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フィンとリーフのトラキア博物館

フィンとリーフのトラキア博物館

剣聖と黒騎士と・・・(その3)

リーフ館長:ここからはエルトシャン&エイシャ、デュラン&エイミがベルンから始まる旅の珍道中をお送りするよ~


最新更新情報:12月2日、実に2ヶ月ぶりに第12話をアップして、パート3を完結させました~(リーフ館長)



<第9話・エルトシャン&エイシャ、デュラン&エイミ編(1)>

一方ベルン行きの船に乗り込んだ、エルトシャンとエイシャ、デュランとエイミは船の中で、それぞれ思い思いの時間を過ごしていた。

「兄上とセリナ、大丈夫かな・・・兄上は空は平気なのに、船に乗ると途端に気分が悪くから・・・セリナに迷惑をかけなきゃいいけど・・・」とエイミ

「心配か?」と優しく気遣うデュラン

「うん・・・」

「大丈夫だよ。たしかにあいつは、昔から船は苦手だけど、精神力は誰よりも強いんだ。それにいざとなったらセリナが治療してくれるし、今回はディアルトやルージュさんも一緒にいるから。それにユングヴィを出発する前に、レイチェルから酔い止めの薬をもらって、船に乗り込む前に飲んだって言ってたから」

「え、どういうこと?」

「レイチェルの叔父さんにあたる、エッダのコープル司祭様がさ、アグスティ城で出発する前にレイチェルとエイシャにって、酔い止めの薬をたくさん持たしてくれたんだって。でもその量があまりにも多くて、せっかくだからって私やディアルト、それとアーヴィングに均等に分けてくれたんだ」

「そうだったんだ・・・あとでエイシャさんにお礼をいわないとね。もちろんレイチェルさんにも」

「そうだね。でも今回はディアルトやルージュさんも見ているから、バドンまで意地でも耐えると思うよ」と、クスクス笑うデュラン

「兄上は変なところで意地を張るところがあるからなぁ・・・」大丈夫とは思っていても、やはり自分の兄のことが心配になるエイミだった。


一方、エルトシャンとエイシャは、デュランたちとは反対側の甲板にいた。

「お兄様、大丈夫でしょうか・・・」とエイシャ

「どうしたの、エイシャ。ため息ついちゃって」と冴えない表情に心配するエルトシャン

「あ、エルト・・・実はね、お兄様は船が大の苦手なのよ」

「え?アニキって船が苦手なの?そうなんだ」幼なじみで従兄で義兄でもあるチュラの意外な弱点に、驚くエルトシャン

「以前、視察でお兄様とオーガヒルに行ったことがあるんだけど、ほらマディノからオーガヒルまでって定期船が出てるじゃない。興味があるからって私たち船に乗り込んだんだけど、たった20分の航海で、お兄様ったら気持ち悪くなったって、船から降りた途端に港でもどしてしまったのよ。すぐに私がレストの杖で治療したけど、それ以来お兄様は船に乗ることに躊躇することがあるから・・・」

「そうだったんだ・・・でも今回はレイチェルも側にいるし大丈夫だよ。それに・・・」

「それに?」

「実はアグスティ城で、出発する前にさコープル叔父上が、もしもの時にって、これを渡してくれたんだ」

「これ・・・酔い止めの薬?」

「そう、今回は初めから長い移動が続くし、船も長時間乗ることになるからって、叔父上が酔い止めの薬をたくさんくれたんだ。でも、あまりにも多いからさ、レイチェルやディアルト兄貴、それにデュランさんとアーヴィングさんにも均等になるように分けあったんだ」

「そうだったの・・・ありがとうエルト」

「うん、それにアニキにはレイチェルがずっと側にいるんだ。アニキも草々無理はしないと思うよ。無茶なことをしたらレイチェルは、すぐに泣いてしまうことがあるからね、昔から・・・」

「ふふ、そうね。昔からお兄様ったらレイチェルには優しかったから・・・レイチェルにとってももう一人のお兄様だから、ついつい甘えちゃうし」

「そうだね。あ、汽笛がなった・・・もうそろそろ船がベルンの港に到着するみたいだ。デュランさんやエイミさんを呼んでこよう。行こうエイシャ」

「ええ、いきましょうエルト、いえあなた♪」

あなた、という言葉に顔を真っ赤にするエルトシャンだった。


そしてユングヴィを出発して数日後、船はようやくベルンの港に到着した。
いよいよ彼らの長い旅が始まろうとしていた・・・


第9話・完
第10話に続く・・・


<第10話・エルトシャン&エイシャ、デュラン&エイミ編(2)>

ベルンの港に到着したエルトシャンたちは、その日は港町の宿屋で一泊し、翌朝ベルン城へ向け、万全の体制で出発した。

港町を出発して数時間後、大きな湖へとやってきた4人。

「きれい・・・」

エイシャが感嘆するのも無理はなかった。
広い森を抜けた途端に視界が大きく開かれる。透明感あふれるその綺麗な水は、湖面全体をおおいつくし、青い空に映えていて、はたから見れば、まるで大きな鏡のようにも写っている。

「ヴェルダンにある精霊の湖も素晴らしいが、この湖も実にこの美しい景色にあっているな」と、デュラン。

「それに見て、この水の透明感。すごく澄んでて私たちの姿も、ほら、よく見えるわよ」と、エイミ。

こうして湖を見ながら、馬を進めることさらに1時間後、小さな村に到着した。

「今日はここで休もうよ。太陽もだいぶ傾いてきたし、ベルン城まではまだもう1日かかるって、村の人もいってたよ」と、エルトシャン。

「そうだな、馬も疲れてきてるようだし、今日はここで休もうか・・・」と、デュラン。

「じゃあ、宿屋でチェックインを済ませてくるわ」と、エイミとエイシャが宿屋へと向かった、その時である。


「た、大変だぁーーーっ!!山賊たちが攻めてくるぞぉっ!!」
突然村人の一人が、告げたこの事態に村中が騒然となる。

たちまち村人たちは、それぞれの家に戻り、あわてて家の扉を締める。
旅人たちも、近くの宿屋に避難し、推移を見守ろうとする。

数分後、数十人位の山賊たちが村を徘徊し始めた。

「ぐわははは!!野郎ども、片っ端から家を襲ってお宝を奪え!!そして村人たちや旅人たちは、一人残らず殺すんだ、いいなぁっ!!」
山賊のリーダーであるハーゴンは、部下たちに周りの家から襲うように命じた。

と、ここでデュランとエルトシャンが宿屋から飛び出した。

「お前たちの悪事もこれまでだ!!」とデュラン

「罪のない村人たちを襲うなど、恥を知れ!!」とエルトシャン

「なんだぁ・・・貴様ら2人で、この俺たちに叶うと思ってんのか?上等じゃねえか。野郎どもかかれ!!」

ハーゴンの号令によって、山賊たちが一斉にエルトシャンとデュランに向かって襲いはじめる。

デュランが光の剣で、エルトシャンが銀の剣で、次々と山賊たちを倒していく。だがいかんせん、山賊の方が数は上だ。次々あらわれる山賊たちに、デュランとエルトシャンは次第に追い詰められていく。

「ちっ、こうも数が多いとさすがにきついな・・・」とデュラン

「最後まで体力がもつかな・・・」と弱気の台詞を吐きはじめるエルトシャン

一方ここぞとばかりにハーゴンたち山賊一味は、2人に一斉攻撃をしかけようとした。

ところが・・・


「ふ・・・多勢に無勢・・・醜いものだな・・・」

見た目は40代後半だろうか。表情は穏やかそうな男が、彼らの戦いに割り込んできた。

はたして彼は何者なのだろうか・・・


第10話・完
第11話に続く・・・


<第11話・エルトシャン&エイシャ・デュラン&エイミ編(3)>


山賊たちの執拗な攻撃に、じりじりと追い詰められていたエルトシャンとデュランの前に、表情は穏やかそうな男性があらわれる。

「ふ・・・多勢に無勢・・・実に醜いものだな・・・」

「あ、あなたは・・・?」
するとその男は、静かに剣を抜き、いきなり山賊たちに向かって走り出した。

「馬鹿めが!!たった一人で、この俺たち全員を倒せるとでも思ってるのかぁっ!!!」
山賊の1人がこう叫ぶと、男性剣士に向かって斧を降り下ろした。


「危ないっ!!」

エルトシャンとデュランが危機を感じて、あわてて男性剣士に加勢しようとした。

ところが倒れたのは山賊の方だった。山賊の顔に小さな十字のヒビが入り、その直後、恐怖に引きつった表情をしたまま、山賊は声を出せぬままに倒れた。

「な、なんだとぉっ!!」山賊のボスであるハーゴンはいま目の前でなにが起こったのかを、ハッキリ理解はできなかった。

一方エルトシャンとデュランも、あまりにも素早い太刀(たち)のうえ、鋭い剣裁きに唖然としている。

「い、いつの間に斬ったんだ・・・?」と、デュラン

「たぶん剣を抜いた瞬間だよ」と、冷静に分析するエルトシャン

「なんだって!?エルト、君はあの剣裁きが見えていたとでもいうのかい!?」

「僕は『流星剣』と『月光剣』を操るアニキと、何度も何度も稽古を重ねているんだよ。でもまともに勝ったことなど一度もないけどね♪」と苦笑いを浮かべるエルトシャン

しかし2人が喋っている間に、謎の剣士は次々と山賊たちを倒していく。気がつけばあれだけいた山賊たちも、残るはリーダーであるハーゴンだけとなった。

「ぐぐぐ・・・よくも俺たちの子分たちをやってくれたな!!」ハーゴンは怒りを隠し切れない様子で、3人を睨みつける。

「もとはといえばお前たちが悪いんだ。とやかく言う資格は貴様にはないはずだ!!」と、デュラン

「うぬぬ・・・おのれぇっ!!!」怒りで体を震わせたハーゴンは力任せに、斧をデュランに向けて降り下ろした。

だが、次の瞬間ハーゴンは剣士によって、一撃で倒されていた。

「ば・・・ばが・・・なぁ・・・っ!!!」いま自分の身に何が起こったのか、よく理解できぬままハーゴンは倒れていった。

「大丈夫かね、君達?」

「あ、はい、ありがとうございます」

「あの、あなたは・・・」

「私はカレル。今は訳あって、この村にお世話になっているんだ。この静かな環境であれば、剣の極意などを極められる、と思っているからね。ところで君達の名はなんと言うんだい?」

「あ、私はエルトシャンといいます。で、私のとなりにいるのは親友のデュランです」とエルトシャンが説明する。

「ここでは見かけない顔だけど・・・このエレブ大陸の人間ではなさそうだね」

「はい、実は・・・」

デュランがこの旅の事情をカレルに話した。

「なるほど・・・君達は新婚旅行で、遥々ユグドラル大陸からやってきたんだね。それにしても君達の剣の技は、基本がしっかりしているな」

「ここにはいないんですけど、私たちの従兄弟に教わったんです。剣技では彼に勝る人は、なかなかいないですから」と、デュラン。

「なるほど・・・君達がそこまでいうのなら、一度は手合わせを願いたいものだね」

「彼も、私たちと一緒にこのエレブ大陸に来ているんです。もしかしたら旅先で出会うこともあるかも知れませんよ」と、エルトシャン

「もし、そうなればぜひ手合わせをさせてもらうことにしよう」と、カレルはにこやかな笑顔で言った。

やがて、村人たちが少しずつ外に出て、山賊たちが全滅したことを知ると、嬉しそうに彼らに駆け寄り、お礼を述べていた。

そしてエイミとエイシャも、彼らが無事であることを確認すると、ほっと胸をなで下ろすのであった。


第11話・完
第12話に続く・・・


<第12話・エルトシャン&エイシャ・デュラン&エイミ編(4)>

ベルン南部の竜殿の近くにある山村で、山賊たちを討ち取ったエルトシャンたちは、次の日、村人たちに見送られて山村を後にした。
次の目的地は、王国の中心であるベルン城である。
険しい山に囲まれたベルン城は天然の要塞として名が高く、大きな軍がたとえ攻めてこようと、道が狭く一本道であるが逃げ道がない。故に竜騎士に格好の餌食となってしまうことが多く、数年前にフェレの英雄であるロイ侯爵(後にオスティアのリリーナ公女と結ばれ、リキア王国の初代国王となる)が攻められるまでは、ほぼ無敵を誇っていた。

山岳地帯で標高が1000メートルを越えるので、気温は低く酸素もやや薄いので、エルトシャンとエイシャにとっては、辛い旅となった。

「はあ、はあ・・・やっとベルン城についた・・・そ、それにしても、この山道は僕とエイシャにとってきついよ。デュランやエイミはよくそんなに平気でいられるね」とエルトシャン。

「あら、私はずっとトラキア城に住んでたのよ。トラキア城なんか標高1500メートルの高地にあるんだから。このくらいはぜんぜん平気なんだから♪」とエイミは自信満々である。

「僕もセリナやディアルトと一緒に、何度もトラキア城に遊びに行っていたからね。このくらいの道ならなんてことはないさ」と何事もないかのように振る舞うデュラン。

「このベルン城を治めるのは、村人からの話によるとまだ若い女王だそうです。その数年前まではこの女王の兄が治めていたそうですけど、このエレブ大陸の人々に対して動乱を起こしたとかで、後に戦死したそうよ。なぜそうなったのかは、さすがに聞かせてくれなかったけど・・・」と、エイシャ。

やがてベルン城の城門をくぐったデュランたちは、リーフ王から渡された書状をベルン城の兵士に手渡し、しばらくした後謁見の間に通された。このベルンを治めることになった、若き女王ギネヴィアは、遥々ユグドラル大陸からきたデュランたちを歓迎し、手厚くもてなした。お互いのお国自慢などを話し合い、その日は夜まで話は続いた。

やがて話も終わり宿屋へと戻ろうとしたデュランたちに、ギネヴィアはこのベルン城内に泊まるようにと言ってくれたので、彼らもその好意に甘えることにした。

翌朝、旅の支度を整えたデュランたちに、ギネヴィアがあるカードを差し出した。

「こ、このカードはもしかして・・・次の行き先をかいたカードでは・・・」と、見覚えのあるカードを見て冷汗をかくデュラン。

「このカードには、エトルリア、イリア、サカと3ヶ所の行き先が書かれているそうです。どの国も魅力ある場所なのですけど・・・・選ぶのは慎重にお願いしますね」とギネヴィア。

「し、失礼ですけど、どうしてギネヴィア様がこのカードをもっていたのですか?」とおそるおそる訪ねるエルトシャン。

「実はね、あなたがたのお父上であるレンスター王のリーフ様から、『もし立ち寄ることがあれば、次の行き先はこの3枚のカードから選ばせて欲しい』と手紙を頂いたのよ」とギネヴィア。

「す、すでに父上にはお見通しだったわけですか・・・」とがっくりと肩を落とすデュラン。

やがてデュランは慎重に選んだ末に、ここから北方のイリアへと向かうことになった。イリアはベルンの竜騎士と同じく、飛行系の一種であるペガサス騎士団などを要する騎士の国である。

イリアは年中のほとんどが雪に覆われているために、寒さ対策を万全にするようにと、ギネヴィアからアドバイスをうけたデュランたちは、この日は城下町で厚着の服などを購入し、買い物を済ませた。

そして翌日、デュランたちはギネヴィア女王にお礼を述べると、次の目的地であるイリアへと向かったのである。

第12話・完
第13話へと続く・・・


リーフ館長:パート3はここまでだよ。次のパート4はバドンへと向かったアーヴィング&セリナと、ディアルト&ルージュたちのお話にうつります!!


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