カテゴリ:亡国記
「亡国記」(北野慶著 現代書館 2015年)
大輝の兄の翔は北海道庁の職員として、避難民に札幌でロシア語を教えていたが、ある日突然ヤクーツクにおける避難民の受け入れ担当者として、現地に派遣されることになった。翔は二度と帰ってくることはないと覚悟を決め、年老いた両親を残ったものに託し、一人飛び立つのであった. ロシアが難民受け入れを表明したといっても、難民受け入れというのは名前ばかりで、実態はロシアの極寒の地での強制労働者のようなものだった。日本からの難民の大部分はロシアのサハ共和国のヤクーツクを拠点として百万都市を凍土に上に建設していく部隊に配属された。年は石油、天然ガスのコンビナート、ダイヤモンドをはじめとする鉱物資源の集散地としての役割を担うというものだ。 ヤクーツクという都市は、北極海に流れ込むレナ河という大河の河畔に発達した街である。 翔たちの先遣隊は数名ずつの班にわかれ、さらに小都市へと配属分配されていった。配属先では各人は何万人~何十万人の日本からの避難民の受け入れの作業にかかることになった。 ここの現地の担当者にはロシア人ではなく、アジア系の少数民族であるツングース系に属するエバンキ人が多く、顔つきも日本人や蒙古系の顔をしていて翔にはなじみがあって幾分気が和らいだ感じであった。年が明けるとヤクーツクから何台ものバスを連ねてやってきた。翔は彼らの受け入れに奔走する。 ある程度日が長くなっても、旭川のような日差しを期待できるわけではなく、翔は永遠に故郷の旭川に帰れることはないという絶望感に苛まれるのだった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2017.04.13 22:29:41
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