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カテゴリ:映画・ドラマ
![]() 映画やテレビはあまり見ない方だった。 美術畑の私にとって、 銀幕やブラウン管に映るものは、絵画や彫刻と違って 実体のない、虚構でしかなかった。 ひょんなことから、今の仕事をすることになり 勉強のために映画やドラマを見るようになった。 何しろ、ADの経験なくいきなりDをやらされたんだから、 本当にあわてた。 さて、『洲崎パラダイス・赤信号』(日活 白黒 81分)という映画。 奇才、川島雄三監督が昭和31年に撮った作品である。 東京・州崎遊郭へと繋がる橋のたもとにある飲み屋を舞台に、そこに出入りする人々の姿を決して飾ることなく、しかし温かい眼差しで描いたドラマ。 オープニングとラストシーンが同じ場所。 このこと自体、大したことではない。 面白いのは、それぞれの天気の違い。 天気が違えば、光も違う。 この映画、実に光がきれいだ。 (照明部さんグッジョブ!) モノクロで、フィルムだからなおさら、奥行きを感じる。 今では再現不可能な究極の美しさである。 無駄のない演出、精緻なカット割りも見ものである。 世界に誇れる監督の一人であり、もっと評価されてもいいと思うのだが。 いいかげん、露悪的、無責任、自虐的などと評される川島監督であるが、彼の本当は別のところにあるような気がしてならない。 ダンディな風貌の中に隠し持っていたもの、 それこそをカッコいいと、私は思う。 「サヨナラだけが人生だ」 「生きて行くと云う事は悲しいことです。恥しいことです」 彼の遺した言葉は一つひとつが染みてくる。 筋萎縮性側索硬化症という病に冒され、昭和38年に急逝した。 享年45才。 ![]() お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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