「聴く」と「聞く」と「訊く」
市の講座(コミュニケーションについて)に出席して、心に残った話。「嫌なことがあっても、誰かに聞いてもらうと楽になる、ということがあります。話すことは、自分の気持ちを離すことにつながり、さらに放すことになるのです」「最近、傾聴ボランティアが増えているそうですが、傾聴とは、とにかく相手の話を熱心に聴くことをいいます。同調しても、決して相手の話を途中で折って自分が話すようなことはしません。こういう聴き手に対しては、話し手は安心して話すことができます」「聴という字をよく見てください。これを分解すると、耳と目(90°傾いているが)と心と、十という字になります。目と耳に、心をプラス(十をプラスと読む)して相手の話を聴くと解釈できませんか。または、14の心で聴くというようにとらえるのもいいですね。全身全霊をかけて耳を傾ける、みたいな感じですね」「聴」は、普通の訓読みだと「きく」と読むが、大きな漢字辞典を引くと「ゆるす」「まかせる」という読みも出てくるらしい。「あなたの話を聴く」「あなたを聴す」「あなたに聴せる」。どれも、話し手をすごく尊重している印象だ。英語にすれば「聴く」は「listen」になる。これに対し「聞く」は「hear」で、自然と耳に入ってくるという意味である。「聞く」というより「聞こえる」。そもそも「聞」の字の起源は門構えの立派なお屋敷の前を通ったら、中から話し声が聞こえてきた、ということ。もう一つ「訊く」がある。これは尋ねるという意味で「ask」になる。悪く言えば、相手が話したがっているかどうかに関わらずこちらが一方的に質問攻めにする。母親が子どもに「今日何があったの?」なんてね。「聴く」のが上手な、信頼される人間になりたいものだ。