストランで「美味しくて安い」と評判だった、とどこかできいた。多分、私が産まれて間もない頃の話だ。  過去10年もブルゴーニュワインのファンをやっていれば、どこかで意地になってジャイエのボトルを入手した経験がある人も多いのではないだろうか。  「私の戦闘力は53万」とか顔に書いてありそうな金持ちがうようよしているオークションに出入りしたことはないが、最近でも海外ショップのリストでアンリ・ジャイエが売りに出たのは見た(すぐ売れた)。探せばまだ売り物はあるようだ。だけど、偽物も多いらしい。  ある日ふと、外国人に「おまえが最初に買ったジャイエは、どの銘柄でいくらだった」と聞かれたらと考えた。とっさには答えられないと、唖然としながら気がついた。  私などは本当に少数のジャイエしか購入した経験はないが、最初に買った銘柄はよく覚えている。1986年のエシェゾーで、ネットショップの松澤屋の会員向け販売で購入した。記憶が確かなら1本10万円ちょっと(詳細は非開示w)。12万円台で同年のクロパラントーも売りに出たが、無知ゆえに「1級なのになんでこっちが高いんだ?」とか首をひねっているうちに蒸発した。  「おまえが最初に買ったジャイエは、どの銘柄でいくらだった」と聞かれたら、百貨店の売り子のように「これだよ」と電卓を叩いてみよう。そう思って、ひとりでやってみた。購入額を現在のユーロ・円のレートで割ると、出た価格は約880ユーロ。ん?  いつもメールでもらっている海外ショップのワインリスト。このエクセル表の税抜き価格の欄を降順にして眺めてみた。そこから抜粋した通常のブテイユのワイン価格は以下の通り。 Richebourg Meo Camuzet 2007 903.0 Echezeaux DRC 2011 892.5 Corton Renardes Leroy 1992 819.0 Echezeaux DRC 1984 819.0  メオのリシュブールは買えない。DRCのエシェゾーが買えるかどうか。ルロワのコルトンのバックヴィンテージもいけるかも、という結果が出た。ちなみにアルマン・ルソーのトップ2(シャンベルタン、クロドベーズ)は900ユーロ台で、メオのリシュブールより高い。  日本だと、DRCならチャンスがあればグランエシェゾーあたりまで買えるかな。  私は当時、清水の舞台から飛び降りたつもりでジャイエのエシェゾーを買った。ということは、当時の私と同じぐらいの年齢で、同じぐらいの給与の人は今、DRCのエシェゾーを買うことすら相当悩むだろう。  「ワインは飲まれて減るし、新興国の需要が増え続けるから投資価値が上がる」といった、くだらない記事を「選択」に書くライターもいるが(誰が書いたか大体想像がつく)、それがなぜクソみたいな話かというと、資産家ではなく勤労者の若い愛好家が入り込めない、新規参入ができない状況になっていることへの問題意識がないからだ。  毎年新ヴィンテージが出る作り手のワインで、トップクラスの銘柄がこういう価格では、日本のふつうのサラリーマンには趣味として続けられない。投資価値が上がると煽る者には「日本のブルゴーニュファンが減ることがそんなに嬉しいのか」と批判したい。

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