|
カテゴリ:小説
忍ぶれど、色に出でじ我が恋は
幼きゆえに世に流れ 幼きゆえに色のつかぬ色のままに。 駅の雑踏の中。 人の群れの中。 人待ち顔の少女や忙しげに通り過ぎる大人たち。 駅のホームを抜け、人々が待ち合わせ、通り過ぎる時計台の下。 一秒が長く短く、大きな時計の秒針を動かし続ける。 一人の声から耳に届くのに、大勢の声はなぜ遠鳴りの様に 時計台広場に響き渡るのだろう。 遠くから鳴り響くクラクションや、人々の騒ぎ声笑い声ささやき声 一つ一つが意味のない振動の様に体の芯を揺さぶる。 時計の針が重なれば、おどけたように人形が飛び出し、賑やかな踊りと音楽を 広場に奏で出し、人々はそっと足元よ緩め、ひと時のカーニバルを楽しむ。 それを楽しめたのは最初の2回、3回を過ぎ4回になり5回になってしまえば それはただの苦痛で、悲しさだけを私の心に伝えて来る。 事故でも?何かあったのかも? そう思い携帯をかければ、コールは鳴り続け心配だけを心に伝えたものだけど 2度目の電話でパケット通信だと言われ、5度目の電話でそれが普通のコールになれば 自分の境遇も、なんとはなしにわかろうと言うものだ。 もう何度目になろうかという、コールを鳴らせば留守番電話。 別れたいなら、そう言ってくれたらいいのに。 にこにこといつも笑顔で優しい言葉で、曖昧にぼかしてその場を繕う。 そんな事わかっているのに、離れたくない、離れれない。 こんな気持ちをなんて言うかなんて知らないけど、離れたくない。 あなたいつまでそこにいるの こっちに来なさい。 不意に背後から声をかけられた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[小説] カテゴリの最新記事
|