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フィンとリーフのトラキア博物館

フィンとリーフのトラキア博物館

頂き物の部屋(特別小説編・その2)

リーフ:『天ノ菊嬢』の天菊様から頂いた小説『大きな従兄と小さな従妹』はパート2に移るよ!!今回は第2話の後編から再開となるよ!!

更新情報:08年3月8日に第3話をアップしました。


『大きな従兄と小さな従妹』(第2話)<後編>

前回の続きから・・・<アレスの語り>

案の定、従妹はさらに泣き出して震え上がり、そのくせ俺の頬をベチンベチン叩く。

「やだやだやだぁ!こないで!!」
「ぶふっ。こ、こいつ・・・この俺とやろうってのかっ・・・ふべっ」

完全に頭に血が上って怒鳴り散らしそうな俺。従妹も従妹で俺の頬を叩きまくる。
そんな中、従妹の悲鳴と俺の怒鳴り声を聞いて現場に駆けつけたハウノと叔母上、ついでに叔父上と大勢の騎士たち。
今にも何かが切れそうなアグストリア国王と、その国王の頬を叩きまくって抵抗している小さな少女、という奇妙な構図に戸惑いを隠せない騎士たちの中で、従妹の世話係がただ一人ハッとして俺たちに駆け寄り、従妹を抱き上げた。

「フィラス様、私です、ハウノです。もう大丈夫ですよ!!」
泣きじゃくる従妹にそう呼びかけると、従妹はすっと泣き止んで慣れ親しんだ騎士を見上げた。

「は、ハウノさん、で、でも・・・!」

泣き止んだものの震えが一向に止まらず何か言いたそうにしている従妹に、ハウノはなれたようになだめ、俺に一礼してから場所を移した。
騒がしい従妹が退場した後、叔父上は渋顔で騎士たちに何か指示を出してから俺の方によってきてため息をついた。

「・・・アレス様」
「お、叔父上、ご無事でしたか。ところであの騎士たちは・・・」

叔父上が何か言う前に俺が立ち去っていく騎士たちを指差してそう尋ねると、叔父上は、
「砦にいた騎士たちです。アレス様が妻とたった2人で出撃されてしまったので、私が臨時で指揮官を勤め、賊の討伐をしておりました」
と、怖い顔のまま答えてくれた。
どうやら、叔父上は俺がすべき仕事を代わりにしてくれたらしい。どうりで姿が見えなかったはずだ。
『ちゃんと仕事をしてください』という叔父上の視線が痛い。

「そ、そうでしたか。ありがとうございます」
俺は眉間のしわが深くなっている叔父上に素直に礼を述べて立ち上がると、無事に発見された従妹について第一印象を述べた。

「それにしても・・・あの子どもが叔父上の子どもですか。ぜんぜん似ていませんね」

顔はよく似ているが、中身が叔父上とはぜんぜん違う。
双子の兄である利発なアースとも違うような気がしてきて、なんだか残念な気持ちに包まれていく。
しかし叔父上は『とんでもない』とでも言うかのように猛反論してきた。

「なにをおっしゃいますか。あの子は完全に私にそっくりですよ」
「あれの?どこがですか!?見た目だけじゃないですか、そっくりなのは」

もしかして叔父上って親バカ?と思いつつ笑いながら言うと、叔父上はきっぱりとこう言い切った。

「アレス様、私も子どものころはあれでしたよ」
「・・・は?」

俺は叔父上に言ったことが理解できず、思わず気の抜けた声を出してしまった。

「強くて渋くてカッコいい叔父上が?あんな泣きじゃくり娘と同じ??嘘でしょう」
「嘘ではありません。幼いころの私があれと同じだと申しているのです。だから初めに言ったでしょう、そっくりすぎて困っていると」

そう自信満々に言われても、とは口に出さず、俺は叔父上の隣にいる叔母上の方を見た。
叔母上はただ、「そう見たいね」と静かにうなずいて自らも先に帰還して言った騎士たちの後ろに着いていって去っていった。
残された俺は、ただ信じられず、一緒に残された叔父上の前で、ただ、一言。

「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

このとき、木々に止まって羽を休めていた鳥たちがすべて飛び立ったとか、森が一瞬ざわついたとか、そんなことは俺の頭の中にはなかった。
泣きまくる小さな従妹と渋くてカッコいい叔父上が結びつかなくて、そして最悪の出会いで、頭の中が真っ白だった。

第2話<後編>・完
第3話に続く・・・

『大きな従兄と小さな従妹』(第3話)

<ヘズル(アレスとリーンの息子)の語り>

レンスターのフィンおじ様とラケシスおば様といっしょに砦から帰ってきたお父さんは、とても怒っていた。
お父さんは元から怖い顔をしていて短気だから皆からカルシウム不足だっておちょくられてるお父さんだけど、今回は本当に怒っているようで、いつも怒られてばかりの僕はいつもと違う怒り方をしているお父さんの違いに気が付いた。
『お、おかえりなさい、お父さん・・・。・・・どうしたの?』
お姉ちゃんのいたずらに引っかかったわけでもなさそうだし、おじ様とおば様がケンカするわけないし・・・
こういうときこそ、そっとしておくべきなんだけど、なんだか気になって仕方がなかったから訊いちゃった・・・。

そしたらお父さん、僕をギラッとにらみつけてほっぺたを思いっきり引っ張った!

『ヘズルぅ・・・お前を見てるとイライラしてきたぁぁぁぁ!!!』
『ひ、ひひゃいよぉぉ!!』

びよんびよん引っ張られて涙目になっていく僕を見てさらにイライラが増していったのか、お父さんは僕のほっぺたから手を離して頭をかきむしった。

『だーっくそっ。マジお前を見てるとあいつを思い出す・・・』

どうやらお父さんは僕に八つ当たりをしたみたい・・・ひどいなぁ。
でも一体なにが会ったんだろう・・・僕を見てると思い出すって言っているから、僕みたいな人なのかな?
うむっと腕を組んで考えていると、お父さんがお母さんのところへと向かっていこうとして思いっきりずっこけた。
ちらり、とその方向を見ると低い位置にピンとロープが張られていて、お父さんは見事引っかかって派手にこけたらしい。
きっと犯人はお姉ちゃんだろうなぁ。お父さんのためにも見なかったことにしよう・・・

さて、イライラしながらこの場を立ち去ったお父さんと入れ替わるようにおじ様とおば様が帰ってきた。おば様は先に帰っていたけど、おじ様を待っていたみたい。ひそかに手をつないでいる。本当に仲がいいなぁ。

『父上、母上、お帰りなさい』
と、おじ様とおば様を眺めていると、アース君がお二人に駆け寄っていった。
『ただいま。いい子にしてた?』
おば様がアース君の頭をなでて微笑むと、僕に気が付いたのか手招きをしてくれた。

『あら、ヘズル。そんなところにいないでこっちにいらっしゃい』
『あ、はい!』

僕はおば様のところへと駆けていく。その間におじ様はアース君から何かを聞いて、早足でどこかへ行ってしまった。
『おじ様は?』

早足から駆け足になっているおじ様の背中を見送りながら訊いて見ると、アース君が
『父上は僕の妹のところへ行きました』
と、答えてくれた。
『妹って、アース君が話してくれた双子の妹さんのこと?』
『はい。ヘズル様もお会いになられますか?』

アース君の誘いに、僕は少し考えてから頷いた。
アース君から聞いた話では、とてもかわいくて恥ずかしがり屋さんなんだって。おじ様とおば様の子でアース君にそっくりな子だから、とても綺麗なんだろうな。
早速おば様に許可をもらって僕はアース君と一緒に妹さんのところへと向かっていく。
途中で上からタライとか冷水の入ったバケツとか黒板消しが落ちてきたけど、僕たちはめげずに進んでいって妹さんのお部屋に到着した。

思ったより過酷な道のりでくたくたになったけど、僕は気にせず扉をノックする。
ノックをしてしばらく経ったころ、あわてた様子でおじ様が扉を開けて迎え入れてくれた。
『お待たせしました、どうぞお入りください』
開けられた扉の向こうからすすり泣く声が聞こえてアース君の後ろから部屋を覗いてみると、若い騎士さんに慰められている小さな女の子がいた。

おじ様やアース君と同じ色の空の髪を可愛らしく結っていて、後ろ姿だけどかわいい子だってことがすぐに分かった。
『あ、こんにちはヘズル様。ほら、フィラス様。ヘズル王子がお見えですよ』

若い騎士さんはやってきた僕に気が付いて妹さんに困った表情をしながら挨拶するように言うけど、妹さんは首を振って顔を見せようとはせず、くぐもった泣き声を出して泣いていた。
どうしたんだろうって僕が心配したら、おじ様が小声でこっそりとわけを教えてくれた。

『実はかくかくしかじかでして・・・』
『あ、そういうことなんだ』
どうやらお父さんに怒鳴られてしまったらしい。お父さん怒鳴ると怖いからなぁ・・・
『ついでに言うと、彼女はアレス王を山賊と間違えまして・・・。それで余計怒られたのです』
『え・・・さ、山賊・・・』

口は悪いところは一緒だから仕方がない・・・じゃなくて、見た目きらきらの豪華のお父さんと全く正反対の山賊をどう間違えたんだろう・・・

何だか訳がありそうな話なんだけど、今の状態で聞くわけにもいかないしなぁ・・・。
うんうん考えた末、一つだけ思いついたことを実施しようと思って、おじ様とアース君に声をかけた。

『ね、おじ様、アース君。僕、良い場所を知ってるんだ。妹さんをそこに連れてってもいいかな』
実はお城には大きな塔が立っていて、そこから見る景色が凄く綺麗なんだ。
あの景色を見たら少しは落ち着くかなって思ったから提案してみたんだけど、どうやらおじ様たちはその案に乗ってくれたようで妹さんにこのことを言って僕の前まで連れてきてくれた。

『王子がお前を良いところに連れて行ってくれるそうだ』

おじ様がそういって僕に妹さんを紹介をしてくれる。

『ヘズル様、この子はフィラスといいます。大変困った性格なので迷惑をかけると思いますが頑張ってください』
僕はおじ様の後ろに隠れていたフィラスちゃんが少しだけ顔を出して小さく礼をする。

『さ、いこっか。ちょっと遠いから少し歩くよ』

僕はおじ様の後ろに言ってフィラスちゃんの手を取ると、アース君と一緒に目的地まで歩いていった。

フィラスちゃん、喜んでくれると嬉しいな。

第3話・完
第4話に続く・・・

リーフ:パート2はここまで!!続きはパート3に移るよ!!


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