資本政策(2) 自社株買い
今回は自社株買いについて思うところを書いてみます。なお、ここでは低PBRを中心とした株価が割安な企業の自社株買いを前提とします。改めて言うまでもない事ですが、自社株買いによりEPS,BPSは増大することになります。特に、私が主な投資対象としているキャッシュリッチな割安株の場合、100円の投資が即座にかつノーリスクで200円のリターンを生むことになるので、自社株買いこそ最も理想的な投資といっていいと思います。ただ、注意しているのはストックオプション=株主軽視は成立しても、自社株買い=株主重視は必ずしも成立するわけではないのではないかという事です。より正確には自社株買い=個人投資家重視というわけではないのではないか、ということです。個人投資家の立場からすると、企業は株主を重視した経営をすべきだと考えがちですが、逆に企業経営者の側に立って考えてみると、せいぜい数十万から数百万円程度しか投資せず、株価が変動すればすぐに手放してしまうであろう個人投資家をそれほど重視するとは私には考えにくいのです。ですから、自社株買いに限らず、企業が株主に有利な方策を打ち出した場合には、その理由を推測すべきだと思います。そして、その理由が自分にとっても有利なものであれば乗っかるという感じでしょうか。そして、企業が自社株買いをする理由を考えてみると、1、株主価値の創造こそ企業価値の増大につながると信じている2、TOBを予防するため3、将来のM&Aなどの際の交換材料として使うため4、親会社などの大株主のため(単に大株主への配分を多くしたいという理由からコナミ子会社のような将来の吸収合併の布石という理由まで色々考えられる)などがあげられるかと思います(他にも色々あるでしょうが)。例えば1の理由なら素晴らしいですが、そういう企業ならそもそも割安放置はされないでしょう。2の理由なら個人投資家にとっても利益につながります。3だと将来的に株が市場に放出されるわけですから、安易に喜んでばかりもいられません。4は色々なケースが考えられるので、一概に良い悪いとは言いにくいところです。結論としては、自社株買いは素晴らしい事なのですが、自社株買いの実績から単純に株主重視と判断するより、なぜ自社株買いをしたのか、継続性はありそうなのかを考えた方がより望ましいと思っています。